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Ep.99 師が走ると書いて"師走"

  さて、卒業試験に向けた実技の訓練に、ライトへのお礼のお菓子作り。更にそのお菓子の味見でちょっと増えた体重を戻すために回数を増やしたスイミング通いに、いつもの授業の予習復習など。

  まさに師走(しわす)の勢いで忙しい日々を送ってる内に、あっという間にクリスマスイブになりました。


  と、言うことで……


「クリスマスと言えばブッシュ・ド・ノエルだよね!」


  まぁこれはあくまでチョコレート好きな私の持論による決定だけどね。

  でも美味しいし、見た目も丸太みたいで可愛いからいいよね?


  ちなみに、ブッシュ・ド・ノエルのロールの中身は本来はアプリコットジャムらしいけど、今回は事前アンケートの結果ルビーがアプリコットが苦手だと言うことで。吟味した結果、甘さを控えてブランデーでちょっとだけ香りをつけた生クリームを中身にしてみました。

  食べるのが子供だから、お酒はホントに一滴くらいしか入れてないけどね。


「さてと、形は仕上がったし……切ったときに崩れないようにちょっと休ませとこう。」


  コーティングに塗ったチョコレートにフォークで模様をつけ、柊やサンタさん、それにソリなんかの砂糖菓子を飾り付け終えたそれを、専用のケースに入れて冷蔵庫へ。

  食べるのは夕方だから、それまでには充分馴染むはずだよね。


  ちなみに、生クリームをやチョコレートを使ったケーキを切り分けるときには、ナイフの刃を少しだけ湯煎とかで温めると綺麗に切れるから、切るとき忘れないようにしないとね。


「さてと、時間も余ったことだし、図書室で図鑑でも見てようかな。」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  明日から冬休みだし、今日は午前のみで学校が終わってることもあって、長い廊下にはほとんど人が居ない。

  図書室目指して歩きながらたまにすれ違う人も、大半がお仕事に残ってる先生方だ。クリスマス直前なのに、お疲れさまです。


「あら、フローラさん?今からお帰り?」


「サクラ先生!いえ、本日は予定がありますのでまだ帰りませんが……。それより、すごい量の資料ですね。」


  と、しばらく進んだその先で、それはもう顔まで隠れてしまいそうな量の荷物を抱えたサクラ先生にばったり会った。


  先生は高く積み上がった本の隙間から顔を出すと、『どれも後期の筆記試験の問題作りに使っていたものなのよ』と苦笑いを浮かべる。

  なるほど、明日から学園自体が閉鎖だから、その前に元の場所に返さないといけないのね。だったら……


「では先生、(わたくし)もお手伝い致しますわ。」


「えっ?でも、ご予定があるのでしょう?」


「約束まではまだ時間がありますから大丈夫ですわ。何を運べば宜しいでしょうか?」


  私が任せて下さいと笑うと、先生はちょっと悩んでから小さめのダンボールを私に渡した。


「では、それをお願いしても良いかしら?」


「はい!これは……図書室の魔導書ですわね。棚に戻せば宜しいのですか?」


「えぇ。では、お願いするわね。」


  小さいけど12冊もの本が入ってて意外と重いそれを抱えて、遠ざかっていく先生の背中にお辞儀する。


  あっ!箱の上が閉まってなかったから本が何冊か落ちちゃった!!


  その後、それを拾おうと屈んだせいで結局全部の本を廊下にぶちまけました。先生、ごめんなさい……。折れたりはしてなかったから許して!!





「……本当、間抜けな女だな。」








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  結局慌てて本を拾って図書室にたどり着くと、そこもまたほぼもぬけの殻状態だった。冬は暗くなるのも早いし、皆さっさと帰っちゃったのかな。


「よし、さっさと片しちゃわなきゃ。魔導書の棚は確か奥だったよね。」


  入り組んで立ち並ぶ本棚の間を縫うように進んで、目的の棚に到着。

  サクラ先生はほぼ同じ位置の本ばかりを借りてたみたいでごっそり空になってる部分があったから、しまう場所もすぐにわかった。これはありがたい。


  さてと、じゃあ一巻から順番に……







「………………あれ?」


  箱の中から最後の一冊を棚に戻したところで、大変なことに気づいてしまった。


  棚に並ぶ本の巻数が、二巻から四巻に飛んでる!!

