表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
1章 闇に蠢く住人たち
19/271

2:定まった標的Ⅸ

 次の日。私は珍しく、遅刻せずに学校に行った。


 教室に入って息を呑んだ。教室に穴が開けられていることに皆驚いているが、私は違う。山村君が平然と席に座っていたのだ。

 でも……生きてた。良かった。生きててくれた。


 安堵した私は、そのまま自分の席に着いた。午前中にある数学の少テストのため、勉強しようと教科書を開く。


「神崎さん。ちょっと来てくれない?」


 不意に声をかけられた。顔をあげると、山村君がそこにいた。


「あ……うん」


 周りの目を気にして、私は後から行くことになった。場所は屋上。本来立入禁止の場所であるが、人気のない場所としては最適である。教室に穴が開いていたということは、まるっきり夢だったわけがない。となると、山村君は何処まで知っているんだろう。何処までが、現実だったのだろうか。



「や、来たね」


 ギィと扉を開くと、すぐにお互いを確認できた。私が歩み寄るのに合わせて、山村君もゆっくりと距離を縮める。


「話があったんだ。昨日のこと、覚えてるよね。どうやら、僕は死んじゃったらしい」


 え……。じゃあ、今目の前にいるのは……?

 今話しているあなたは……?


「痛かったよ。あれは。喰い千切られるなんて、初めてだったから。でさ、喰われながら僕はふと考えたんだ。どうしてこんなに痛いんだろう。どうしてこんなに苦しいんだろうって。そしてすぐに分かった。あぁ、そうだ。神崎さん、全ては君のせいだったんだって」


 死んだ筈の人間が、今目の前にいる。普通に考えればおかしな話だ。でも、今それが現実となっていた。


「本当なら、君だったんだ。君が喰われる筈だったんだ。それなのに、僕が死んで君はのうのうと生きている。それってさ、不公平だよね。だから僕は、君を殺すために、蘇ったんだ!」


 それを聞いて、妙に納得している私がいた。そうか。なら仕方ないか。やっぱり私は……。




 ズンッ!―



「死ぬのはお前の方だ」


「ぐふっ……。な……んで、此処に……」


 いつも突然現れるギルがいた。そして、蘇った彼に致命傷を与えている。背後から、右腕で体を貫いていた。


「お前がいるからだろうが」


 荒っぽく、通過させた腕を引き抜く。山村君は血を吹き出し、そのまま倒れた。



「なん……で……。何で殺したの!? ギルの世界から来た奴だけじゃなかったの!?」


 やっぱりギルも、今までの奴と同じなんだ。ギルは違うと思ってたけど、人間も殺すんだ。そう私は思って叫んだ。でも、ギルの言葉は実にあっさりしたものだった。


「あぁ? よく見ろ。こいつは人間じゃねぇ」

「……!? 消え……て」

 

 今までと同じだった。血に伏せた山村君は風化し、砂となった。そして跡形もなく、消えた。


「ど……どういうこと……?」

「こいつも魔界の住人なんだよ。俺以上に暗殺に長けた奴だ。いつの間にか突然存在する。だが誰もたいして気にしない。むしろ前からいた仲間のように思えるらしい。普通は集団に出没するんだがな。……まぁつっても、死んだ奴が忽然と消えたから俺も分かったんだが」


 集団のなかにいつの間にか存在してる。それってまるで……。


「じゃあ昨日から?」

「あぁ。本当は最初からいない。獣連れてた奴も、気付いてなかったかもな」

「……そっか」


 昨日ギルが突然いなくなったのも、山村君を追い掛けたんだろう。

 ……良かった。本当に良かった。私のせいで犠牲者は出ていなかった。

 でも……と考える。でもこれからは……。


「ひゃう」


 ガシッと左手で突然頭を掴まれる。キリキリと締め付けられて痛い。


「んなことより、お前。さっき殺されてもいいか、なんて思っただろ」

「お、思ってないよ。さっきは、私のせいで死んじゃったんなら、恨まれて殺されても、仕方ないかなって……」

「同じだ、ボケ」


 キリキリキリキリキリ……。


「痛い! 痛い! 痛いって! ギルには関係ないでしょ」

「お前は囮だって言っただろうが。たった三日で四体も殺せたからな。かなり効率が良いのが分かったんだよ」


 囮なんて嫌なのに。なんて言っても通用しないんだろうなぁ。ってそろそろ頭離してほしいんだけど。

 もう締め付けてはいないけど、いまだに掴んだままである。


「あとな……」


 まだ何かあるの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