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いじめられっ子の悪役転生記 ~『って、国ごと転覆!?冗談じゃないです!』~  作者: 弥生真由
第一章 穏やかな始まり

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Ep.90.5 使い魔・ブランのとある一日




  『本当、僕今日何してたんだろう……?』




  皆さん、こんにちわ。


  僕の名前はブラン。前世は仔猫の時に捨てられた野良猫、現世では一国の姫君に使える優秀な使い魔。なかなかの大出世でしょ?


  と言っても、そんな僕のご主人様は、前世と現世をあわせてたった一人だ。


「ブラン、何ぼーっとしてるの?私もう学校行くよー!」


「はいはい、行ってらっしゃい。気を付けてね。」


  『行ってきまーす!』と、全然お姫様っぽくない元気な声で挨拶をしながら、当のご主人様は今日も学校に出掛けていく。

  背中に生えた小さな翼を使って窓から下を覗き込めば、鮮やかな金髪を風になびかせながら歩いていく姿が見えた。


  いつもあんな感じなら、優雅なお姫様に見えなくもないのにね。


「ま、でも彼女に優雅さや気品を求めるのは酷かぁ。」


  なんでかと言うと、彼女の中身は、極々普通な女子高生の女の子だからだ。まぁ、友達少なくて気弱で、人付き合いは苦手だったみたいだし(成績は良かったらしいけど)、精神年齢は同世代の子達よりちょっと低かったのかも知れないけど。

  で、何故そんな女の子やただの捨て猫だった僕が今、ファンタジー感満載のこんな世界に居るのかと言うと……、話すと長くなりそうなので、『Ep.0 終わりの始まり』を御覧下さい。


「さてと、フローラも学校に行ったことだし、僕も出掛けようかなー。」


  『よいしょ』なんて猫らしくない掛け声と共に小窓を開けて、爽やかな秋晴れの空に飛び立つ。


「あら、ブラン様、お出掛けですか?」


  と、中でフローラのベッドを整えていたハイネさんが僕に気づいて窓の方に来た。そんなハイネさんに『散歩に行ってきます』と言ったら、お腹が空いたとき用にとサンドイッチをはひとつ貰った。


「ありがとう。じゃあ、行ってきます。」


  貰ったサンドイッチの入った巾着を首から下げて、改めて散歩に出発だ。


「それにしても、僕の場合は"散歩"にはならないよね。歩いてないんだから。」









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「どれどれ、頑張ってるかな?」


  少し飛び進めると、すぐに初等科の校舎に到着。

  僕は見つからないように気を付けながら、ピカピカの窓ガラス越しに主人の姿を探した。気分はちょっとした授業参観だ。


  そうして覗いた教室では、丁度フローラが先生に当てられた問題の答えを黒板に書き込んでる所だった。なんかごちゃごちゃした計算式を書き終えて彼女がチョークを置くと、見ていた先生やクラスメイトの子達から拍手が上がった。

  どうやら正解したみたいだね、よしよし。僕にはどんな問題なのかすらサッパリだけども。


「さて、いつまでも見てても退屈だし次へ行こうかな。」


  今日も彼女の周りは平和そうなので、午前のパトロールはおしまい。また昼にでも見に来ようかな。


「……ブラン?」


「フローラ様、どうかなさいましたか?」


「あ、いいえ、なんでもありませんわ。」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  さて、今日は何をしようかなぁ。


  優雅に空中散歩に興じながらも、自然とあくびが出てきてしまう。僕も使い魔になってもう六年は経つ。なってすぐの頃は、人の言葉がわかることに感動して色々本を読んだり、がむしゃらに空を飛び回ってみたりしたけどさ。それが六年間、ほぼ毎日続くとなると……。


「流石に飽きるよねぇ……。」


  端から見れば贅沢な悩みかも知れないけど、最近の僕は毎日真剣に暇潰しの方法を考えている。


  そもそも使い魔って、色々出来ることはあってもそれを活用する場がろくに無いんだよ!!


  人の言葉はわかるけど、別に勉強が出来るって程ではないし。背中の羽で常に飛んでるお陰で前足が自由に使えるから、文字を書いたりお茶を淹れたりは出来るようになったけど、だから何だって話だし。

  敢えて特殊な力と言えば魔力を感知する能力があるけど、これも前みたいなイタズラでもない限り使わないし!!


