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Ep.11 花より……



『花より団子を取った私に、天が変な子を遣わしたようです。』




春休みに入って少しして、何故かクォーツ皇子からミストラル国へ一枚の書状が届いたとの報告が入った。

なんだろう、私に直接じゃなくお父様方に届いたと言うなら、何か大切な用なのかな?


そう思ってお父様達のお部屋にお伺いすると、ご機嫌なお母様に招き入れられる。


「フローラ、クォーツ皇子とお友達なんですってね。お母様知らなかったわ!」


「ごめんなさい、お母様。」


そう言えば、お母様には私の友達の名前はレインしか話してなかった。

私の新たな友達に喜ぶお母様を宥めて、やはりご機嫌なお父様が私の方を見た。

手に持っているのは、桜の花の押し花……?



「お父様、その花は……」


「あぁ、これは“桜”と言うのだよ。大地の国“アースランド”にのみ咲く、それはそれは美しい花なんだ。」


「……そうなんですか。」



そうか、この世界では桜はアースランドにしか無いのか。

言われてみれば、生まれてこの方六年間、確かに私は桜を目にしていない。


これは寂しいなぁ、昔みたいに気ままに桜並木をお散歩とかしたい。

満開も良いけど、七分咲きくらいだと青空の色も一緒に見えてコントラストが良いのよね。


「……フローラ、話を聞いているかい?」


「ーっ!?もっ、申し訳ありませんお父様。」


『聞いておりませんでした』と素直に言ったら、お父様は改めて話していた内容をもう一度説明してくれた。


何と、大地の国“アースランド”より、桜の観賞会の招待状が届いたらしい。


他の国の皇子達も来ると言うのがちょっと気にかかるけど、お花見が出来るまたとないチャンス!


「どうかしらフローラ、せっかくだから是非行かせて頂かない?」


「はい、行きたいです!」



この時期だけの楽しみだものね。

それに、この一年花壇の世話で色々お話してみて、クォーツ皇子の人柄は大分わかってる。

自分が本来悪役だっていう先入観から警戒して接していた私にも、まるで不愉快な様子もなく色々教えてくれた。

少しマイペースさんだけど、素直で心根の優しいとてもいい子なのだ。

前に私がライト皇子とゴタゴタがあって遅刻した時も、怒る所か心配してくれたし。


あのクォーツ皇子の暮らす国なら、きっと穏やかでいい国でしょう。

今から行くのが楽しみです。










―――――――――


そんな訳で、遂に来ましたお花見の日!

今日は朝から快晴で、青空が綺麗です。

空気も澄んでるし、きっと桜もよく見えるだろうなー。



大地の国“アースランド”は、王家の名前こそ西洋風だけど国の雰囲気は江戸時代の日本みたい。

お城はもちろん日本の城です。


瓦屋根の古風な家が建ち並んで、何となく京都が思い起こされる。




「あっ、お母様!お団子がありますわ、買っていきましょう!!」

「フローラ、貴方お団子なんて知っていたの?」



馬車から見ていた景色に甘味処を見つけてお団子をねだったら、お母様に驚かれてしまった。



そうか、ミストラルには和菓子はないから、本来なら私が知るわけないんだ!!


