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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
1章 闇に蠢く住人たち
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1:処刑する者、される者Ⅱ

 ガラッと教室のドアを開けると、まだホームルームは始まっていないらしく、教室はけっこう騒がしかった。皆各々のグループをつくり、自分たちの雑談に夢中になっている。

 扉を開けてすぐに、友人の結城加奈ゆうきかなが私たちに気付いた。ふわりと長い髪をなびかせる。綺麗な顔立ちで、おしとやかな印象を持っていた。黒い髪もあってか、外見は大和撫子を思わせる。


「遅いわよ、二人とも。また遅刻だったの?」

「あー、私は違う。遅刻したのは紗希だけ」


 優子の返答を聞いた加奈が呆れた顔で私の方を見た。そして顔が訴えていた。また?と。


「あはは……。まいったね」

「笑ってる場合じゃないでしょ。そろそろちゃんと来ないと進級に関わるんじゃない?」

「え……!? そんなにやばいかな……」


 あまりに真剣な顔で言われたので、なんか心配になってきた。


「冗談よ」


 一転してにこっと笑う加奈。人が悪い。冗談ならもう少しそれらしい顔があるというものだ。


「かなっち~!」


 奥から加奈を呼ぶ声が聞こえてきた。その声の持ち主は多分、ある意味一番の問題児。狭山啓介さやまけいすけだ。

 金髪に近いくらい脱色している茶髪が目立つ。校則ギリギリであるようだけど、本当にセーフなんだろうか。優子以上にテンション高く、陽気な笑顔を振り撒いて近付いてきた。


「あ~もう、うっとおしい」


 それを加奈が婉曲もなく、ストレートに拒む。


「酷いな。かなっち。でもそんなツンツンしたかなっちもいいんだけどね。あっ、サキリン来たんだ」


 私を見ると、恥じる素振りもなく妙な呼称を口にしてきた。


「誰がサキリンだ!」


 そんな呼び方を私は認めていなかった。当然ながら抗議する。


「ふ、照れるなサキリン。とてもいい呼び方じゃないか。僕は……がふっ…!」


 どう受け取っているのかわからないが、全く分かっていないようだった。思わずのパンチが見事狭山の腹部にヒットする。うまいこと決まってしまい、狭山はぐったりしていた。


「ぐぅっ……。死ぬときはせめてサキリンの胸の中で……うごっ!」


 懲りずによろよろと近付いてきた。ならばと、鞄でトドメをさしてやった。ちょっとやりすぎてしまった気がしないでもないけど、いつものことではあった。


「早く行こ」

「ん。そうだね」

「そろそろ鞄置きたいしね」


 二人が同意して三人とも教室の奥へ。もちろん一体の屍は放っておいたままである。


「こらこら。一人忘れてるぞ」


 狭山はすぐに復活を果たし、何事もなかったようについてきた。相変わらずめげないなと、こっちが参ってしまいそうだ。


「これで四件起こったんだよな」

「ああ、最近ホント物騒だよ。死者は五人も出てるんだから」


  クラスでは同じような話題が繰り広げられていた。それは今メデイアでよく報道されている、凶悪な連続殺人事件だ。


「けっこう無差別みたい。通り魔の仕業かな」

「怖いよね~」


 どの現場にも、嫌というほど血の跡があるのが共通している。死体はバラバラでかなり飛び散っていて、酷い有り様らしい。それもパーツの所々が消えてなくなっているという。手掛りは已然見付かっていない。もちろん犯人の目星、動機等も不明なままだった。



 一件目は工事現場で起こった。被害者は男性二人。男性だというのも……いや人間というのも辛うじてわかるくらいだとか。


 二件目はビルの屋上で女性一人が血の海に伏せていた。もちろん女性というのも免許証の類によるもの。顔では判断が付かず、右手、左足が消え失せていた。


 三件目。人気のない裏通りにて男性と女性。この時は、首から上や胴の右半分がなかったらしい。


 こんなのが、自分達の住む街で三件も立て続けに起これば話題として持ち上がるのは当然だろう。


 私も当然知っているものであるが、ふと違和感があった。クラスでは私の知らない四件目が加わっていた。


「ねぇ優子。あの事件って四件目あったっけ?」

「え? さぁ……。三件目までなら知ってるけど……」

「あったわよ。昨日なんだけどね」


 加奈が得意気に答えてくれた。


「今朝のニュースでやってたからね。遅刻してきた二人は知らないはずよね」

「遅刻は紗希だけだってば」


 似たようなもんだけど。と心の中で突っ込んでおいた。


「四件目はどんなだったの?」

「僕が教えてあげる」


 優子の問いに勇ましく前に出たのは狭山だ。出番を窺ってたかのようである。ていうか、いつまでくっついてくるのか。


「四件目の死者は女性が二人。まぁ悲惨であること以外には、今までと大きくは変わらない。ただ……」

「ただ……なに?」

「死者が出たのは確かなんだけど、今までのとは少し違うようなんだ」

「もったいぶらずに言ってよ」

「わ、分かったから。サキリン。拳つくるなよ」

「サキリン言うな!」

「ストップ、ストップ! で、何が違うって?」


 どうどうと優子が私を押しとどめる。話が進まないと先を促していた。


「あ、ああ。今回は原型を留めてるんだ」

「原、型……?」


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