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Ep.134 鈍感は強い


  『フローラ、違う。そうじゃない……!』



  月曜日、日課となりつつある朝の自習を終わらせて教室に入ると、私の机の上に……


「お花……?」


  立派な花瓶が乗っていた。

  わー、懐かしい光景ー……。なんて思ってる場合じゃないか。


「まぁ、一体誰の仕業でしょう!?フローラ様に大して何と無礼な!!」


「まぁまぁアミーさん、落ち着いてください。」


  色んな種類の、ただし全て白いお花をかき集めたようなそれを見て、たまたま一緒に教室の前まで来たアミーちゃんが激怒してしまった。なだめようとしたら、『これが落ち着けるものですか!!』と逆に怒られちゃった。うーん、私の為に怒ってくれる気持ちは嬉しいけどこれは困った。私達が来た瞬間から静まり返っていた教室で、一心に注目を浴びる形になってしまう。

  ……まぁ、私が来る前から何か噂話でもしてたであろう感じはあるけどね。


「おや、どうしたんだい君達。もう朝礼が始まるよ。」


「先生!おはようございます。」


「はい、おはようございますフローラさん。君は……このクラスではないよね?自分の教室に戻りなさい。」


「ですが……!」


「アミーさん、先生の仰る通りですわ。一旦このお話は保留にして、教室に戻りましょう?」


  丁度良いタイミングで先生が来てくれたので、その流れに乗っからせてもらう。

  怒りでちょっと震えている肩にそっと手を乗せて微笑みかけると、アミーちゃんは渋々ながらも教室に戻ることを承諾してくれた。後で花瓶についてちゃんと話そうって何度も何度も念を押されちゃったけどね。


  それにしても、また今度は何が原因なんだろう。私、何かしたっけ……?










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  放課後、ガーデンから分けてもらったカラフルなお花を花瓶の白い花と合わせて、花冠と花束を作った。花瓶のお花がバラとかの華やかなお花ばっかりで良かったな。


「フローラ、違うよ……。そんなことしてる場合じゃないよ……!!」


「あ、レインいらっしゃーい。見てみて、白が主体だから柔らかい感じがして可愛いでしょ?」


  我ながらいい出来の花束を差し出して見せたけど、レインは呆然と呟くだけだった。えー、よく出来たのになー……。

  正直、ビックリはしたけど前世で散々見てきた枯れた花や菊や彼岸花なんかが生けられた花瓶に比べれば、色が白いだけでバラやカーネーションなんかの可愛いお花ばっかのこれなんかどうってこと無いんだけどな。まぁ、白い花だけの花束は本来故人に捧げるものだから、確かに縁起が悪いと言えば悪いのか……。


「こっちのクラスでも噂になってたよ、朝フローラの机に花瓶が置かれてたこと。それと……」


「私が婚約者の居る男の子に平気で言い寄った……って話?」


  言いにくそうなレインの言葉を引き継いで私から言えば、ばつが悪そうに目を逸らされた。やっぱりかなり広まっちゃってるかぁ。今日一日、教室もその話ばっかだったもんねー……。


  長い休み時間は毎回アミーちゃんとベリーちゃんが来てくれたから特に私の耳に周りのひそひそ話が入ってくることはなかったけど、ちょっとした授業の合間で耳に入ってくる声が、花瓶の理由を教えてくれた。


『先日、委員長とフローラ様がお二人で個室にいらっしゃるところを見た方達が居るんですって。』


『まぁ、でも彼はミリアさんの婚約者でしょう?フローラ様はそれをご存知ありませんの?』


『そんなわけないじゃない。でも、フローラ様のご身分では委員長も誘いを断れませんし、ミリアさんも苦言など呈せないでしょう。』


『そうよねぇ。今日なんか、委員長もミリアさんも学院を欠席していると言うのに、全くよいご身分ですこと……。』


  とまぁ、なんともテンプレでわかりやすい噂話を、当人にはハッキリ聞き取れるけど直に面と向かっては言ってない、ずるい攻撃に使ってくれたお嬢様達は、初等科の頃からバーバラさん達と仲が良かった子達だった。意外とあのグループも結束が強いよね。まぁ、仲が良いことはいいことなんだけどねー……。


「フローラ、本当に大丈夫?なんだか、たった一回のことでこの広まり様は悪意を感じるわ。クォーツ達に相談した方が……。」


「大丈夫大丈夫!あくまで噂だし、花瓶くらい大した被害じゃないからね。貴族社会に噂話はつきものなんだから、その内別の話題にかき消されていくと思うし。」


  確かにちょっと展開早いなとは感じたけど、多分それは今日に限って私以外の当事者であるキール君とミリアちゃんが休みだったことが原因のひとつだと思う。人間、真実がわからないと妄想で好き勝手話を作っちゃうものだからね。


