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Ep.113 ヒロイン参戦?



『……で、あのマリンさんとフローラ達の関係は一体?』 



  煌々と射すスポットライトに当てられ、水色の髪をキラキラと輝かしている少女は、人当たりの良さそうな笑顔で丁寧に挨拶をしている。

  私はその姿を見ながら、何とか動揺しないように膝の上で重ねた両手にぎゅっと力を入れた。



「以上を持ちまして、本年度のイノセント学園中等科の新規生徒会役員の紹介とさせていただきます。」


  今、この場の注目を一身に浴びてるであろう彼女が挨拶を終えると同時に、どこからかそんな放送がホールに流れて。その言葉に促されるように、たった今挨拶を終えたばかりのあの子が、客席、そして壇上で並び立っている先生達へと順番に頭を下げる。

  そして……


「……っ!」


  最後に私達にも向き直って一礼すると、彼女は中等科の生徒会長に連れられて静かに立ち去っていった。


  私達ももうここに座ってる意味は無いので、挨拶前まで控えてた舞台袖まで戻ったけど……、そこまで来たところで皇子三人の口からため息が溢れた。


「何でアイツがここに居るんだ!?」


「それは僕達が聞きたいよ。ライト、何か知らないの?」


「知ってたら今日までこんな呑気にしてねーよ!」


「まさか、ライトを追ってきた……とかじゃないよね?」


  苦笑すら浮かべられないクォーツのその言葉に、ライトが『冗談でもやめてくれ!!』なんて叫ぶ。


  そんな騒ぎの中、私はレインと顔を見合わせてから、さっき壇上であの子と目があった時の事を思い出していた。


「……本当、一体どうなってるんだろう。」


  肩くらいまで伸びた水色の髪、トパーズみたいな綺麗な黄色い瞳。まだあどけなさの残った、可愛らしい女の子……。


  間違いない、あの子が……あの子こそが、“恋の行く道”のヒロイン、マリンちゃんだ。でも、確か入学するのは高等科に上がるときだったはずじゃ?


「……?あの、なんだかよくわからないけどとりあえず生徒会室に行きませんか?この後、改めて顔合わせをする予定でしたよね。ね、フローラ。」


「え!?あ、うん、そうだね。行こっか!」


  腹を立ててるライト達や脳内フル回転中の私に声をかけて、レインが落ち着かせるように優しく微笑んでくれたのでちょっと落ち着いた。そうだ、今は生徒会室に行かなきゃ。

  

「ほら、皆行くよー。レイン、道こっちであってる?」


「うん、大丈夫なはずだよ。」


「……行きたくないな。」


「まぁ、だからって逃げ道なんか無いけどね……。」


「ま、まぁ他の役員の先輩達が居るし騒ぎにはならないよ!きっと、多分、恐らく……!」






 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  中等科の生徒会室は、初等科でライト達が使ってた部屋を更に豪華にして広くした感じだった。

  今日は皆で顔合わせなので、家具を移動させて開けた部屋の中央には大きな円卓と、それを囲うように椅子が並べられててなんだか重圧的な感じで正直緊張した。


  でも、先輩達が会長を初め皆優しそうな人達だったので、少しすれば私達も安心して話せるようになった……のは、良いんだけど。


「マリンさんは入学試験の成績も非常に優秀だったと聞いているし、期待しているよ。」


「いえ、そんなぁ。私なんてまだまだですし、恥ずかしいのであまりおだてないで下さい。」


  軽い自己紹介とご挨拶を済ませてから、せっかくだから軽くお茶でもって、お茶会が始まってから30分。会長を始めとして、先輩役員の皆さんはずっとマリンちゃんを囲って楽しそうにお喋りしっぱなし。私達には正直、あまり関心は無さそうに見えちゃうくらいだ。


「ライト……、あの子、あんな淑やかな性格だったっけ?」


「いや、そんなわけ無いだろっ……、無かった筈だ。」


「だよねぇ、フェニックスの城下で追いかけ回されたのなんか去年の話だよ?」


  『一体何があった?』


  いつもと同じような優雅な態度で振る舞いつつも、その完璧な笑顔に僅かにそんな疑問がにじみ出てるフライ、ライト、クォーツの三人。

  唯一彼女のことをなにも知らないレインだけは、先輩達がマリンちゃんを褒め称えるその内容を聞きながら『2つの魔力が扱える子なんて本当に居るんだ……』なんて別の驚きの声をこぼしていた。


  私はと言うと、端正な顔立ちの先輩方に囲まれて恥ずかしそうにはにかんでるマリンちゃんを監察することしか出来てない。


「特に実技が素晴らしいとか。唯でさえ稀有な2つの魔力を持つ者である上に、その2種の魔力を同時に扱うことが出来るのだと、貴方のお父上が仰っていましたよ。」


「まぁ、ありがとうございます。ですが、私には幼い頃からそれが当然の事でしたから。」


「……?」


  副会長の明るめの茶髪の先輩に答えてから、こっちをチラッと見たマリンちゃんと目が合う。

  さっきから、こう言うことが何回かあるんだけど何なんだろう……。


「……フローラ、様、すみませんがそちらの砂糖を取って頂けますか?」


「ーっ!」


「え?」


  と、隣でイラつきを抑えたいのか紅茶のおかわりを貰ったライトが私にそう声をかけてきた。

  急に話しかけられて驚きつつシュガーポッドを渡せば、ライトはそこから薔薇の形のお砂糖をカップに2つ放り込む。いつもなら4つは入れてるのにね。多分今イラついてるのは、外面を保つために紅茶を好みの味に出来ないのも影響してるんだろうな。でも、あんまり入れすぎると身体によくないんだから気を付けなきゃ駄目だからね?


  それにしても…………、ライトが私の名前を呼んだ瞬間、先輩達の方に向いていたマリンちゃんの視線が即座にこっちに向いた。

  僅かにひきつったその笑顔に、まだ初等科の二年生だった頃、アースランドでお花見したときにライトが言っていた事を思い出した。


  


『あのガキ、事あるごとに『フローラに騙されてはいけません』、『あの子は危険な女なのです』って俺に伝えようとしてくるんだ。』


  そうだ、ライトは、確かにあの時そう言った。それで私は、もしかしたらマリンちゃんも転生者かもって思って……


「……いや、気のせいかなぁ。」


  思ってたんだけど、何だか今初めて直接会ったマリンちゃんを見てると、なんだか違和感が拭えない。


  見た目はもちろん、笑顔も可愛いし、声や仕草に至るまでアニメやゲームに出てたマリンちゃんそっくりで、ただひとつの点を除けば“恋の行く道”のヒロインそのままだ。

  でも、ライトが嘘を言ってたとは思えないし……。



  あーっ、駄目だ。考えれば考えるほどまとまらない!こうなったら、お茶会が終わり次第直接話してみた方が早いかな。


   ~Ep.113 ヒロイン参戦?~


『……で、あのマリンさんとフローラ達の関係は一体?』



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