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補足と言う名の小話 『お兄様は最強です』

フェザー皇子視点で本当に単なる小話。

ライトとフェザーしか出てきません、ご了承下さい^^;

「しかしまぁ、いくら問題のある相手だったからって、わざわざ手間をかけて固まってた縁談まで破棄させるもんかよ。」


  詳しい事情を話して以来恒例となった、ライトによる我が弟達の現状報告。すっかり慣れきった様子でソファに腰かけたライトが、呆れを隠さない声色と表情で僕にそんなことを言ってきた。

  足を組みながら姿勢を崩しているその態度が、はっきりと『やり過ぎだったのではないか』と言う非難の色を示している。


  幼い頃に比べれば大分マシになったものだとは思うけれども、こう言う思ったことを直球で伝える物言いは、彼の長所であり短所だ。


  そして、こと今回に関しては明らかなる失言である。

  その事実をわからせる為、僕は徐に弱々しい笑みを浮かべながらスッと視線を下に下げて口を開いた。


「うん……、僕の不手際のせいで君達にまでずいぶんと苦労をかけてしまったね。本当に申し訳ないよ……。」


「……あぁ、まぁもうその事は今更どうなる話ではないし、一番とばっちりを喰ったであろうフローラの身はフライの捨て身で今は一時期よりは大分安全に……、なぁ、大丈夫か?」


  僕の態度を落ち込みだと捉えたのか、声色が多少甘くなったライトの言葉を小さな咳払いで遮れば。途端に心配げな表情(かお)をしてこちらを覗き込んでくる。本当に甘いものだ、そこが君の可愛いところだけどね。


  僕の顔を覗き込む為に近づけられた顔整い様に妙に感心しつつ、その額を人差し指で小突いてやる。


「ーっ!?いきなり何するんだよ!」


「はは……っ、ごめんごめん。」


「ったく、心配したのに……!こう言う所は兄弟そっくりだぜ。」


  他意は無さそうなその言葉に一瞬驚いた。今までは、フローラちゃん以外で僕とフライにこんな言葉を伝えてくる人は居なかったから。例え、一番付き合いの長い彼等であっても。


「そりゃあ、唯一無二の弟だからね。」


  故に、ライトからの今の言葉はなんとも言えない気恥ずかしさがある。なので、それを悟られないように半ば強制的に話を戻すことにした。


「話が逸れてしまったけれど、僕は今でもあの縁談を潰したのは間違いではなかったと思っているよ?」


「……そうなのか?じゃあ、理由は?」


「それはもちろん、国を護るためさ。」


  躊躇うことなく言い切った僕に、額をさすっていたライトが僅かに首を傾げる。何か納得のいかない部分があるのだろうと、にっこり微笑んで説明を続ける。


「ただの貴族間の縁談だったなら、最悪双方の家ごと取り潰しちゃえばいい話だったんだけどね。当事ライラ嬢にまんまと引っ掛かった男が、近衛騎士団の団長の長子だったものだからね。」


  その男がまた、女性にまるで免疫のない筋肉馬鹿なのが良くなかった。うわべだけの甘い言葉にコロリと騙されて、であってひと月と経たずに縁談に踏み切るだなんて、まともな神経ではまずあり得ない。

  そんな男を国を護る騎士団の(かなめ)にする予定だったとは、本当に今でも信じられないよ。ましてや、隙あらば政権を乗っ取ろうと目論んでいる野心家のカーティス家と親戚筋になるだなんて、武力も権力も乗っ取られて余計に手に負えなくなっていただろう。

  あの段階で防げて良かったと、心底思いながらため息をつけば……。


「わ、訳も知らずに偉そうなことを言って悪かったよ。」


  流石に長い付き合いだ、僕の不機嫌を察したであろうライトが小さく頭を下げる。まぁ実際にはそんなに怒っている訳じゃなく、ただうんざりしていただけなんだけれど。

  でも、丁度良いや。今まさに、明日の授業準備の為に助手が欲しかったところだからね。


「良いんだよ、可愛い弟分の言ったことだし、全っ然気にしていないから。ただ、謝ってくれるなら誠意は見せてほしいなぁ?」


「……その“全然”を強調してる辺りから嫌な予感しかしないな。」


  朗らかに微笑んで、極めて明るい声色でそう言えば、そそくさと『じゃあ、話も済んだしこの辺で……』なんて鞄を片手に扉へと手を伸ばす。

  ……が、ライトの手が扉へ届く前に、昔よりは大分肉付きがしっかりしてきたその肩をガッシリと掴んだ。掴まれた当人は目を見開いてこっちに振り返っているけど、嫌だなぁ、逃がすわけがないじゃないか。


「ねぇ、ライト()?」


「……なんでしょう、フェザー先生(・・)?」


  ギギギギッと音が鳴りそうにぎこちないのに、それでもちゃんと僕の目を見てくるのは幼い頃からの教育の賜物とでも言うべきか。


「先生、明日は片方のクラスが休み前最後の授業で、実技と筆記と両方の試験があるからとっても忙しいんだ。」


「ーー……はい。」


「学年でも一二を争うほど優秀な君なら……ね?」


  『わかってくれるよね?』の気持ちを込めて、肩を掴んでいるその手にほんの少し力を込めてやる。あ、そんなに強くはしていないよ?武力政権なんて野蛮だからね。


「……はぁ。わかりました、お手伝いさせて頂きます。」


「良いのかい?悪いなぁ、助かるよ!」


  持つべきものは察しの良い弟分だね!さぁ、じゃあ問題用紙の印刷から始めようか?


   ~小話 『お兄様は最強です』~


  翌日、テストを受けたクラスでは問題用紙をライト皇子直々に配られたことで女生徒が浮き足だってしまい、結果は散々だったと言う……。



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