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Ep.30 ビーチの一幕・終幕



『とりあえず、四年生の夏休みは新しい友達を二人ゲットして終了となりました。』





全員で合流した後は、まずスプリング兄弟の提案のサンドアート(砂の彫刻?)を作ってから、全力でビーチバレー対決となって。

最初はクジでチーム分けしてやってたのに、今は闘争心に日がついたライト皇子の独壇場となっている。




「ほら、立てよクォーツ!勝負はまだついてないぜ!!」


「ついてるよ!!ビーチバレーで数十点差って何事!!?」



『もうヤダ!!』とコートから逃げ出すクォーツ皇子を、ライト皇子が強く打ち過ぎて若干萎んだビーチボール片手に追いかける。

砂浜で追いかけっこと言うなかなか青春な絵面な筈なのに、男同士な上、片方が涙目で必死なのが何とも言えませんな。


「……あの、フローラ様。」


「……?あら、ルビー様。どうかされまして?」


「えぇ、少々お話したいことがありまして。」


『お隣、宜しいでしょうか?』と控えめに聞いてきたルビー王女が座れるように、横のビーチチェアに置いていた荷物を退かす。


どうぞ、と手で示すと、おずおずと腰掛け……たのは良いんだけど。


「あの……ルビー様、そんな椅子の端っこに座られてはバランスを崩しますわ。」


「あっ!も、申し訳ありません。」



いや、別に怒るようなことじゃないから謝らなくて良いんだけどさ。

それにしても……


「元気がありませんわね。まだ具合は良くないですか?」


「いえ、もうすっかり大丈夫です。ご心配をおかけ致しました。」


「いえいえ、ご無事で何よりですわ。」


こちらを正面にして座り直し、頭を下げるルビー王女。

その頭がなかなか上がらないので、風に揺らされているサラサラの髪をちょっと撫でてみた。


「ーっ!?」




突然のことに驚いたのか、私の指先がちょっと触れた瞬間に弾かれるように顔を上げられた。

残念、久々にあの綺麗なストレートヘア撫でたかったのにな。


「それで、お話ってなんですの?」


「あ、はい、あの……。」



仕方ないから本題に戻るかと話を振れば、ルビー王女はちょっと顔を赤くしてもじもじした。


――……この子、こんな乙女な娘だったかしら。

もっと態度も口調も強気な子だったはず……だよね?


学園内の森で会ってた頃は、正に“ツンデレ”な口調だったし。

いつからこんな姫らしい口調になったんだっけ……?


「ふ、フローラ様!!」


「はい!な、なんでしょう?」



おぉっ、ビックリしたぁ。

記憶を辿ってたら不意に大きめの声で名前を呼ばれて呼び戻された。

で、何なんだ一体。


「あの、さっき、私の名前……」


「名前……?あっ!」



そうだ、私ルビー王女助けたときに呼び捨てにしてた!


「大変失礼致しました!焦っていたものでつい……。」



だから言いにくそうにしてたのか……。

やっちゃったなぁ、ボロを出さないように気を付けようって誓ったばかりだったのに。



でも、慌てて謝罪した私にかけられた言葉は『いえ、怒ってないですから!』だった。

え、そうなの?


「寧ろ、その、嬉しかったと言いますか……。」



顔をあげると、さっきより更に頬を赤く染めたルビー王女が私を見ていた。

そして、意を決したようにギュッと拳を握りしめ『今後も、周りに人が居ないときはそう呼んで頂けませんか?』と言ってきた。


「え、で、ですがそれは……」


良いのかな?あの皇子達と違って私はルビー王女や皆と昔からの付き合いや縁があるわけじゃないのに……。



でも、迷いつつもルビー王女の目を見れば、子供ならではの純真無垢なキラキラした期待の目がそこに!

眩しすぎて目が眩みそうです!!


「……わかったわ、よろしくね。えっと、ルビー。」


「はい!よろしくお願いしますフローラお姉様!!」


満面の笑みで反応してくれたのが可愛くて、私も微笑み返す。


――……ん?

そう言えば今、“お姉様”って言いました?



私がその事を聞くと、『あっ……!』と顔を赤くして目を見開いた。

あら、無意識?




「……あの、もし不愉快でなければ、今みたいに呼ばせて頂いても良いですか?」


うーん、この子、クォーツ皇子はもちろん他の王子様達も“(名前)お兄様”呼びだしね。

まぁ、私も勿論慕って呼ばれるのは嬉しいし……。


「わかりました、ルビーの好きに呼んで頂いて大丈夫です。」


「はっ、はい!」


「あっ!ルビーっ、フローラも、ちょっと匿って!!」


「「えっ!!?」」



お互いの呼び方も定まった所で、絶賛逃走中のクォーツ皇子が私達が座るビーチチェアの後ろに隠れに来た。


逃げ回ってるうちに無くしたのか片足のビーチサンダルが無く、顔や肘や膝に砂がつきまくっている。

これは、さては何回か転んだな……?


