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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
1章 闇に蠢く住人たち
20/271

2:定まった標的Ⅹ

「今日から飯担当な」


 …………。……へ!?

 言葉が出ない。思考回路がストップしてしまった。


「それって、私がご飯作れってこと?」

「あぁそうだよ」


 掴んでいた手を離し、ギルは背を向けた。


「じゃあここに来たのって……」

「まぁ……、家行ったらお前がいないから飯作らせようと思ったのもあるな」


 私は唖然とした。でもそれも数秒のうちだけで……。


「ぷっ、あは、あはははは」

「な、何笑ってんだ!」


 だって、ギルも私を狙ってくる奴らと同じ魔界の住人なのに。戦ってる時は、恐ろしいなんて思ってしまうのに。ギャップが激しいというか、人間っぽいところがあるのが可笑しいというか。おまけに素直じゃないし。


「何で笑ってんだ? おかしな奴だな」

「あははは……あれ? でもさ。私に作ってほしいんなら美味しかったってことだよね」

「まぁまぁだよ。食えないこともないってとこだ」

「ちゃんとこっち向いて言わないと、説得力ないよ?」


 ギルは再び背を向けてまぁまぁだと言う。しかも、いつもとはどこかぎこちない。


「……もしかして、照れてる?」

「あぁ? 照れる? 俺が? んなわけねぇだろ」


 横から顔を覗こうとすれば、向きを変えてそれを拒絶する。立場が逆転したように思えた私は、悪戯心が芽生えてきた。


「耳赤いよ」


 もちろん嘘だけど。


「あー! うるせーよ。殺すぞ」


 これ以上はまずいかなと思う。でも、ギルが面白い。


「私が死んじゃったらご飯作れないよ?」


 ガシッ!!


「わぷっ!」


 また突然頭を掴まれる。キリキリキリキリ……。

 い、痛い。痛い。痛い。


「今すぐ死にたいのか?」


 あわわわわ……。ちょっとやりすぎた模様。一気に雰囲気がダークになってしまった。


「いやいやいやいや……」


 必死に否定すると、今回はすぐに離してくれて助かった。


「でもいいよご飯くらいなら。助けてくれたお礼。でも今日は学校あるから無理だけど」

「お前毎日遅く起きろ」


 また無理なことをおっしゃる。無理だと言うと、なら早く起きろと言う。私にはそれもけっこう難しいけど。眼が殺気を放っていたので、とりあえず了解をとった。今日の朝が無理だと分かると、ギルは早々と立ち去る。正確には飛び去って行った。



「ありがと」


 さてと。それじゃ私も教室に戻ろうかと思う。屋上のドアノブに手を掛けようとしたところ、実に不吉な音が鳴り響く。

 し、しまった! 朝のチャイムが鳴ってる。あ! そういえば数学のテスト勉強、何にも出来てない。



 遅刻にはならなかったものの、テストは死んだと言える。あまりに悪かったらしく、放課後補習を宣告されてしまった。

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