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Ep.25 久しぶりの集合



『でも、流石にこの世界にバナナボートはないだろうなー。』




夏休みに帰ったミストラルは、明るい太陽の光が国中に水を循環させている滝や川、海の水に反射してキラキラと輝いていてとても綺麗だ。


学園や他国も綺麗で素敵だけど、やっぱり故郷が良いよね。


「王様、王妃様、王子様!姫様がお帰りになられました!!」


「おぉ、お帰りフローラ。また大きくなったねぇ。」


「えぇ、この年頃の子供は見る間に成長しますからね。さぁフローラ、顔をよく見せて頂戴。」


「はい、お父様、お母様!」



私がお父様とお母様と再会を喜んでいると、乳母に抱かれていた弟が不満げな声をあげた。


「クリス!お姉様よ~。」


「ふふ、姫様、優しくですよ。」



弟であるクリスは今年で二歳、まだまだ小さなその身体だけど、乳母の手から私の方に移動してきたクリスはずっしりと重い。


クリスが誕生した日にも思ったけど、命の重さかなって感じる。



ちょっと抱っこしてその柔らかい頬を指でぷにぷにと触ってから、クリスは私の腕からお母様の腕の中に移動した。

……今、お母様の方に渡すとき私のこと蹴ったよね?

そんなにお母様の方がいいのか、気持ちはわかるけどちょっと悲しい……。




「あぁそうだフローラ、ようやく誕生日のパーティーを開く気になったそうだね?」


「あ、はい。急にお願いして申し訳ありません。」


「良いんだよ、寧ろ嬉しいくらいだ。」


お父様はニコニコと笑い、『日取りも招待状も全て任しておきなさい』と言った。

なんだか、異常に張り切っているような……。



「さぁフローラ、新しいドレスを用意しましょうね!是非お母様に見立てさせて頂戴。素敵な生地を色々用意してあるのよ。」


「え!?いえ、そんな!今あるもので充分ですわ。」




今でも広い衣装室いっぱいのドレスやお洋服がたくさんあるのに、わざわざ一から仕立て直すなんてとんでもない!

いくらかかるのか、前世の記憶の庶民(しかもどちらかと言うと貧しい側)の金銭感覚がある私からしたら、正直とてつもなく恐ろしい。


「フローラ、お母様、貴方が帰ってきてドレスを仕立てるのを楽しみにしていたのよ?」


「えっ……、あ、おっお母様っ!」


拒否の意を示した私に、お母様が悲しそうな顔をした。

えーっ、そんなこと言われたら、私が親不孝してるみたいじゃない……。


「わ、わかりましたわお母様。」


「いいのよ、無理して嫌なのに付き合ってくれなくても……。」


「いっ、いいえ!楽しみですわ!!さぁお母様、そのドレス用の生地を見せて下さいませ!」




背中を向けてしょんぼりしてしまったお母様を必死にヨイショする。

気分はお神輿だ、お母様が乗ったお神輿をデフォルメの私が脳内で『ワッショイワッショイ』と運んでいる。


「――……本当に?」


「はい!お母様が見立てて下さるなら素敵なドレスになるでしょう、本当に楽しみですわ!!」


「そう……、そうよね!では、参りましょうか。」


えっ、今から!?



「何しているのフローラ、早くいらっしゃい。」


「は、はい!」




お神輿は勢いあまってお母様のテンションを最高潮に上げてしまったらしい。

今ちょっと体がふくよかなのに、そのサイズでドレス仕立てるのかぁ。

――……ドレスの見立てが終わったらプールで泳いでこよう。










―――――――――


「まぁフローラ、とても可愛らしいわ。」


「ありがとうございます、お母様。」



誕生日パーティー当日、私はお母様の見立てで完成したドレスを身にまとってメイドたちに髪や顔をいじられていた。


ちなみにドレスは、薄いエメラルドグリーンの布地に透き通ったラメいりの水色のレース地が重なったAラインドレスだ。

胸元には真っ白なシルクで出来たバラのコサージュが、腰には濃い目の青色のリボンがベルトのようについている。



作る前には色々言ったけど、実際に出来上がってみたらこのドレスは青系好きの私の一番のお気に入りになった。

さすがお母様だ、センスが良い。


「姫様、王妃様、失礼致します。」


「ハイネ!お客様はいらっしゃった?」


「えぇ、既に会場でお待ちです。」



ハイネの言葉に、お母様が『さぁ、参りましょう』と背中を押してくれる。


あぁ、自分が主役のパーティーなんて初めてだ。

緊張するなぁ……。










―――――――――

今回は初めての私が主役のパーティーなので、お父様が気を使って庭での立食形式ガーデンパーティーになっている。


なので、お客様も少なく挨拶もそこそこで終わらせることが出来た。


そして……


「フローラ!誕生日おめでとう!」


「クォーツ様!ありがとうございます。」


貴族の大人の方々への挨拶を終え、お父様とお母様から離れた私に、クォーツ皇子が花束をくれた。


白とピンクのバラに黄色のカーネーションや白いカスミ草が組み合わされたとても可愛い花束だ。

これは嬉しい。


……そして、私前世と現世を合わせて、花束なんて物を頂くのはこれが初めてだ。




い、いやでもさ、現代日本で花束って音楽やってる子が発表会で貰うとかくらいしか縁ないよね!?




