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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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1:つかの間の休息Ⅱ

 早く起きた今日は休日。休日だとけっこう早く起きれたりする。降りてきてみると置き手紙が一つ。両親から私にだった。休日ということで何処かへ遊びに行ったらしい。仲がいいのはいいことだけど、とことん私はほっとかれてる。放任主義もいいとこだった。でもまぁ逆にありがたい。なぜなら私の横には既にギルがいた。リアちゃんはまだ私の部屋で眠りこけている。


「ん? どうした紗希」

「……別に」


 両親と鉢合わせになるんじゃないかと、ヒヤヒヤしている私の気も知らずに朝早くからここにいるのである。しかも目的がご飯をたかりに来るんだからまぁたちが悪い。せめて食費やら労働費を払ってくれるならいいのだけれど……。


「はぁ……」

「あぁ? 言いたいことがあるなら言えばいいだろうが」


 言ったら言ったで怒るくせに。



「よし出来た」


 盛り付けを完了させ、意外にもおとなしく食卓に座っているギルのもとへと向かう。むぅ。でも態度は悪かった。


「おい。これだけか」


 こんがり焼いた食パンに、ベーコンエッグ、サラダ、インスタントコーヒーを目にして訴えられた。これでも十分だと思うけど。


「もうすぐ友達と遊びに行くから、さっさと済ませるため」


 そう私は答えて、テーブルに皿を並べていく。今日の休日は、優子と加奈と遊びに行く約束をしていた。


「そういう時だけは起きるの早いんだな、お前」

「べ、別にいいでしょ」


 後片付けもさっさと済ませ、私は準備を始める。ギルは戦う相手がいないから暇だと言ってまたも寝ていた。ソファに体を投げ出して、うつ伏せ状態で寝ている。


「……まったく」


 食べるだけ食べてすやすやと寝ていた。一晩中見張ってくれたんだろうとは思う。わりと寝つくのに時間はかからなかった。

 私はふと改めて考えた。ギルについてはまだまだ謎が多い。聞いても素直には答えないし。やっぱりクランツのことについても、気になることはある。何故あそこまで固執するのか不思議ではあった。


「ふわっ! もうこんな時間だ。急がないと」


 時計を見て慌てる。駅前で待ち合わせる優子と加奈を待たせるわけにはいかない。遅刻常習というレッテルを返上しなくてはいけなかった。

 ドタバタと一階と二階を行き来した。二階で着替え終わったあと、降りてきてみるとリビングではもうギルは起きていてた。


「ふぁ……。んじゃ俺帰る」


 「あれ?」と思う。でも普段何処に帰ってるんだろ。元の世界にまで帰ってるのかな? これぐらいは一応聞こうかと思ったところ、それよりも先に、ギルを制止する言葉が出る。


「ちょっ! そろそろ窓から出入りするの止めない? ちゃんと玄関から出入りしてよ」

「俺にはこっちのが合ってんだよ」

「あのね。もう明るいんだし。誰かに見られたらどうすんの?」

「……じゃあ朝から俺が堂々と姿を晒して出たほうがいいのか」


 む。まあ確かに。堂々と出られると、普段見ない奴だろうから近所から変な目で見られるかも。そのこの窓なら外壁ちょっと高いし、庭木で多少なりとも隠れる。あとは素早く離れれば大丈夫かもしれない。


「ん。まぁそうだね。……どうしたの?」


 窓の前でギルは何かを気にして止まっている。それだけは分かった。


「あぁ。いや。別に大丈夫だ」


 ……またものすごく不安づける大丈夫だと思った。

大したことじゃないから気にするなとだけ言って、尋ねる前にギルは何処かへと帰っていった。


「紗希~」


 とリアちゃんが起きてきたみたいだ。女の子の姿でとことこと降りてきていた。眼を擦りながら、綺麗な髪が寝癖で凄いことになっている。


「おはよう。まだ眠い?」

「うにゃう……。まだ眠いかも」


 どう見ても眠そうだ。もしかしてうるさくて起こしてしまったかもしれない。


「じゃあリアちゃんのご飯もあるから。眠いならまだ寝てていいよ。一応そのときは猫の姿でお願いね」


 猫の姿なら、仮にお母さんたちが帰ってきても言い訳が出来る。


「んにゅ……分かった……」


 と、リアちゃんは再び階段を上っていく。どうやらまだ寝る方を選んだみたい。

 私も戸締まりはしっかりして二人の待つ、駅前通りへと急いだ。

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