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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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1:つかの間の休息Ⅳ

「う~……」


 とんだイベントを終えて、今はレストランに在中だ。昼時ということでここで昼食をとっている。それぞれハンバーグやらスパゲッティやら好きなものを注文。改造計画とやらを切り上げた理由がそろそろお腹空いたね。というありふれたものだった。待ち合わせの時間を十時にしといてよかったと思う。正直昼過ぎに待ち合わせしていたとしたら、いまだに継続していただろう。そう考えるだけで恐ろしいものがある。


「どうしたのよ、紗希」


 加奈が尋ねる。さっきから私が唸っていたからだと思うけど。原因は二人にあるのだけれどちゃんと分かってるのかな。


「もうお嫁にいけないかも」


 なんて冗談混じりではあるけど非難する。もうこんなイベントを起こさせてはいけない。さて二人の反応はいかに。


「大丈夫。紗希なら問題ないわよ」

「そうそう。じゃ次はどこで紗希を可愛くさせる?」


 ……反省の色が全くない。しかも午後までするつもりなのだろうか。自分たちの買いたいと言っていたのはいったいどこにいったのか。このままでは体がもたないし、友達とはいえ、これ以上弄られるのは正直御免被りたい。ここらでガツンと一言言おうと決心した。


「優子。加奈」

「うん? 何?」


 二人がこちらを向く。


「服とかは自分で決めるから、もうこんなのダメ! 午後からは別のとこ! いい?」


 少し声を荒げて言った。テーブルに置いてある自分のオレンジジュースを一口飲む。一息入れたのだ。


「……うっ、うう」


 その突然漏れた声に驚き、顔を上げた。


「え、ちょっ。なんで……?」


 優子が泣いている。そんなに言い過ぎたつもりはないんだけど。泣き虫ってわけじゃなかったはずなのに。加奈もうつむいてしまっている。


「え、優子どうしたの?」


 わけがわからなくなった私はとりあえず尋ねる。


「紗希が……」


 や、やっぱり私が悪い、のかな。


「非行にはしったぁ……」


 ズルッ!

 私は危うく、両手で持っていたオレンジジュースのグラスを落としそうになった。


「な、何それぇ!」


 抗議した。当然だ。


「幼い頃は、言うことをよく訊いてくれるいい娘だったのに。私は悲しいですよ。加奈さん」

「うん。そうだね優子さん」


 加奈もうんじゃないよ。うんじゃ。そんな無駄に従順だった覚えはないし。だいたい幼いっ頃って。優子と加奈に会ったのは中学の頃からだったはずなんだけど。


「あれ? そうだっけ?」


 優子は首を曲げて考え込んでみる。考えるまでもなくその頃なんだけど。どう知り合ったかはキッチリとはもちろん覚えてはいない。


「でもその頃はいい娘だったもん!」


 優子が頬を多少膨らませながらいまいちわけのわからないことを主張する。それではまるで今はかなり悪い娘みたいじゃない。


「うん。悪い」


 何でそこでそんなことを言うかな。否定してよ。これではラチが明かないと、助けを求める意味で加奈を見る。


「……」


 ブラックコーヒーの入ったカップを片手に笑ってた。いかにもってくらいにそれはもう楽しそうに。そして一言。


「じゃ、まぁここは紗希の意思も汲んで、また次ね」


 そう言って加奈はカップをカチャリと置いた。


「えぇえ……」


 皮肉にも優子と同時に抗議する。意味は全然違うけど。次って……。


「大丈夫大丈夫。紗希もそのうち一緒に選んでって言うようになるから」


 そこは断言出来る。絶対にそれはないだろうと。


「もしかして……嫌なの?」


 今度は加奈がそれなのか。哀願モード炸裂である。というか最初から拒否反応してました。


「本当に……嫌なの?」

「嫌なの?」


 今度は二人して上目づかいで懇願してくる。


「だ……、駄目。もうやだなんだから」


 危ない危ない。もう少しで流されそうだった。


「ちぇ~~」


 つまんないと言いたげな表情を浮かべたまま、優子はコーラを飲み干していく。


「ま、仕方ないわね。また不意打ちでもすればいいし」


 加奈は加奈で恐ろしいことをあっさりと言いのける。そんなに私で遊びたいのか。

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