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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
4章 闇との境界線
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3:死に神Ⅴ

「どうしてスカルさんはギルを狙うんですか?」


 何だか互いにすれ違っている気がする。そこまで訊く気はなかったはずだが、つい私は思ったままの疑問を口にしていた。


「……そうデスネ。紗希さんになら、話してもいいかもしれません。貴方になら誤魔化す理由はないし、むしろ疑われている方が今後に支障が出ますネ」


 スカルさんは座ったまま寝ているギルを一瞥した。再度寝ていることを確認したようだった。


「私は、ギルさんに借りがあるのデスヨ。命を救われたこともありました。私は彼に、余りある恩を返したいだけデス」


 それはまさに真逆の真実。てっきりスカルさんはギルを殺そうとしていると思ったけど。


「な、なら……ギルにもちゃんと伝えれば……」

「そうデスネ。こちらの世界なら普通はそれが正しい。わざわざ殺すつもりだと口にするなど、ツンデレみたいなもの」


 いやそこまで言ってないんですけど。


「でもギルさんも、そして私も魔界の住人デスから、そういった馴れ合いは逆に死を引き付けてしまう。何よりギルさんはそんな理由は嫌うでしょうし」

「……」


 魔界がどういう世界か、具体的には分からない。けど、恐ろしい場所であろうことは感じ取れる。そして、確かに恩返しなんて理由を、ギルが嫌いそうなのは確かだった。


「とまぁそういうことなんで、ギルさんには内緒にしてくださいネ」

「……でもいいんですか? このままで……」


 勘違いされたままでいいのか。そう問うたところ、スカルさんは構いませんよ。とこの上ない優しい声で、そう言ったのだった。


 それからはひたすら勉強会だ。昼食も必要となるが、スカルさんがこれまた勝手に持ち込んだであろう冷蔵庫から、弁当とお茶を出してきたので困ることはなかった。


「……ん、あれ?」

「おや。気がつきましたカ?」


 いつの間にか眠ってしまったらしい。夕方近くまでは覚えているのだけど。私は机に突っ伏して寝ていたらしく、毛布がかけられていた。


「あ、毛布ありがとうございます」

「いえいえ。随分とお疲れだったみたいでしたんでネ」


 そう言ってスカルさんは、途中だった本へと視線を移す。回転椅子に腰かけ足を組み、片手で本を持って読み進めていた。

 今何時だろうと壁にかかっている時計を見れば、もう針は二十一時過ぎを示していた。


「もうこんな時間」

「この病院も閉めたみたいデスヨ。壇上は整いましたが、さて役者は揃いますかネ」

「……?」


 どういうことか尋ねると、リアちゃんを傷付けた張本人、おそらくは執行者が現れるかということだ。

 今頃説明されるのもどうかと思うけど、リアちゃんを狙っているのなら、わざわざこっちから動かなくても向こうから勝手に現れるだろうということだ。


「最初からちゃんと説明してくださいよ」


 てっきり夜まで待ってから動くと思っていた私には、寝耳に水のことだった。


「まぁまぁ、結果待つことには変わらないデスし」


 そこまで言ってスカルさんは言葉を切った。そして……。


「どうやら……役者は揃ったみたいデスネ」

「あぁ、来やがった」

「……!?」


 私には全く感知出来ないが、反応したのはスカルさんだけじゃなく、ギルもだった。ずっと同じ態勢で寝ていたわけだけど、今は随分寝起きが良い。ただ、リアちゃんまでも起きることはなかった。様子を見ても、そんな気配はなさそうだ。


「行くぞ」

「うん。待っててね」


 それだけリアちゃんに伝える。

 手っ取り早く窓から外へ出た私達は、もう暗くなっている駐車場に出てきた。僅かに照らされているが、視界は悪い。振り返れば窓があるはずだが、壁があるようにしか見えない。暗いせいかとも思ったがそんなことはなかった。


「……おい」


 そこで簡単に私を呼ぶのはギルだ。ちょいちょいと手招きしている。


「何?」

「大丈夫か?」

「え?」


 呼ばれるままにそばに行くと、ギルはそんなことを訊いてくる。突拍子もなく、どういうことかピンと来なかった。


「あのな。つい寝ちまったから、何もされなかったかって訊いてんだよ」


 何か私が怒られてるみたいだ。


「別に何もなかったから大丈夫だって。心配してくれてありがと」

「誰が心配なんかするか」


 ぶっきらぼうなギルに対して内心笑ってしまう。心配してくれてるようにしか見えないのに。



「あれ~。これはまた意外なところで」

「……!?」


 現れたのはアッシュと名乗った執行者だ。本当にこの人が……。


「あなたが……」

「やっぱお前がやったみたいだな」


 せっかく訊こうとしたのに、ギルが私に被せてきた。


「ちょっ、邪魔しないでよ」

「あぁ? 誰が邪魔だ。紗希はそこらへんで震えときゃいいんだよ」

「にゃあぁぁぁ!?」


 頭を拳で挟んでグリグリされてしまう。めちゃめちゃ痛くて逃げたくても逃げられなかった。


「……うぅ」

「大丈夫デスか?」


 うずくまって頭を抑えているとスカルさんが大袈裟にも包帯を巻いてくれる。


「で? 僕が何をやったって?」

「金髪の女をやっただろ? それともその時は黒猫だったか?」

「ははっ、知らないよそんな娘は。何故僕がやったと?」

 アッシュさんは逆に訊き返す。


「お前が執行者だからだよ」

「それは暴論じゃないのかな。他の魔界の住人にやられたのかもしれない。まぁ、その娘が言ったのなら別だけど?」

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