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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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2:異変Ⅶ

 ギルの背中に乗せてもらって走り抜けてから一時間程経過した頃、建物が見えてきた。 山を少し登ったところにそびえ立つ大きな建物だ。

 リアちゃんも、私の肩に前足をかけて掴まっている。


「あれだな」


 造りは洋風。屋敷や館と呼べる代物だ。二本ほどの電灯が照らすだけの切り開かれた広場がある。私達はそこにいったん着地した。


「何もいないな」


 気配を探るギルは、つまらなさそうに述べる。いなければいないほうがいいに決まっているのに。

 ギルから降りて自分の足を地につける。何だか久々な感覚な気がする。と同時に少なからず恐怖がこみあがる。まだ最初だ。何も出たわけじゃない。けど、真っ暗闇のなか山にいる。今は灯りが気味が悪く思えるオレンジ色。それも僅かな程度しか照らされていない。とても一人ではこんなとこには来れないと思う。いや、絶対に来たくないと言える。


 屋敷の玄関から広がるように広場が設置されている。また広場から通路が延びて先には駐車場となっていた。来客用でもあるのか十分過ぎるほどの広さを誇る。しかし、停められている車など一台もない。

 見えるのはその程度、あとは夜ゆえに黒い木々が生い茂る。木々たちは、まるで私達を誘い込むように揺れていた。


「招待状が来ただけあって、歓迎してるようだな」


 私の気も知らず、ギルは真っ直ぐに屋敷の玄関口に近付く。


「紗希。気を付けて」


 リアちゃんが肩につかまったまま、私に注意を促す。


「ホントは、私も紗希が来るのは反対だった。紗希は普通の人間なんだから」

「うんありがと。でも、友達を助けたいから」

「私か、ギルから離れないでね」

「うん」


 不安はある。でもギルとリアちゃんといることで幾らか心を落ち着かせるることが出来る。二人とも、一応魔界の住人なのに、ちょっと変かな。いや、私はきっとこれでいいんだと思う。不思議と信じることが出来るから。


 私は一層心に刻む。優子を必ず助ける。加奈との約束も必ず守る。意を決して私は歩を進めた。


「入るぞ」


 ギルから呼び掛けられる。急いで私は駆け寄った。


「気を付けろ。でなきゃ死ぬぞ」


 何とか頷くことで私は意思を伝えた。そして重々しい、黒い扉をギルが開く。ぎぎ……と軋む音がより不気味さを醸し出していた。メリーの招待状通り、私達は中へと招待された。

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