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Ep.96 ライト先生の特別講義・その1

  そんなわけで翌日、私は制服に袖を通そうと……


「姫様、本日は祝日にて授業はお休みでございます。」


  した所で、ハイネにそう止められた。そうだった、今日お休みじゃん!


「うーん……、どうしようかな。」


「どうかなさいましたか?」


「うん、ちょっとライトと約束があったんだけど……待ち合わせ時間が定かでないと言うか。」


  そうなのだ。ライトは夕べ会ったとき、『明日の"放課後"』と言ったのだ。だから……


「この場合、何時に行けば良いのかと思って。」


「なるほど、事情は理解致しました。よろしければ、フリードを通じてライト殿下がどういうお考えなのか伺いましょうか?」


「ホント!?じゃあお願いしたいな。」


  フリードさんて、ライトの専属執事さんだよね。その人に聞くなら、これ以上に安心な事はない。

  ハイネの有り難い申し出に私が飛び乗ると、彼女は『かしこまりました』と部屋から出ていった。

  ベッドの上には私の私服が一式用意されていたので、制服は片してそっちに着替え直す。


「あれ?でもハイネとフリードさんて知り合いだったっけ……?」


  あぁ、ソフィアさんのお誘いでスプリングに遊びに行ったときにフリードさんも来てたから、その時に会ったのかな。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「フリード……、そう言うことはせめて着替え終わる()に言ってくれないだろうか。」


  俺から視線を外して肩を震わせている男は、その言葉に『申し訳御座いません』と震える声で謝罪を述べた。

  お前……、悪いと思ってないだろう。


「全く……、まぁいい。何でも構わないから、適当に着るものをくれ。」


「おや、せっかく制服に着替えられたのに、もう脱いでしまわれるのですか?」


「お前が俺が着替え終わったのを見計らって『本日は祝日でございます』とか言うからだろうが!」


「……っ!それはそれは、とんでもない誤解でございます。それは、丁度殿下が着替え終わるのと同時に私が本日が祝日であることを思い出したまでのこと。全くの偶然でございます。」


  いけしゃあしゃあと答えるその様子に腹は立つが、『私の不手際で、申し訳御座いません』と謝罪を付け足されれば、それ以上責め立てるわけにもいかない。


「……あ。」


「どうかなさいましたか?」


「いや、自分のとんでもないミスに気づいただけだ。すまないが、メイドの誰かに頼んで女子寮のフローラの部屋に連絡を……」


  と、言いかけた所で不意に部屋に響いたノック音に、二人して一瞬沈黙する。

  こんな早くに来客だなんて珍しいこともあるものだと閉めきられたそこを眺めていれば、フリードが『いかがなさいますか?』と聞いてきた。


「こんな早朝から来たなら、急ぎの用かも知れない。先に対応してくれ。」


「かしこまりました。」


  フリードがドアの方に向かい、その向こうに居る相手と数個言葉を交わす。そして……


「失礼致します。」


「ーっ!貴方は、フローラの……」


「専属メイドを勤めさせて頂いております、ハイネ・コルベールでございます。このような早朝から、失礼致します。」


  ミストラル特有のネイビーが基調のメイド服に身を包んだその女性が、俺の方を見て頭を下げる。

  あぁ、それは知ってる。昔フローラに風邪引かせた時にこっぴどく叱られたからな……。


「別に構わない、大方フローラの使いで来たんだろ?」


「左様でございます。姫様が、本日のライト殿下とのお約束についてご確認をと申されましたので、私が使いとして参りました。」


「あぁ……。」


  『やっぱりその事か』と言う言葉を飲み込んで、ハイネと名乗ったそのメイドの隣で肩を震わせている男を睨み付ける。全く、懲りない奴だな……。


「そうだな、じゃあ言伝(ことづ)てを頼む。」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ライト来ないねぇ、ブラン。」


「そうだねー。」


  夕べと同じ、寮から少し歩いた先にある泉の(ほとり)

  うららかな日射しの中、切り株に腰かけた私の膝の上ではブランがゴロゴロと喉を鳴らしている。


  ふわふわの毛並みを撫でながら日射しに当たって、しかもブランの人よりちょっと高い体温を感じてると……


「なんか眠くなってきちゃった……。」


「おいおい、寝るなよ。今から魔力の訓練するんだから。」


「ライト!」


  『お前が文句言うから、ちゃんと正面から来たぞ』なんて笑って、ライトがブランを私の膝から抱き上げる。


「ブランも一緒か。なんかおやつでも持ってくれば良かったな。」


「べ、別にそんなの要らないよ!」


「なんだよ、逃げることないだろ?」


  と、抱き上げた状態でなでなでしてくるライトに悪態づいて、すぐにこっちに戻ってくるブラン。ホント素直じゃないなぁ、一瞬嬉しそうな顔したくせに……。


「ところで、魔力の訓練って?」


「言葉通りの意味だよ。どうせ一人じゃ八方塞がりなんだろ?」


「う、うん……。」


  私の返事に苦笑を浮かべると、ライトはおもむろにパチンと指を鳴らした。


「わっ!」


「わっ、何これ!?」


  と、同時に辺りに炎で出来た動物が色々現れて、まるで意志があるみたいに動き出した。そして、一匹の小鳥を肩に止まらせたライトは『どうだ?』と自慢げに笑った。


「前見た時も思ったけどすごいね!何をどうしたらこんなにたくさん出せるの?」


「まぁ得て不得手もあるだろうが、訓練を積めば一匹位作れるようになるさ。まぁ、昨日の様子だと、かなりみっちりやらないといけないのは確かだろうけどな。」


  もう一度指を鳴らして動物達を消して、ライトが『どうする?』と呟く。


  ライトの特別講義かぁ、なんかスパルタそうだけど、私のあの壊滅的状況はそれくらいの指導じゃなきゃきっと上達しないよね。


「……うん、やってみる!」


「そう来なくっちゃな、じゃあ始めるぞ!」


「……まぁそれはどうでも良いけどさ、無駄に仲いいね、二人とも。」


  そんなブランの呟きと共に、特別講義の始まりです。

  頑張るぞーっ!!



   ~Ep.96 ライト先生の特別講義・その1~


☆オマケ☆

[一方その頃、使用人寮の一室にて]


『……ところで、何故ライト様は先程制服を着られていたのかしら?』


『それはもちろん、殿下が今朝制服を用意せよと命じたから僕がご用意したからさ。』


『……貴方、今日が祝日だってことくらいわかっていたわよね?』


『いやぁ、殿下の部屋に入るまではちゃんと覚えていたんだけどド忘れしてしまってねぇ。いやぁ、本当に申し訳無いことをしたよ……。』


『……はぁ、白々しい男ね。』


『お褒めに預かり光栄です、ハイネ・コルベール嬢。』


『"嬢"をつけないで!あぁもう、なんでこんな形で再会しちゃったのかしら……?』


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