  しかも、戻した本はこれで11冊目なのに、箱の中は空っぽ。と、言うことは……!


「さっきばらまいた時に拾い損ねたんだ……!大変!!」


  とりあえずこの場にある本は全部片して、空になった箱を片手に出入り口の扉に向かう。無くなっちゃってたらどうしよう……!


「痛っ!!」


  と、駆け足になってたせいで、出入り口に一番近い椅子の背もたれに思いっきりヒジをぶつけてしまった。

  ぶつけた位置がヒジだから痺れが……!


「……っっっ!!あれ……?」


  思わず近くのテーブルにもたれ掛かって痺れの波が退くのを待っていたら、まだちょっと痺れている指先にふと当たる紙の感触。これって……!


「さっき落としちゃった魔導書……!なんでここに!?」


  ぶつけてない方の手で手に取ると、それは正に今私が探しにいこうとしてた本だった。

  驚いて、思わず本をくるくる動かして確かめていると、『フローラ様……?』と誰かから声をかけられたので振り返る。


「ベリーさん!」


  なんと、そこに居たのはベリーちゃんだった。腕に図書委員の腕章をしてるから、仕事中かな?

  って言うか、さっきの見られてないよね……?


「今しがた、担当のお仕事が終わりまして帰るところでしたの。そしたら、フローラ様のお姿をお見かけしまして。」


「そうでしたの、お疲れさまです。」


「いいえ、私は本が好きなので、ここでのお仕事は楽しいですわ。」


  なるほど、ベリーちゃんは確かによく教室でも本読んでるもんね。読書かぁ、そう言えば長らくしてないな。今度ベリーちゃんにお勧めの本教えてもらおうかな。


「それで、フローラ様は何故図書室に?」


「私は本を返しに参りましたの。あぁ、そうだわ。ベリーさん、こちらの本を誰がここに置いたかおわかりにならないかしら?」


「え?あぁ、そちらでしたら、先程フェニックスの男子生徒がふらっと入ってきて置いていきましたわ。注意しようと思ったのですが、すぐに帰ってしまって。」


「そうでしたの。フェニックスの男子生徒……、それは、ライト様ではないのね?」


「はい、金髪ではありませんでしたし、ライト様ならその威厳と麗しさですぐにわかりますから。」


  そうだよね……。じゃあ一体誰が拾ってくれたんだろ?私、ライト以外にフェニックスの男子で知り合いは居ないんだけどな。


「そう……。実はこの本、私が落としてしまった物なの。拾って下さった方にはお礼を言いたいから、もし何方かわかったら教えて頂けるかしら?」


「まぁ、そうだったのですか?わかりましたわ、私とアミーさんで探して参ります!」


  ちょっ、そこまでしなくていいよ!自分でも探すし!!


  結局、その後『お任せ下さい』と意気込むベリーちゃんを止めるのに時間がかかっちゃって、図鑑は見られないまま図書室を出ることになってしまいました。


  文系才女のベリーちゃんは、意外とパワフルでございました。



     ~Ep.99 師が走ると書いて"師走"~


『ケーキ来ねえなぁ。』


『ライト、それさっきからもう五回目。』


『だってアイツが遅いからだろ!何やってんだか……!』


『まぁまぁ、そんなイライラしなくてもすぐに来るって。』


『そう言ってもう10分は経つぞ……。あーもう、俺見に行ってくる!!』


『あっ、ライト!?……フライ、どうする?』


『はぁ……、一人で行かせるのは不安だし、僕も行ってくる。女の子達が来たら中に通しといて。』


『わかった、行ってらっしゃーい。……ライト、ホントに甘いもの好きだなぁ。』



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