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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
1章 闇に蠢く住人たち
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4:執行者Ⅳ

「執行者……?」

「歩きながら話す」


 相手の提案に従った。もし敵だったとしても、まだ明るく人が往来しているなか、何かするとは思えなかった。


「執行者とは……俺たちの世界に紛れ込む、魔界の奴らを討つ者を指す。俺がそうだ。……遅れたが、俺はクランツって名前だ」

「え? じゃあ人間なの?」

「……」


 沈黙が流れてしまった。


「……あんたは俺を何だと思ってたんだ?」

「えと、ギルとおんなじかと……」


 正直に答えると、クランツは実に嫌そうな顔になった。


「最悪だ」


 そう言ってさきさき進んでいくクランツをあわてて追い掛けた。


「それで、話って何ですか?」


 こっちが申し訳ない気分になってしまい、あわてて話題を戻す。そして、明らかに私よりは年上であっただろうことに気付いた。


「敬語なんて使わなくていい。普通に話せ」

「あ、うん……」


 認可されなかった。今更だったかもしれない。話を戻すぞと言って、クランツは続ける。


「俺たちは奴らを滅することが目的だ。そこに例外はない」

「俺たちはって、そんな何人もいるの?」

「殲滅機関」


 何を言われたか一瞬分からなかった。急に聞いたこともない単語を耳にした。混乱する私をよそに、クランツは話を続ける。


「……という組織がある。俺はそれに所属している。そこには俺のような執行者たちが何人かいるんだ。お互い飛び回っているから、正確な人数は確認していないが……」


 話を聴きながら後をついていくと、クランツは裏路地に入っていった。この裏路地は人通りが極端に少なく、おまけに昼でも光が届いていない。


 私はいったん足を止めて、どうしようか考える。素直についていくべきか、それともここらでやめとくべきか。


「心配しなくても、何もしない。あまり人に聞かれたくはないからだ」


 その言葉を聞いて私は歩を進めることにした。何が私にそうさせたのか。躊躇するも、それは一瞬のうちであった。クランツに続いて私も、暗闇へと入り込む。



「ど、何処まで行くの?」


 ズンズン奥へと進むクランツに、やっぱり不安を覚えてしまう。


「あんたは何故、ギルと一緒にいる?」

「えっ」


 その言い方だと、まるで私からギルに近付いていってるみたいだ。


「ギルに聞いてみてよ。私はつきまとわれてるようなもんだし」

「そうか。なら突き放せ。相手にするな」


 クランツが半身になって私を見据える。一瞬何を言われたのか分からず、理解するのに数秒を要した。


「な、何で?」

「簡単なことだ。魔界の住人が危険なことはわかっているだろう?」


 私は黙って首だけを上下に動かした。


「奴も魔界の住人だからというのは理由にならないか?危険だから一緒にいないほうがいい。それだけのことだ」


「でも私は……っ」


 言葉を遮る。いや遮られた。抜かれた白い銃口が私に向けられていた。クランツの右手に握られる銃は、静かにその威圧感を放ち、クランツは真っ直ぐな眼光を絶やさない。


 そして、誰もいないはずの裏路地に、一際銃声が鳴り響いた。

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