「ふ、フローラ様、おめでとうございます。」


「ルビー様、お久しぶりです。本日はおこし頂きまして、ありがとうございます。」


ルビー王女も敵意を示す事なくお祝いの言葉をくれた。

後ろには、一緒に来たのかフェザー皇子、フライ皇子、ライト皇子が立っていた。


「ごきげんよう、フローラ様。」

「お久しぶりです、本日はおめでとうございます。」


「フェザー様、フライ様、ありがとうございます。」





フェザー皇子も花束をくれた。

こちらは夏らしくひまわりをメインにしたもので、これまた可愛い。

どっちも後で部屋に飾ってもらおう。




「ライト様、お久しぶりです。」


「えぇ、お誕生日おめでとうございます。」



ライト皇子も、以前馬車から人を見下していた表情でもなく、探偵ルックで癇癪を起こしていた子供らしい顔でもなく、いかにも王子らしい優雅な面持ちでお祝いの言葉をくれた。

完璧な猫かぶりだ、何かとボロを出しまくりな私としては見習わなければいけないかもしれない。




「それにしても、素敵なドレスだね。鮮やかな青色に絹のような髪が映えて、とても綺麗だ。」


「あ、ありがとうございますフェザー様。」



おぉっ、小学六年生にして年下女子になんと歯の浮くセリフを!

年上の余裕ですか!?




そして私はプレゼントを貰ってから、子供達で集まってガーデンの中にあるテーブルに移動した。


会場からちょっと離れた位置にあるので、ここなら皆で自然に話せるだろうとあらかじめハイネに用意をしてもらっていたのだ。




「素敵なお庭だね、フローラ。」


「ありがとうございます、最近では私も手入れを手伝わせて頂いてますのよ。」


「手伝うって言ったって子供の手じゃ大して役に立たねーだろ。」


「――……。」



悪かったわね、ってかライト皇子いきなり素に戻りすぎでしょ。

ここ会場から離れてるとはいえ外だし、他の人に聞かれても知らないからね。




「ライト、今のは失礼なんじゃないかな。」


「……はい、申し訳ありません。」



あら、フェザー皇子に注意されると素直に聞くんだ。

小さいときから付き合いあるから、ライト皇子から見てもフェザー皇子はお兄様みたいなものなのかもね。



「そっ、そう言えば、弟が生まれたんだって?」


「あ、はい。そうなんです!」



私とライト皇子がちょっと気まずくなったのを見て、クォーツ皇子が話題を変える。

実は私はまだ弟の話を誰にも出来ていなかったので、ここぞとばかりにその話に乗る。

私が寮暮らしだからなかなか一緒に過ごせないけど、もう人生初の、しかも年が離れた弟は可愛くて可愛くて仕方がない。


「フローラ様は、弟君が可愛くて仕方がないのですね。」


「えぇ、それはもう!あの子は私の天使ですから!!」




フライ皇子の言葉にそう答えると、皆が水を打ったように静かになった。何故だ。


「弟自慢はもういい。それより、明日のスケジュールを決めておいた方が良いんじゃないか?」


「あぁ、そうだね。夜はワルツがあるから多分そんなに話せないだろうし。僕達は明後日には帰るから。」


「あぁ、そうですわね。何かご希望はございますか?」





ライト皇子の言葉にフェザー皇子が同意した。

そうだった、今回はクォーツ皇子達の皆へのお礼兼バカンスでしたねー。


実は夏休みに入ってすぐライト皇子から、『せっかく祝いに行ってやるんだから楽しみくらい用意しておけ』なる手紙が来たのだ。


……私はいつの間に彼からこんな馴れ馴れしい口調をされるほど関わったんだろうか。



「何かしら用意はしているはずだろ?」


「えぇ、とりあえずプライベートビーチと水着やボートのご用意が出来ております。」


今真夏だし、ミストラルは水の国で海綺麗だし……これでいいよね?



「海ですか、良いですね。」


「あぁ、上出来だぞフローラ。」


「……ありがとうございます。」



クォーツ皇子はともかく、ライト皇子はスプリング兄弟の口調を見習え。


この状況だとちゃんと敬語で話してる私とルビー王女とフライ皇子が逆に馬鹿みたいじゃないか。




「じゃあ、明日は海でゆっくりだね。お世話になります。」


「いえいえ、喜んで頂ければ幸いですわ。」


「あー、海、かぁ……。」



ん……?



「クォーツ様、ルビー様、どうかなさいまして?」


「えっ!?う、ううん、なんでもない!楽しみだね。」


「え、えぇ、そうですわねお兄様!」





いや、別に不満があるなら街巡りとかハイキングとかでもいいんだよ?


それを伝えたけど、二人は苦笑いで『何でもないから』と誤魔化していた。


あー、ルビー王女もお姫様だし日焼けとかが嫌なのかな?



じゃあ日焼け止めとパラソルも用意してあげよう。




何にせよ、明日は現世初の友達(じゃない人も居るけど)と遊ぶ日だ。


楽しいといいな!





~Ep.25 久しぶりの集合~





『でも、流石にこの世界にバナナボートはないだろうなー。』




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