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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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3:メリーの館Ⅹ

「きゃ!」


 腕を掴まれる。私は必死にそれを引き剥がした。だが、すぐにまた掴まれる。茉莉も同じ状況だった。


「離して!」


 既に取り囲まれている。私はとっさに、壁際の暖炉に立て掛けるようにあった灰掻き棒で応戦した。先が一番小さく扱いやすいものだ。必死でそれを振り回す。バキッと偶然当たってくれた。他の人間にも当てようと振るう。何発か当たると、怯んでくれたようで後退し始める。それは全体に影響し、包囲網が緩む。マリに取り巻く連中に対しても威嚇し、茉莉を解放させた。


「あ、ありがと」


 今しかないと思い、一気に駆け抜ける。


「今のうち!」


 叫ぶ私だったが、私より遥かに判断力に長けた茉莉はいち早く把握していた。


「分かってる」


 ただただ懸命に振り回す。そうして道を開いていく私のすぐあとを茉莉が走っていた。前方が開けると、次の扉が見える。とりあえずあそこに駆け込んで鍵を掛ければ、また時間が稼げるはずだ。


「オォオ……ォオ……」


 再び唸る声が聞こえる。


「え?」


 前方は開けたが、後ろに回った人たちが走ってきていた。どうやら後方に回ると速度が上がるようだ。おそらく、時間稼ぎに適応しているのだと思う。しかし、今此処で時間を潰しているわけにはいかない。振り切る為にさらに足に力を入れた。


 掴まれそうになるまで追い付かれると、私がまた灰掻き棒で威嚇する。茉莉を先に行かせて私が後方に回り、距離を取らせた。


「急いで!」


 不思議と棒を振り回せば、反撃をしてこない。これは貴重な好機となる。背を向けた方、向かうべき扉から茉莉の呼ぶ声が聞こえた。タイミングを見計り、 私はまた走り出す。そうして振り向いた瞬間、バタンと音がした。


「え?」


 扉が閉まった。何故か分からない。また追い付かれるかもしれない背後など気にせず、扉の前まで一直線に辿り着く。


「茉莉! 開けて!」


 横に伸びたノブを動かそうとしたが動かず、叩いてみる。


「それが、開けたいんだけど! 勝手に閉まって、鍵がかかったようにビクともしないの!」

「オォ……ォ……オ……」


 メリーの配下になった人達が向かってくる。開かない扉。逃げ道がない。

 へたり込む。悲鳴をあげて最後の抵抗をする。何の意味もない拒絶の意思を訴えた。


「……あ……れ?」


 瞑ってしまった目をゆっくりと開く。何も起きなかったのだ。見れば、向かってきてたはずの人達は皆倒れてた。私は何もしてないはずだ。どういうわけかよく分からなかった。


「開いた」


 茉莉が扉を開けることに成功したようだ。


「大丈夫だったの?」

「あ、うん。これ……どういうこと?」

「メリーに何かあったのかも」


 私は立ち上がってさらに訊いた。


「何かって……」

「それは……分からないけど」


 私たちには、今何が起きているのか分からない。分からないが、良い方に転んでいる。運に等しいが、何とか凌いだ。ギルとリアちゃんが気掛かりとなる。合流すべく、私たちは先を急ぐことにした。

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