「はぁ……、本当、何のために有るんだろう、この能力(ちから)。」


  実は後ひとつ、ちょっとした人間には見えないものを見る力が僕達使い魔にはあるにはあるんだけど、これは今のところホントに使わないしねー。


  そんなわけで、今日も今日とて、僕は退屈しのぎに学園内を散策している。のは、良いのだけれど。


「……それにしても、お腹空いたなぁ。あっ、そうだ、彼処に行けば食べ物があるかも!」


  と、不意に自己主張を始めたお腹を抱えて、僕は下に広がる森へと降りた。


「相変わらず静かだなぁ、ここは。まぁ、過ごしやすくて良いけど。」


  木々が風に揺られて奏でる音と、森林独特のスーっとするような爽やかな空気。それを堪能しながら、小さな森の奥へと進んでいく。

  ここは何年か前、フローラがひょんな事からルビー皇女と仲良くなった場所だ。経緯は知らないけど。


  あれから二人はたまにリスや他の動物達を見たくてここに来てるみたいだけど、あんまり干渉しすぎても生態系が乱れちゃうから接触は我慢してるらしい。

  そんなにモフモフを堪能したいなら、僕の所に来れば良いのにね。フローラはもちろん、ルビー皇女なら触らせてあげないこともないよ。


「……なんて話は置いといて、ご飯になるものはないかな?」


「えっ!?」


「ーっ!!?」


  うわっ、人が居た!?


「こ、こんにちわ……。」


「こん…、にちわ……。」


「君、こんな所で何してるの?今日は学校あるよね?」


  僕の言葉に、切り株に腰かけてる女の子は『今は、昼休みだから……。』と小さな声で答えた。なるほど、確かにチャイムが鳴ってたよ。

  納得した上で改めてよく女の子を見てみると、その子は緑系の色の制服を着た銀髪の美少女だった。フローラには負けるけど。

  でも、服も瞳も緑だから、こう言う所に居ると森の妖精みたいだ。


「あ、あの、猫さんは……どうしてここに?」


「え?あぁ、僕はご飯探しに来たんだけど……お邪魔そうだから帰るよ。失礼しました。」


「まっ、待って……!」


「うわっ!?」


  丁度上の木の枝が少ない開けた場所だったしと思って飛び立とうとしたら、突風に煽られて落下。女の子の膝へと着地した。

  今の風は…………


「いきなり何するのさ、危ないでしょ!!」


  風の魔法でやられたことに気づいて、振り返って女の子に怒る。全く、変な位置に落ちて怪我でもしたらどうしてくれるんだ!


「ご、ごめんなさい……。でも私、貴方とお友達になりたくて……。」


「はぁ?」


  女の子はそう言うと、うつ向いて恥ずかしそうにもじもじした。……この感じからして、クラスに友達が居ないのかも知れないけど。


「……悪いけど、自分の勝手でいきなり危害を加えてくるような子はお断りだよ!友達が欲しければ、自分から話しかけるなりなんなり頑張ってごらん。じゃあね。」


  叩き落とされた腹立ちも手伝って、早口にそう言い放って再び羽を広げる。全く、甘ったれるのもほどほどにしなよね。


「ちょっと……、離してくれない?」


「……お願い猫さん、行かないで。」


「だからぁ……、僕に君と友達になる気は……っ!?」


  と、爪は出さないように気を付けながら前足で抵抗した所で、不意に額に感じる柔らかい感触。


  たまにフローラがしてくれるそれとよく似た唇の感触に驚いてる内に、僕の意識は段々ぼやけていった……。









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あれっ!僕何してたんだっけ……?」


「ブランったら、何言ってるの?貴方、さっき帰ってきたばっかりじゃない。」


  嫌な夢を見て飛び起きた時みたいに急に覚醒した頭で辺りを見回せば、そこは見慣れた(フローラの)自室で。

  目の前には、お風呂上がりなのか濡れた髪にケアをしてるフローラの姿があった。


「帰ってきた時からなんか眠そうだったから、そのままベッドに運んだの。覚えてない?」


「……全然。」


  そもそも、今日一日何をしてたかの記憶もほとんど無い。何か、すごく大事なことがあった気がするのに……。


「……フローラ。」


「ん?どうしたのブラン、今私にくっついたら濡れちゃうよ?」


  そんな主人の忠告は聞こえないふりをして、ネグリジェを着たフローラの膝の上へと移動して。そこに陣取るように丸まった。


「フローラ……、ちょっと頭撫でて。」


「……?はいはい、今日は甘えん坊さんだねぇ。」


  フローラは苦笑いしつつも、持っていたラシを手放して僕の頭や背中を優しく撫でてくれて。その温もりを感じてる内に、段々眠く…………。


「…………。」


「ブラン……?……寝ちゃったかな、お布団入ろうね。」


  温かい毛布に包まれて完全に眠りに落ちる前、額にふわっと柔らかい感触がした気がした。



  ~Ep.90.5 使い魔・ブランのとある一日~


   『本当、僕今日何してたんだろう……?』





  以前からブランに関するご質問をいくつか頂いていたので、ちょっとだけその生体を明かしてみました。

使い魔最後の特殊能力に関してはまだ出すには早そうなので書きませんでしたが^^;

乙女ゲーム的に考えればわかりやすい力なのでわかる方にはもうわかってしまうかもしれませんね(笑)



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