Ep.34 これは女子会と言えるのかしら?
『今日は女の子とよく話す日だなぁ。』
運動会も終わって、本格的に秋です。
「うーん、落ち葉が多いなぁ。仕方ないけど。」
確か、道具倉庫にホウキとかあったはず。今朝は時間に余裕もあるし、中庭だけ
「えーと……あ、あったあった。」
絵本の魔女が乗ってそうな立派なホウキを手に、鼻歌混じりに掃き掃除。何の歌かって?そこは大人の事情でナイショです。
「いい秋晴れだなぁ……。」
ただの掃き掃除でも、綺麗な青空のしただとなんか気分良いよね。まぁ、掃いたものを集める位置を気を付けないと風で飛ばされちゃうのが難点だけど。
「おはよう。朝からお掃除?偉いわね。」
「きゃっ!?」
集まった落ち葉の山を見て『焼き芋が恋しいなぁ……』なんてお姫様には似つかわしくないことに思いを馳せてたら、何処かから声をかけられた。だっ、誰!?女の子の声だったけど……。
「驚かせちゃってごめんね、大丈夫?」
「えっ、あ、いえ、大丈夫ですわ。ーっ!?」
振り返ると、食堂のテラスから中庭に繋がる階段に、中等科の先輩が立っていた。
「あっ……!」
この人、運動会の応援演劇で巫女役やってた人だ!わーっ、近くで見ると超可愛い!!
サラサラの髪は光を浴びて桜に近い優しいピンク色に光って、オレンジの瞳は宝石みたいにキラキラだ。まだ中学生だからあどけないけど、大人になったらすごく綺麗になるだろうなぁ。同性としてうらやましい……。
「あの、もしも〜し?」
「あっ!失礼致しました、ちょっとぼんやりしてしまって……。」
いけない、考え込みながらガン見してたら心配されてしまった。
先輩が可愛らしく微笑んで、『良かったらちょっとお話しない?』と言ったので、一番近くのベンチに並んでお喋りすることになった。
「ーー……。」
「ーー……。」
き、気まずい……!考えてみたら、全く知らない先輩と初対面で雑談ってなかなかハードル高いよね!?
「あ、あの、先輩は毎日こんなに早く校舎にいらっしゃっているのですか?」
「ううん、毎日じゃないわよ。週に一回くらい、予習復習とかをしに早めに来るだけ。」
でも、今朝は運動会のすぐ後だからあまり勉強する内容が無くてすぐ終わってしまい、余り時間をどうしたもんかと退屈しのぎに中庭を眺めたら、偶然そこに初等科の生徒が居たからつい声をかけてしまったらしい。
その話を聞いて自分が声をかけられた理由に納得しつつ、隣に座る先輩の顔を見上げる。うーん、やっぱり見たことあるような……。
「あっ、予鈴鳴っちゃったね。」
「そうですわね。」
その後もなんだかんだと雑談を続けて居たら、いつの間にか朝の予鈴が鳴っていた。朝礼が始まる前に教室に行かなくちゃいけないので、どちらからともなく立ち上がった。
「付き合ってくれてありがとう。じゃあ、またね。」
「こちらこそ、楽しかったですわ。ありがとうございました。」
お互いに笑いあい別れの言葉もそこそこに歩き出す。可愛い先輩は、後ろ姿も素敵だった。
「さて、私もホウキ片して教室に……あっ!」
しまった、名前聞きそびれちゃった!
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「今朝そんなことがあったんだ。」
「うん。まさか向こうから話しかけてくるとは思わなかったからビックリしちゃった。」
昼休み、注文したランチを持って中庭の定位置に来ているこの時間は、実は私のくつろぎタイムだ。教室とかだと、どうしても気が抜けないからね。
その点、今居るこの場所はちょっと日当たりが悪いところにあるからかあまり人目につかない。だから、ここでレインと何気ないお喋りを出来る時間はは本当に大事……
「あっ、見ーつけた!」
「ーー……。」
この話の流れで来るのか、空気よめ!全く、どこの誰よ……?
「ーー……!クォーツ、ルビー!っ!?」
そこにあった予想外の人の姿に驚いて立ち上がったら、膝をテーブルに勢いよくぶつけた。いっ、痛い上になんか痺れる……!なんで肘とか膝とかってぶつけるとこんな痛いんだろ?
「だ、大丈夫?あっ、座ったままでいいよ。痛いでしょ?」
「す、すみません……。」
クォーツの苦笑混じりの気づかいに甘えて再び席に着くと、私がぶつかった衝撃でこぼれた紅茶をレインが拭いてくれていた。ごめんね、迷惑かけて。
私も片付けをしようとしたら、レインに大丈夫だから話しててと制された。そうだ、クォーツとルビーはどうしてわざわざここに来たんだろう?
「実は、ルビーがフローラ達と一緒にご飯食べたいって言うから探してたんだ。いいかな?」
「まぁ、ルビーが?」
ちょっと体を傾けてクォーツの後ろに立っているルビーを見る。ルビーは頬をちょっと赤くして、私たち三人の顔をチラチラ見ていた。
「ルビー。」
「ーっ!」
そっと名前を呼ぶと、更に顔を赤くする。キョドキョドした動きが何だか小動物みたいだ、可愛い。
「レイン、今日のランチは賑やかになりそうね。」
そんなルビーから視線をレインに移してそう微笑みかけると、レインも笑って『そうですね』と答えてくれた。
「さぁ、お掛け下さい。」
「はい、ありがとうございます!」
クォーツが空いた椅子を引くと、ルビーがごく自然にそこに座る。おぉっ、お嬢様と執事みたいだ!……って、これは失礼か。実の兄弟だもんね。
「あら、クォーツは一緒に食べないの?」
「うん、ご一緒したいけど、先にライトとフライと約束しちゃっててさ。半には食堂に行かなきゃならないから。」
「そうでしたか。よくご一緒されていますものね。」
確かに、同級生皇子三人組は授業以外の空き時間は大体一緒に居るしね。ルビーもよく混ざってるの見たけど、“お兄様のお友達”とじゃ、いくら幼なじみとは言えちょっと気負ってたみたいだし。だから私たちの所に来たのかな。
あれ、そう言えばクォーツ、十二時半に待ち合わせって言った?
ふとあることに気づいて、ルビーの肩に手を置いて話しかけているクォーツを見た。その視線に気づいたクォーツがこっちを向いた。
「ん?どうしたのフローラ?」
「……クォーツ、余計なお世話かも知れないけど。」
「……?うん。」
「現在時刻、十二時“四十分”になります。」
最近お気に入りの懐中時計を見せながらそう言ったら、文字盤を見たクォーツがムンクになった。
「らっ、ライトに怒られるーーっ!!」
「あっ、クォーツ、走ると転……あっ!」
言わんこっちゃない……。つんのめってバランスを崩したクォーツは、ちょっと捻ったらしい足を引きずりながら去っていった。
「あの、騒々しくして申し訳ありません……。」
「いえいえ、賑やかなのは好きですわ。さぁ、私たちも頂きましょう。」
考えてみたら、レイン以外の子と一緒にご飯食べるの初めてだ。何話したら良いかな?
~Ep.34 これは女子会と言えるのかしら?~
『今日は女の子とよく話す日だなぁ。』




