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4 親友

 貴族のほとんどは知り合いである。領地に引きこもっていなければ、家同士の付き合いやパーティーで少なくとも顔を見たり、挨拶をしたりする。

 そうしているうちに、年齢が近くて爵位の高い者を中心に取り巻きができ、派閥となる。


 この国立ヴィストロ学園には、ある一定の範囲の年齢で入学試験に合格すれば入学できる。だから取り巻き(お友達)は示し合わせたかのように私と同じ時期に入学したし、取り巻き(お友達)じゃなくても関係を持ちたい貴族は同様にする。

 同級生は同年齢じゃなくて同世代である。


 前世なのか分からないけど、前は進学や進級の度にクラスの面子めんつを確認して一喜一憂したなぁ。今は同級生の多くが私と親しくなりたい人たちだから、初っ端(しょっぱな)から常にイージーモードが約束されているケド。



「ごきげんよう」


 教室に入り挨拶はクラス全員にするが、その後も私が会話を続けるのは取り巻き(お友達)だ。

 備え付けの長机に3脚ずつ椅子が置かれ、自由席だ。


「ベアトリス様、隣よろしいかしら」

「っ!ええ、どうぞ!」


 隣に座る相手は決めていたので、別の人に誘われる前に直接指名した。侯爵令嬢ベアトリス・バートンとは家同士の付き合いで交流がよくある。

 物事には順番がある。


 学園生活で新しい関係が作られるなら、当然取り巻き(お友達)から仲良くなる(・・・・・)に決まってるでしょ、常識的に考えて(JK)


「ベアトリス様のペンケース、素敵ですわね。どちらでお求めになったの?」

「ありがとう。以前城下町にお買い物に行ったことがあって、そこで購入しましたわ」

「休日になったら、一緒にお買い物に行きませんこと?ぜひ、案内して頂きたいわ。そういえばクラリッサ様も良く城下町のお店を利用なさるとか……」


 伯爵令嬢クラリッサ・カノーヴィルは家同士の付き合いはないが、パーティーやお茶会でよく会う。確かクラリッサの姉クリスティーヌはダグラスの婚約者で私の姉レイリアと同学年だが、姉の派閥には入っていない。


 親から何か言われてるのかなぁ。


 取り巻き(お友達)と勉強道具の見せ合いっこをしながらベアトリスとクラリッサと少し多めに会話をして、授業の開始を待った。




♢♦♢




 授業が終わり、早めに用具を片づけて教室を移動するために席を立つ。


 まだ教室から出てないはず。

 ……いたーー!


「あなた方も一緒に行きませんか?」

「「「―-―-はい!」」」


 取り巻き(お友達)ではない子爵と男爵のグループに声をかける。

 目当てはこの中の男爵令嬢イザベル・エアハートだけだけど、交流のほぼなかった人物を一人指名するのはおかしいし、関係にヒビが入るのでグループごと団体行動させる。


 別に困らせるつもりはないんだからねっ!

 そんなことしなくたって、ふるいに掛けられて自然に落ちていくし。


「先ほどの授業、やはり基本からですのね」

「もしかして、フィリア様もご家庭で習った内容でしたの?」

「ええ、学園で授業に躓かないようにって、教えていただきましたわ。イザベル様は?」

「わたくしも同じですわ。復習にはなるのでしょうけれど……」


 五月蠅くならない程度に喋りながら廊下を静々(しずしず)と移動する。

 床は大理石で、白い壁には彫刻が施されており、中庭へと続く開放された出入り口からは陽が差し込み、爽やかな風が入ってくる。


 今までわたくしは取り巻き(お友達)と貴族のその他で線引きしてきたが、学園で私は平民を加えた全員から更に選別して、有益者(親友)として取り巻き(お友達)よりも内側の線に入れる。今のところ平民は入れないが。

 まあ、だからと言って、内側に入らなかった取り巻き(お友達)と関係を薄くするつもりはない。彼女たちは今まで通りだ。

 一方、このグループのイザベルは私の有益者(親友)になるので、残り2人は取り巻き(お友達)の中で自然淘汰されていくだろう。クラスメイトとしての関係で十分だ。


「……今朝から思っていたのですけれど、フィリア様は雰囲気が以前と変わられましたわね」

「そういえば、なんだか落ち着いたようにお見受けしますわ」

「わたくしもそう思いますわ。何かあったのですか?」


 ベアトリスの発言に同意の声が上がる。


 聞かれるとは思っていたけれど、そう言う遠回しな聞き(さぐり)方、結構好きです。

 自分でピースを集めて繋げていくんですね。思慮深い人ってステキ!


「学園に入って一歩大人に近づいたので、以前のままではいけないと思って少し背伸びしていますの。わたくし、元気過ぎたでしょう?」


 以前のままだと没落ルート一直線だから、頑張っているんだよう!

 だから、姉みたいにはならないの!


 女子高生だった人格と公爵令嬢だった人格がイイ感じに融合したらしい私は、照れたように片手を頬にやり、ふふふ、と笑った。

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