「それに、下手にライト達に話しちゃうとまた『犯人探すぞーっ!』って話になっちゃいそうだし。皆だって忙しいのにあんまり迷惑かけられないから……ね?この話は内密にお願い!」


「……わ、わかった。私からは何も言わないようにするわ。」


  レインの両手を握りしめる私の必死さが伝わったのか、長ーいため息をつきつつだけど口止めすることには成功した。


「でもね、フローラ。私からは確かに言わないけどさ……」


「うん、だから多分皆には伝わらないでしょ?」


「これだけ学年の噂になってるのに、俺達の耳に入ってないわけがあるか!」


「あいたっ!」


  聞き慣れた怒鳴り声と一緒に、丸めたノートで後頭部を叩かれた。私が両手を使っていて防御できないときに不意打ちするなんて、卑怯なり!!


「もーっ、不意打ち反た……」


「ちょっとライト!フローラに何するのさ!!フローラ大丈夫?とりあえず座って!」


  ちょっとクォーツ、せめて最後まで言わせて?

  文句を言う前にクォーツの手によってライトから離された私は、過保護な彼の手によってあっという間に椅子に座らされてしまった。なんと言う手際の良さと過保護さ……。

  この間から思ってたけど、これはひょっとするとそうなのかもしれない。


「何だよ、軽く叩いただけだろ?これくらいいつものことじゃないか。何も怒らなくたって……」


「怒るよ!大体、ライトは昔から女の子の扱いが雑なんだ!!」


「いや、普段は別にそれなりに礼儀をもって対応してるだろ……。第一、今まではそんなこと言ってこなかったじゃないか。最近お前変だぞ、特にフローラが居るときは尚更だ、

一体どうしたって言うんだよ?」


  クォーツの勢いがなかなかなのでケンカになっちゃうかなーとハラハラしつつもレインと成り行きを見守っていれば、意外と冷静に対応しているライトの反撃にクォーツが押し黙る。(ライトは冷静って言うより、らしくないクォーツの喧嘩腰に戦意より戸惑いが買ったって感じだったけど。)

  これは……、決まりかなぁ。


「ふ、フローラ、あのね、二人の言い合いについてなんだけど……」


「うん、私もこの間からクォーツがちょっと変だなとは思ってたんだ。なんか、今まで以上に優しいし、過保護だし。それで、今の話聞いてて確信したんだけど。」


「う、うん……!フローラ、意外とちゃんと理解してたんだね!」


  綺麗なほっぺたをピンクに染めたレインが、今度は私の手を握りしめた。私はいやに興奮した様子の親友に、声を落として囁いた。


「クォーツ……、この間から私のこと、妹みたいに思ってるよね?」


「うん、そうだよ!……って、あれ?妹……?」


「そう!怪我したときに怒りながら手当てしてくれたり、危なくなったらすぐ来てくれたり、他の男の子と話してたら相手の子から引き離したり……。これって、クォーツが初等科の時にルビーに取ってた態度とすごく似てるじゃない?」


「た、確かに似てるけど……でも、」


「でしょ?中等科に上がってから、クォーツ何かとルビー不足だったし。お兄さん気質の子って、親しい女の子のこと妹みたいに扱うってよく聞く話だからねー。」


  うん、漫画やドラマでもありがちなお話ですな。あースッキリした。

  まぁ、実年齢的には妹じゃなくお姉さんだけどね。そこには目をつぶろうじゃないですか。


  でも、クォーツったらいつまでもシスコンじゃあお嫁さん見つからないんじゃないかな。ヒロインのマリンちゃんとも、距離は近づく気配無いし。しかも、クォーツのお相手となるとルビーが最大の壁になるだろうしね。お姉ちゃんちょっと心配です。

  そう言えば、最近マリンちゃんに会わないなー……。今ごろ何してるんだろう?ヒロインちゃんらしく、攻略対象の誰かと一緒だったりして……、なんてね。


   ~Ep.134 鈍感は強い~


  『フローラ、違う。そうじゃない……!』



  中途半端に思い流れが続いていて申し訳ありません。こんな展開にも関わらずコメントまで頂けて、本当に嬉しいです(*´ー`*)読んではニマニマしておりますw


まだちょっとシリアス風味続きますが、フローラの鈍感さとメンタルの強さを使って合間合間に今回みたいに日常を混ぜて重くなりすぎないように頑張りますので、お付き合いお願いいたします(^-^)v


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