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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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1:つかの間の休息Ⅴ

 レストランをあとにした私たちは、延びに延びた、本来のメインに移行する。優子は音楽CDを、加奈は本を希望とのことだ。


「まずはCDに買いに」

「最初は本屋。本屋の方が近いわよ」

「え~?」


 しかし、何故かどっちを先に行くかで揉めていた。正直私はどっちからでもいいんだけど。


「近いって、そんなに変わらないと思うんだけど」

「多少の違いでも、近いほうを優先するほうが合理的なの」

「む、むぅ……。そんなの関係ないよ。私は買いたいもの決めてるからすぐに終わるし」

「私だって決めてるもの。早いのは私も同じ」


 先程までのチームワークは何処へ行ったのか謎だった。一向に話が先に進みそうもない。仕方ないと私は二人をなだめることにした。


「まぁまぁ、ここはジャンケンでもして」


 二人の間に割り込んだのがいけなかったのか、優子は同意を求めてきた。


「むぅ、紗希もそう思うよね」

「え、え~と……」

「紗希も本屋でしょ」


 どうやら私に意見が託されたようだ。適当にどちらかを言えばいい。なんて安易なことはなかった。優子が訴える。


「CD屋って紗希なら言ってくれるよね。言わなかったら笑い死にの刑」


 そ、そんな。また加奈の目は訴えていた。


「紗希も本屋でしょ。違うとか言ったら、紗希の恥ずかしい秘密バラすわよ」


 ……ひ、秘密って何?

 いつの間に握られてたの?

 いやいや、そんな秘密はない。多分。


「りょ、両方あるとこに行けば……」


 本とCDが一緒に売っている店に行けばと私は提案する。優子はなるほどと。加奈はまぁいいけど。と妥協してくれた。笑い死にの刑もなく、秘密も守れて息をつく。そんな秘密ないと思うんだけど。


 両方置いてあるとこに行き着く。ここはどちらかと言えば、本がメインである。つまりは、音楽CDも売っている本屋が正しい。入り口から見て、左に行けば一階の、雑誌や小説や難しい本等がおいてあるコーナーとなっている。真っ直ぐ行けばエスカレーターに乗ることになる。二階が漫画コミックスと音楽CDのコーナーとなっていた。


「先に本見に行くわよ」

「先にCDだよね」

「えぇ!?」


 入ってすぐ、エスカレーターの前でまた意見が分かれた。

「紗希はどっち?」


 さらにはまた私に意見が託される。にこやかな二人の笑顔が、先程の暗示を思わせる。


「りょ、両方いけば……」

「どうやって?」


 はうぅ。加奈が買いたい本は、一階にあるらしい。どうやら両方は階が違うから無理のようだった。どうしようかと悩む。悩んで悩んで悩んだ。

「え~と、え~と……」


 頭を抱えて、混乱する。


「あはは、紗希もさすがにお手上げみたいだし、ジャンケンで決めよっか」

「まあ、私は別に二階が先でもいいけどね」


「え……」


 初めてからかわれていることがわかった。これはもう怒るしかないと思う。


「あ、あのね!」

「じゃ二階から行こっか」

「紗希どうしたの?」


 何事もなかったようにあっけらかんと尋ねてきた。あっけなく怒気が削がれる。素の表情で訊いてくる優子には釈然としないが、無理に怒ることもない。


「別に、何でもない」


 そっけなく、優子よりも先に二階へ向かった。


 優子が決めてあったというのは、今人気ある男性グループのシングルだった。それも最近出たばっかりの新作だ。


「へ~、もう出したんだ」


 私も知ってる。このグループは今人気上昇中のアーティストだ。老若を問わない女性に人気があり、特に、女子学生くらいに人気らしい。まぁもちろん私も興味はあるわけで、アルバムも持っている。


「紗希も買うの?」

「え、いや今日はいいかな。今月厳しいし」

「今度貸したげるね」

「うん、ありがとう」


 そして今度は一階へと戻る。加奈が求める本があるか散策するのだ。いったいどんな本だろうか。そう思索した後、加奈に聞いてみた。


「それでどんな本なの?」

「恋愛小説だけど?」


 加奈は何気なく答える。訊いてみて意外だった。加奈が言う本は、私や優子も読めそうな小説だった。


「でもそれ知らないけど」


 あっさり見つけてしまったのだけど、全然見たことなものだ。随分古いのか、表紙などを見ても、最近のではないことがすぐに分かる。優子も知らないようだった。


「まぁけっこう古いかもね。図書室にもあったくらいだし」

「え? それじゃあ借りたほうがいいんじゃないの?」


 疑問に思った私は訊いていた。それとも借りるだけには収まらないほど、面白いのだろうか。


「面白いといえば面白いわよ。図書室でちょっとだけ読んでみたけど。でも図書室にあったのは、フランス語で書いてあったし」

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