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Ep.86 イベント企画

「あれ?なんか人数増えてるね。」


「フローラお姉様、レイン様!お久しぶりです。」


  一杯目の紅茶を飲み干して、フライに二杯目を注いでもらった所で、クォーツがルビーを連れて生徒会室に戻ってきた。クォーツのあとから中に入って私達に気づいたルビーは、小走りで駆け寄ってきて私の隣に座って腕を絡めてくる。


「ちょっ、ルビー!」


「クォーツ、大丈夫だよ。ルビー、どうしたの?今日はなんだか甘えたさんね。」


  そんな妹を嗜めようとするクォーツをなだめつつ、片手でルビーの頭を撫でる。

  ルビーはなでなでする私の手にぐっと頭を寄せながら、『だってお休みの間、あまり会えなくて寂しかったんですもの』と笑った。可愛いなぁ、もう。


「フローラ、こっちまだ余裕あるから少し詰めたら?ルビーちゃんの所、狭そうだよ。」


「あ、うん、ありがとう。」


  と、ルビーとは反対側の隣に座っていたレインが座る位置をずらしながらそう言った。大人用の二人がけソファーだから、子供三人だとジャストサイズだね。


「で、どうして二人がここに?」


「お前がルビーを連れてきたのと同じような理由でフライが呼んだんだと。」


「女の子の視点からの意見があれば、参考になるんじゃないかと思ってね。」


「あぁ、なるほどね。後期の新行事の件だね。」


  クォーツは私達の向かい側のソファーに座りながら、ライトとフライと笑いあっている。向かいのソファーも私達が座るのと同じ大人用の二人がけソファーだけど、ライト達は男の子で体が大きいから三人一緒に座るのは厳しいみたい。

  仕方ないから、ライトだけサイドにある腰掛けにもたれ掛かって足と腕を軽く組みつつ立つ体勢になってる。スタイルが良いから、然り気無い仕草なのに様になるなぁ……。


「……フローラ、どうした?」


「ううん、何でもない。それより、後期にまた何か新しい行事をやるの?」


  じっとライトを見てたら不思議そうな顔をされたので、話を逸らす意味も込めてさっきクォーツが言っていた事について聞いてみる。

  すると、三人は互いに顔を見合わせてから、一冊のファイルをテーブルに広げた。


「これは?」


「生徒会が管理している、イノセント学園初等科の年間行事表だ。」


「あぁ、毎年生徒会が運営しているあれですね。」


「そうなんだ、私達が見ちゃって大丈夫なの?」


「うん、むしろ皆にも一度これを見てほしいよ。」


「まぁ、何か問題でもございますの?」


「はは……。まぁ、読めばわかると思うよ、ルビー。」


  疲れた様子で笑みを浮かべるフライとクォーツに促されて、三人でその年間行事表を覗き込む。


「うわっ、何これ!」


「後期の予定がほぼ白紙ですね。」


「唯一の予定は、年末のクリスマスパーティーのみですわ……。」


  そう、今は九月なんだけど、この行事表では特にイベントの無い9月、11月はもちろん、10月のハロウィンすら組み込まれてない。

  唯一赤字で書き込まれてるのは、ルビーの言った通り12月の24日にやるクリスマスパーティーだけだった。


「つっまんねー予定表だろ?だから、今年からは各月にひとつは何かしら行事を入れたいと思ってるんだが……。」


「10月はハロウィンがあるからまだ良いんだけど、9月と11月の案が浮かばなくてね。」


「他の役員にも明日の会議までに案を考えてくるように伝えてはあるけど、肝心の僕らが何も提案出来ないんじゃ示しがつかないからさ。」


  『と、言うわけで何かいいアイデアない?』なんて、苦笑いのフライが首を傾げた。


「が、学園全体の行事ですよね?そんなの、軽々しく言えません……!」


「あー……、レイン、そんな固く考えなくて良いんだよ?ね、ルビーはどう?」


「うーん……ごめんなさい。思い付きませんわ。」


「そっかぁ、じゃあ…………。」


「……え、私!?」


  何故か全員の視線が私に向けられる。

  えーっ、私だっていきなり振られても何も浮かばないよーっ!


  焦る私を見たライトが、『何も皆一緒に出来るようなものじゃなくても、互いに交流が深まる内容なら良いんだ』と言ってきた。

  交流が深まるような行事……、なにかあるかなぁ……?あぁ、皆の期待を込めた視線がプレッシャーを掛けてくる。特に一番近い位置に居るアースランド兄妹からの…………ん?兄妹??


「そうだ!兄弟学級はどうかな?」


「「「兄弟学級?」」」


「聞いたことのない単語だけど、どんな行事なの?」


  私の発案に皇子トリオは首を傾げ、レインが内容を尋ねてくる。


  そんな皆を見ながら、私は簡単にその内容を説明した。


「なるほど、上級生が下級生の面倒を見ながら遊び、交流を深めるのか。」


「うん。六年生は一年生を、五年生は二年生を……って感じだね。兄弟学級ならスポーツだったり工作だったり、内容を変えれば飽きずに出来ると思うんだ。」


「まぁ、それは楽しそうですわね!」


「うん、いいかも。それなら9月はスポーツにして11月は別の内容って、使い回しが効くし。ねぇ、フライ。」


「あぁ、良いと思うよ。内容は、9月はスポーツの秋ってことでスポーツで良いとして……11月は?」


「クリスマスが近いし、工作でクリスマス絡みの物でも作ればいいんじゃないか?まぁ、そこを煮詰めてくのは俺達の仕事だろ。いいアイデアありがとな、フローラ。」


「お役に立てたみたいで良かった。後期の行事楽しみにしてるね!」


  前世での経験から何気無く出た案だったけど、気に入って貰えたみたいで良かった。

  さっきまでちょっとだけ気が張ってる様子だった三人も、肩の力が抜けたようにフィナンシェに手を伸ばし始める。


  美味しそうだなぁ、私も貰おうかな。


「あっ、1個足りない!」


「え?あぁ、本当だ。ごめん、僕の数え間違いかな。」


「困りましたわね……。」


  ライト、クォーツ、ルビーはすでにフィナンシェをかじってしまっていて、お皿に残ってるフィナンシェは2つだけ。人数どんどん増えたもんね。


「じゃあ、僕はいらないからフローラとレインが食べなよ。」


「いえ、それは流石に失礼ですから……。」


  と、フライが笑顔でレインと私にフィナンシェを差し出し、レインは遠慮して押し返す。確かにフライはあまり甘い物は好きじゃないみたいだけど、取りに行った本人が全く食べないっていうのは良くないよね。

  それじゃあ……


「レイン、私達は半分こにしようよ。フライはそのまま食べて!」


「そうだね、それが良いわ。」


  お皿に残ってたフィナンシェをひとつ取って半分に割り、隣のレインに渡す。

  そんな私達を見て、フライも『何だか申し訳ないね』と苦笑しつつ最後のひとつを手に取った。うんうん、やっぱり全員で食べなきゃ美味しくないよね。


  フィナンシェも良いけど、似たお菓子ならマドレーヌも良いよね。今度また焼いてみようかな?



    ~Ep.86 イベント企画~


『ところで、フローラは色々斬新なアイデアを持ってるね。何か参考にしてる物でもあるのかい?』


『え?いや、えっと……内緒!』


『あれ、教えてくれないの?』


『あ、アイデアと言うのは経験や知識から自分でひねり出す物なのです!』


『……ふぅん、そうなんだ?』


『そうなのです!(うぅ、笑顔が怖いよーっ!!)』




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