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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
1章 闇に蠢く住人たち
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3:黒猫

「ニャ~」


 その日は雨が降り注いでいた。パラパラと傘を必要とする雨だ。学校からの帰宅途中。危うく聞き逃しそうになったその声は、足元から聞こえた。


「あ、猫」


 優子が感嘆な声を出す。見てみると、生い茂るくさむらからひょっこりと首を出している。真っ黒い毛並みをした猫だ。丸い黄色の眼が特徴的だった。


「首輪してないけど、君は野良かな?」


 優子はしゃがみこんで、自分の赤い傘に猫も入れてあげていた。動物好きな彼女は嬉しそうである。


「この辺ではあまり見掛けない猫ね」


 加奈の言う通り、黒い猫は見掛けたことがない。三毛猫ならたまにうろうろとしている。三毛は首輪もしているから飼われているのだろう。けどこの黒猫はしていないし、何より弱っている。鳴き声に元気がなかった。


「あ、この子怪我してるよ」


 ほんとだ。優子が抱き上げてみて気付く。逃げようとすることもない。フーッと警戒はしていたから、人懐っこいわけじゃなく、逃げる元気がなかったのかもしれない。腹部の痛々しい怪我と、滲み出ている血がそう確定付けた。


「で、どうする気なの?」


 加奈が問う。


「そりゃもちろん私が飼う」


 即答する優子。ただしその即答は、逆に即取り下げられた。加奈によって。


「なに言ってんの。優子の家じゃ動物なんて飼えないでしょ」

「あう……。じゃあどうする?」

「私の家も駄目。熱帯魚飼ってるし。元気になったら何されることやら。ってことで紗希しかいないわね」


 薄々そうなるのではないかと伺っていると、本当にそうなった。まぁ猫は好きだし、別にそれでも良い気もするけど。


「でも飼っていいって、許してくれるかどうか分かんないよ?」

 

 すると、加奈は手をヒラヒラさせ笑いながら言う。


「大丈夫大丈夫。こんなことぐらいで紗希ん家のおばちゃんは反対しないって」

「そうそう。紗希ん家だもんね」


 そんなにウチって軽いの!?

 近々家族会議でも開いて、じっくり検討した方がいいかもしれない。


「んじゃよろしく」

「ん。おっけ」


 優子から私に黒猫が渡される。黒猫はいまだに弱々しくも警戒している。ような気がした。





「サ……キ……?」


 優子と加奈、友人らと別れた後である。紗希には聞こえていなかったが、確かにその呟きはあった。

 周りに誰かいたわけでもない。腕に抱える黒猫一匹を除いて、他には誰も。



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