「えっ、えーと……、あ。この間クォーツ皇子から和菓子について色々お伺いしましたの。」


「そうだったの。でも、今日はもうお時間もありませんし、今度にしましょうね。」


「……はい。」


うーん、残念。

まぁ、手土産のお菓子は国を出るときに用意して来ちゃったし、買う必要ないもんね。


お茶菓子の中にあると良いなぁ、緑茶も欲しいよね。




「……フローラ、くれぐれも食べ物に気を取られて粗相をすることの無いようにね。」


と言うお母様の言葉も聞かず、私の心はお花見にまっしぐらでした。









「ようこそ皆様、本日はわざわざ我が国までお越し頂きまして、ありがとうございます。」


「こちらこそご招待頂きまして、ありがとうございます。」


「ご子息様とは娘が仲良くさせて頂いているようで、本当にありがとうございます。ほらフローラ、ご挨拶なさい。」


「はい、お母様。」


挨拶を終えた両親に促され、アースランドの陛下と王妃様の前に立ち、ドレスの裾をつかんで膝を折る。


「お初にお目にかかります、フローラ・ミストラルと申します。本日はお招きに預かりまして、光栄ですわ。」


「まぁまぁ、本当に可愛らしいお嬢さんですこと。その空色のドレスも、とてもよくお似合いですわね。」




クォーツ皇子の母でもある王妃様が、息子によく似た優しい笑顔でドレスを褒めてくれた。

王妃様が言った通り、今日の私は春の青空をイメージした水色のドレスを着ている。

いつもの鮮やかな水色よりふわっとした優しい色が、桜の色と合うんじゃないかと思って選んだものだ。

吟味して着てきたものなので、社交辞令でも褒めてもらえると嬉しい。




私が内心でこっそりと浮かれている内に、他の来賓客も続々やってきた。

先ほどまで静かだった桜並木は、あっという間に賑やかになる。

って言っても、現代日本みたいにわいわいガヤガヤするようなあれじゃないけどね。



でも、立食パーティー形式だから普通のパーティーより断然賑わってる感じだ。


お父様方は大人のお付き合いに行ってしまったので、私は飲み物だけ頂いて一人で並木道を散歩する。

和風な町並みに綺麗な桜、もちろん飲み物は緑茶だ。


「風流ですなぁ……。」


「ぷっ……!お、お褒め頂いて嬉しいよ、フローラ。」


「ーっ!?」



何の気なしに桜を見上げて呟いたら、真後ろから誰かが吹き出す声が聞こえた。

慌てて振り返ると、笑いを堪えるように肩を震わせているクォーツ皇子がそこに……。

って言うか聞かれた!

思いっきり前世口調で、しかもちょっとお婆ちゃんみたいな言い方しちゃったのに!!!


「ごっ、ごきげんようクォーツ様。本日はお招きに預かりましてありがとうございます。私ちょっと用事が……」


「ごめんごめん、もう笑わないから。そんな焦って逃げないで。」


早口で挨拶を済まして早々に立ち去ろうとしたけど、六歳児の身でヒール付きのパンプスなんて履いてきてしまったので走りづらい。

そして、もたついてる間に未だ口元を歪めているクォーツに手を取られてしまった。


くっ、エスコートするふりをして逃走阻止とか、レベル高いよ……!


まぁいいや、クォーツなら笑いはしても言いふらしたりからかったりはしないだろうし。


「……もう逃げませんから、手を離して頂けますか?」


「本当に?」


「はい、どうせすることもありませんし。」




そう言うと、クォーツ皇子笑って手を離し、野点を思い起こさせる赤い敷物が敷かれた長椅子に私を誘導し、腰かけさせた。


やっぱり本物の王子様は違うなぁ……。



「僕は毎年、この位置がお気に入りで定位置になってるんだ。」


そう言って、クォーツ皇子は朗らかに笑う。

うん、こう言う所に座って見るのもいいねと、私も微笑んで頷いた。


「あぁそうだ、フローラはお団子が食べたいんだよね?」


「えっ!?えぇ、でもなぜご存知なの?」


「先ほどご挨拶した時にミストラルの王妃様に聞いたんだ。取ってくるから、一緒に食べよう。」


なるほど、お母様ったらお喋りなんだから……!

お団子を取りに立ち上がるクォーツ皇子に着いていこうとしたら、『お客様なんだから座っていて』と言われてしまった。

なので、お言葉に甘えて今は大人しく座って待つことにする。

レディーファーストにお客様へのもてなし、この世界の小さな王子様達は本当に優秀だ。



「ねぇ、貴方がフローラかしら。」


「……え?」



と、ぼんやりしていたら不意に私の前に誰かが立った。

顔を上げると、蜂蜜に近い色の髪を頭のてっぺんでお団子にした、和服姿の美少女が立っていた。

年は……、私の一つか二つ下くらいだろうか。




「聞いたことに答えなさいよ、ミストラルの王家は礼儀もなってないのね。」


苛立ちに顔を歪めて、少女が私を罵る。

なんか見たことある顔だなぁと思いながら、私は立ち上がり膝を折った。


「えぇ、私がフローラ・ミストラルですわ。何かご用でしょうか?」


「用ですって?無きゃ貴女なんかに話しかけるわけないじゃない!!」


和服美少女は手に持っていた扇子をパシッと音を立てて閉じると、私に向かって何かを投げつけてきた。

取り損ねて肩に当たって落ちたそれを、屈んで拾い上げる。

痛くはなかったら固いものではないみたいだけど、一体何なのかしら……?


「――……手袋?」



どうやら、投げつけられは“それ”は白い手袋のようだった。

うわぁ、嫌な予感……。


そう思いながら顔を上げれば、美少女は親の仇でも見るような顔で私を睨み付けてこう叫んだ。


「フローラ・ミストラル、貴女に勝負を申し込むわ!!」



~Ep.11 花より……~



『花より団子を取った私に、天が変な子を遣わしたようです。』



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