3 宣誓
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食堂のテラスに入ると見知った人たちがいた。
パーティーで知り合い、仲良くしている取り巻きだ。
「ごきげんよう、皆様」
「あら!ごきげんよう、フィリア様」
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、フィリア様」
「ごきげんよう。昨日のこと、聞きましたわ。」
令嬢達とあいさつを交わし、案の定、私が階段から落ちた話になったので、見舞いに来てくれた人にはその礼を言う。
話している間に食堂には人が増えた。
そろそろかな。
「あら、お姉さまだわ。わたくし挨拶に行って参りますわ」
「レイリア様ね。わたくしも挨拶させてもらってもよろしいかしら?」
「ええ、もちろんよ」
大分前に見つけていた姉の姿を、今見つけたように言って席を立つと、周りにいた他の令嬢も「わたくしも」と次々に言い、結局全員で行くことになった。
と言っても、全員で挨拶に行くのは予定調和である。彼女たちは私の姉の立場を知っているんだから。
私の都合にも合っているから、歓迎する。
取り巻きの人数はどれくらいいるか、顔ぶれは良いかでその派閥の影響力が分かる。
つまり大勢が集まる食堂で公爵令嬢フィリアの力を示し、他の派閥にプレッシャーを掛けるわけだ。
私を先頭にぞろぞろと歩く。歩く距離だけ注目も集まっていく。
お姉さまの取り巻きの他にも色々といた。
お姉さまは相変わらず婚約者がお好きなようだ。
「ごきげんよう、お姉さま」
「フィリア!ああ、元気そうで良かったわ!このまま意識が戻らなかったらと、胸が張り裂ける思いだったわ」
「ご心配をおかけしました。ですがこの通り、わたくしは無事ですわ。お見舞いいただき、ありがとうございます」
簡素なワンピースを身にまとう少女を睨んでいた姉の視線がパッと私に移った。
感情を隠すことのない様子と素直な表現に、素で笑ってしまう。
亜麻色の髪に緑の瞳。睨まれていた少女はヒロインのマリーだろう。
「久しぶりだな。無事で何よりだ、フィリア」
「ありがとうございます、エドワード殿下。お久しぶりですわ」
声を掛けられたということは、姉がヒロインを睨むこう着状態から解放してくれるなら、原因の妹でも歓迎ししますってこと?
へえ。
エドワード・オースティンは王太子で、姉レイリアの婚約者である。
金髪碧眼のその容姿は、姉の金髪翡翠眼とよく似合っている。しかし、性格は強気で王太子という身分のため抑えてはいるが、姉の性格が嫌いで煩わしく感じている。
っていう設定だったけど、断罪するくらいなら初めから手綱を操れば良いじゃない。
それか私だけ、断罪影響から外してくれないカナー。
「エドワード殿下とお姉さまが婚約者同士、仲がよろしくて、わたくし安心しましたわ」
嫌味だよ?
でも、実際王子と姉は一緒にいるし、邪険にしていないから、一見そんな印象を抱かせる。久しぶりに会った年下にはなおさら。
だからわずかに顔を顰めた王子は、嫌味を言われたという受け止め方の反応は出来ない。
ついでに周りに王子と姉が婚約者同士だという宣伝だ。後で知らなかったなんて言わせない。
これで王子に近づくなら、二人の仲を喜ぶ妹に怒られたって仕方ないよね。
王子も皆に知られてるんだから、余計な気は起こすなよ?
「ダグラス様もレイモンド様も、お久しぶりですわね」
「お久しぶりです、フィリア嬢。入学おめでとうございます」
「久しぶり。入学おめでとう」
丁寧なしゃべり口調の侯爵家子息ダグラス・べリスはその頭脳を見込まれ、将来高官に就きエドワードを政治面で支える存在だ。銀髪で肩のあたりで切り揃えられ、空色の瞳だ。
騎士であるレイモンド・アルバーティは伯爵家でありながらもその腕前から騎士団長に目され、エドワードを軍事面で支える存在。髪は赤銅色のベリーショートで茶色の瞳だ。帯剣もし、エドワードの警護も兼ねている。
二人とも攻略対象者で王子ルートでもチラチラ現れたが、攻略してないためどういうキャラかよく分からない。フィリアとしての記憶でも、姉の婚約者で王太子のご友人だから無下には出来ないという印象だけ。攻略対象者のあと一人は留学生だが、そっちは会ったことさえないからさっぱりだ。
「ありがとうございます。わたくしも共に励みあえるようになったこと、嬉しく思いますわ。それにしても、この学園には新しいものが沢山あって興味を惹かれます。今まで親しんだものも含めて必要なものを取捨選択し、有意義な学園生活を送ろうと思います」
見渡すと反応した者がチラホラといた。
姉やマリー、取り巻きとその他のほとんどは何も引っかかりはしないようだった。
反応した取り巻きとその他の顔を確認して、微笑みを少し深くする。
「皆様方も、どうぞよろしく」
フィリアはヒロインに話しかけませんでした。