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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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4.メリーの館 後編Ⅷ

 何が起きたのか分からない。もう駄目だと思ったのに、操られた人たちはもう動かなくなった。すぐ後ろを走る茉莉は、メリーに何かあったのだろうと推測した。何かって何があったんだろう。少しそれが気になった。

 でも、それより優子とギルとリアちゃんが心配だ。

本当にメリーに何かあったのだとしたら、妨害がなくなった今が好機に違いない。


「此処も違う」


 ややこしいことに、目に見えるだけで実質的な意味を為さない扉が数多く存在する。ギルやリアちゃんならすぐ判別できるかもしれないが、私達では一枚一枚確かめるしかなかった。


「違う……」

「紗希、ここもダメ」

「あ、こっちは開いたよ」

「ほんと!?」


 手分けして散策していた。調べた扉は何枚目になるか分からない。やっと開く扉を見付けると茉莉が急いで駆けてくる。何があるか分からないので、ゆっくりと様子を見るように用心して開く。


「……!?」


 何もいない。ひらける扉があっても、それがまた何もない部屋であるのは既に確認済みだ。ほとんど内装は変わらず、赤い絨毯が部屋中に敷かれている。

 寝室なのか屋根付きのベッドがあったり、ビリヤードの台や乱雑したトランプを乗せたテーブルがある部屋もあった。

 この部屋は、どうやら書斎らしい。部屋中にある本棚が、本で埋め尽されている。ただ、その広さは図書室と行っても過言ではないくらいで、本の量も半端ない。どの部屋も、寝室さえも大きいベッドで、それくらい広い部屋だった。

 皆は何処にいるのか。地下に通ずる道もメリーに改変されたため茉莉にも分からない。

 でも何か手掛りでもあるのかと思い、念のために部屋を散策する。


「やっぱり、危険かもしれないわ」


 そう忠告してくれる茉莉。確かにその通りだ。出来れば散策はしたくない。危険な場所に、自ら足を踏み入れているようなものだから。


「でも、何かあるかも」

「焦りすぎよ。ここで何かあったらそれこそ意味がなくなってしまう」

「う、……うん」


 正論を述べているのは茉莉の方だった。何かあった時、仮に敵に遭遇したら、私達だけではどうしようもない。

 だから、無闇な行動は避けた方がいいのは分かる。でも……と、私だって何か動かないといけないと考えてしまう。


「……悪いけど、私は出来たらこんなとこ早く逃げ出したい。わざわざまた捕まるかもしれないことはしたくないの」


 茉莉が部屋の扉に手をかけながら言った。私はやっと思い知る。助けたいと思うのは私だけで茉莉はそうじゃないんだ。

 ……志水さんの時のように人が死ぬところもたくさん見てきたんだろう。自分も殺されるかもしれないところからは、一刻も早く逃げ出したいのが当然の道理だ。茉莉にも助かってほしいと思っていた筈なのに。


「ごめんね。行こう」

「ありがとう……恩に着るわ」


 私達は書斎部屋を出ていく。そして助かる道を探し始めた。


「……!?」


 ちょうど廊下に出てきた時、凄く大きな音が響いた。パラパラと建物内が余韻で揺れる。


「な、何。今の」

「あっちの方からよ」


 茉莉は音の出処を察知し、離れた扉を指し示す。廊下をさらに奥へ進んで右にある大きい二枚扉だ。他にも同じような扉もあったから、目立つほどではない。マリがその扉を開けた。それは危険を予測しない、勢いにまかせたものだった。私も急いで後に続いた。


「…!?」


 部屋の外から見た光景は、私の目を疑わせるものだ。

 まず、メリーがいた。床に伏せた状態で、高らかに笑っている。メリーは入ってきた私達には目もくれず、いや気付いていないのかもしれない。今メリーが認識している人物に、私は一番驚かされた。

 執行者であるクランツだ。ギルと対峙してそう日は経っていない。何故此処にいるのか。見れば、ギルと戦って失った片腕はやはりない。どうしてこんなことになっているのだろう。



「……どうせなら、共倒れといきましょう!?」

「……っ!?」


 クランツは私達に気付いた。それこそ、驚愕していた。


(何故あいつが……)


「……え!?」


 次は私が驚く番だった。クランツは私に銃口を向けた。何でかは分からない。急すぎる展開に理解が追い付かない。でも、命の危険があるのだけは事実で、私は退いて廊下に出ようとする。けど、銃声はやはりそれよりもずっと早かった。

「……っあぁっ!?」

「茉莉!?」


 狙ったのは私じゃなく、すぐ横にいる茉莉だった。音を立てて倒れる。


「近寄るな!」


 ビクッと体が強張る。叫んだのは確認しなくてもクランツだと分かる。でも、何でこんなことをするのか分からない。


「あんた。自分が今まで何といたか分かっているのか!」

「えっ……?」


 クランツの尋常じゃない叫び様に普通でないことだけ認識する。


「あははははっはは……! あはははっはははは……!? 痛いじゃない。酷いじゃない。いきなり眉間に撃ち込むなんて。危うく死ぬとこよ」


「……!?」


 何事もなかったように、茉莉が起き上がる。


「マリー様……」

「メリー。何なのその姿は。あと少しってところで、人形どもは使えなくなった。せっかく能力の大半を貴方に与えたというのに」


 躊躇なく、茉莉はメリーに話し掛ける。そうまるで、メリーのがわにいるようだった。

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