Ep.33 波乱万丈二人三脚
『まぁ、ゲームだった時は体育祭も恋愛イベントだったしね・・・・・・なんて、自分を慰めてみたけどあまり効果はなかった。』
さて、午後のプログラムが始まりました。
応援演劇は、中等科の生徒全員の投票で選ばれたメンバーが役者になり、オリジナルの内容で“戦い”をテーマにした短いお芝居をするものだった。今回は、滅び行く世界を救う力を得た三人の勇者と一人の巫女のお話だった。時間が短いからかなり早足展開だったけど面白かった、中学生レベルとは思えない。
中でも、巫女の役をやっていた女子生徒が一番輝いてた。肩くらいまでで綺麗に切り揃えられた淡いピンク色の髪、オレンジ色の瞳は丸くパッチリとしていて、あどけなく見える。何年生なんだろ?
「あの先輩、中等科に途中から編入した町娘なんだって。可愛いよね。」
「えっ、そうなんだ!?」
編入で入ってきてしかも家の後ろ楯も無い状態で主役級の役に選ばれたなんて、すごく人気者なんだねー。目立つ人なのかな、私も何処かで見たことあるような気がするし。
まぁあの可愛い先輩の話は置いといて、劇が終わったら次は二人三脚だ。そろそろ行かなきゃ。
「私、次の競技だから行くね。」
「あっ、うん。色々頑張ってね!」
「色々……?よくわからないけど、せめて点に貢献出来るように頑張るわ!」
ちょっと引っかかる笑顔のレインに見送られ集合場所に行くと、フライ皇子が既に待っていた。
他の子達も段々集まってきて、皆に足を結ぶ用の紐が配られる。ちなみにこの紐、結びたいものに一周巻き付けるだけで独りでに結んでくれる魔法の紐だ。便利だね。
「練習通り、右足から出しましょう。」
「わかりましたわ。」
私達が走るのは三レース目、あっという間に順番が来て、空砲の合図で走り出す。
フライ皇子の足が速いからか、程となくして私達がトップに立った。でも……
「あの、フライ様、その紙は一体・・・・・・?」
「何って、お題の紙ですよ。この二人三脚は、レースの丁度半分の位置に書かれたお題の紙を取り、ペアでそれをこなしてから進むんです。」
『ご存知ありませんでしたか?』って、そりゃもちろんご存知ないわよ!!だって、練習のときはそんなの無かったじゃん!
あっ!昨日話した時にクォーツが言おうとしてたのはこの事か!!レインもさっき含み笑いしてたし、きっと知ってたのね!?もーっ、だったら言っといてくれれば良かったのに!
「フローラ様、ぼんやりしているとすぐに抜かれてしまいますよ。早くこれを済ましてしまいましょう。」
そう言ったフライ皇子に引かれ、お題をチェックする役の生徒に封筒を渡す。
すでに二位のペアも封筒にたどり着いている。仕方ない、早くお題をこなして進まなきゃ!
フライ皇子から封筒を受け取った生徒がその封を開き、そして驚いたように目を見開いた。え、何事?
「第一ペアのお題を読み上げます!『パートナーの額、頬、髪以外の位置に口づけ』です!!尚、このお題はどちらが行っても構いません!さぁ、どうされますかお二人とも!」
・・・・・・今、何て仰いまして?
口、づけ・・・・・・。口づけぇぇぇぇぇぇっ!!?
「ふ、ふ、フライ様、どうしましょう・・・・・?」
しかもあのお題を聞くかぎり、キスする位置も限られてるよね!?
「おや、フローラ様が動揺されている内に後のペアが次々お題をクリアして進んで行くぞ!?さぁ、どうされますか!?」
「ど、どうすると言われましても・・・・・!」
こんな大勢が見てる前でキスとか、いくらまだ子供だとしても絶対無理!!
あぁ、まだ何もしてないのに顔から火が出そうだわ・・・・・・!
「ーー・・・・・・、さすがにこれ以上離されたら追い付けませんね。フローラ様、失礼いたします。」
「えっ・・・・・・?ーっ!?」
フライ皇子の行動に、一気に会場が色めき立った。
私の顔にも一気に血が昇る。だって、皆が見てる前で手の甲にキスされたんですが!?初対面の時にも一回されてるけど、あのときより破壊力がすごいよ!!
「フライ様がお題を実行されましたのでクリアです!」
「さぁ、参りましょうフローラ様。」
「あっ、は、はい!」
結局、このあとの事は覚えてない。とりあえず、フライ皇子に引かれるまま走って、一位にはなれた気がする。
・・・・・するけど、運動会自体の結果は私たち青組は二位に終わった。恥ずかしさで混乱してぼんやりした私ですら、障害物競争や他の競技で活躍していたライト皇子の姿を覚えているくらいなので、多分彼の功労もあったんだろう。まぁ、元々今年の赤組は運動神経いい生徒が集まってたみたいだしね。
あぁ、でもフライ皇子の件も騒ぎになってそうだなぁ。運動会に色恋沙汰は要らないでしょ普通!
とりあえず、来年からは絶対二人三脚には出まい!!
~Ep.33 波乱万丈二人三脚~
『まぁ、ゲームだった時は体育祭も恋愛イベントだったしね・・・・・・なんて、自分を慰めてみたけどあまり効果はなかった。』