「あっ!おい、二人ともクォーツを見なかったか!?」


と、不憫なクォーツ皇子になんと声をかけるべきか考えてたら、今度は少し息を荒くしたライト皇子が私達の前までやって来た。

私は、椅子の陰に隠れるクォーツ皇子の姿が見つからないようにしっかり背もたれに寄りかかりながらライト皇子を見上げる。


「あらライト様、クォーツ様なら先ほど彼方に走り去って行かれましたが?」


「何だとっ!ちっ、根性の無い奴め……!」


「――……。」



アンタは強豪運動部の鬼コーチか何かか。

さっきからクォーツ皇子、貴方とサシで二時間以上戦ってコテンパンにされてたんだよ?

そりゃ逃げたくもなるわ。



って言うかさ……


「何もクォーツ様を追いかけなくても、フライ様にお相手して頂けば良いではありませんか。」


「――……アイツは駄目だ。」


「何故です?」



私の提案に、ライト皇子は『駄目なものは駄目なんだ。』と返す。

だから理由を言いなさいってのに。


フェザー皇子は審判してるし、レインは球技苦手みたいだからあまり相手が居ないのはわかるけどさ。

フライ皇子さっきから私達よりコートに近いパラソルの下で優雅に読書してるじゃん。

ちょっと暇そうな顔してるし、声かけたら相手してくれるんじゃない?




「……とにかく、フライは駄目なんだ!」


「では、何故駄目なのかその理由を教えて下さいません?」


「それは……っ」


「それはね、ライトは昔からフライと勝負事して勝った試しが無いからだよ。」


あー、なるほどぉ……。

って頷いてる場合じゃない!!


「クォーツ、ここに居たのか!!?」


「はっ!!い、居ないよーっ!!!」


「嘘つけ!!!」




いやいやクォーツ皇子、『居ないよーっ!!!』って答えちゃってる時点で居るじゃん!

もーっ、せっかく上手く誤魔化せてたのになんで会話に入ってきちゃうかなぁ。



あっ、逃げ出した。


「はぁっ……。お前、何が『彼方に走り去って行かれました』だ。白々しい!」


おっと、怒りの矛先がこっちに向いてきた。



ライト皇子も流石にもう追うのは断念したのね。


「おい、何とか言ってみろ!なんで嘘をついたんだ!?」


「私はライト様より、クォーツ様の味方ですから。」


「なっ!!何でだ!!!」


「友達だからです。」


当たり前ですが、私は友達と顔見知りだったら友達を優先しますよ。




「くっ……!」


ライト皇子は私の言葉に面食らったようで、あからさまに舌打ちして目を反らした。


なんだ、何か不満か。


「……なるほど、わかった。」


「おわかり頂けましたか?」


なら良かった。

じゃあいい加減その威圧的な態度をやめて頂けないかしら?


でも、ライト皇子は未だ私達の目の前で腕を組んで何か考え込んでいる。


そして、その腕をようやく解いたと思ったらガッと私の肩を掴んだ。


「なっ、なんですの!?」


「じゃあ、今から俺も友達だ!」


「はぁ!!?」



何言ってんのこの子!!


ってかライト皇子に触られると、この間の件があるから警戒しちゃうんですが!?


「クォーツと友達だからアイツの味方になると言うのなら、俺も友達になる。だから、今度は俺に協力しろ!!」


「いや、それは……。」


ってか、力入れすぎ!

さっきから超痛いんですが。

貴方ホントに小学生!!?




「いいから!後、友達になるなら、特別に名前も呼び捨てにさせてやる。」


「いいえ、結構です。」


いいから離せ、と言う意味を込めて言ってやれば、ようやくライト皇子の手が離れた。よかった。




「よし、じゃあ早速クォーツを捕まえるぞ!さぁ手伝えフローラ!」


「ちょっと、ライト様……!」


「ライトだ!ほら行くぞ!!」


あぁ、駄目だ。話はするのに会話が出来ない!!



ルビーが目の前の出来事に驚いて止めようとしてくれたけど、結局私は熱血モードと化してしまったライトにつれ回されてその後日が暮れるまでクォーツ皇子と鬼ごっこ状態になったのでした。




あぁ、なんでこんなことに……!



~Ep.30 ビーチの一幕・終幕~



『とりあえず、四年生の夏休みは新しい友達を二人ゲットして終了となりました。』



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