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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
4章 闇との境界線
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3:死に神Ⅲ

 ようやく落ち着いて病院の外にまで辿り着いた私は、早速メールを打ち込み始める。


「めんどくせぇな学校とかいうのは」

「そんなことないと思うけど」


 すると、どうやらギルはいちいち連絡しないといけないことを言っているらしい。


「つっても殆ど毎日行ってるだろ。そんな同じことばっか俺はやってられねぇな」


 いや違うみたいだ。ほぼ毎日行くのが面倒だということか。


「確かに殆ど毎日行ってるけど、友達に会えるし、けっこう楽しいよ」


 そこで私は思い付く。普段ギルは何をしているのか。私が学校に行っている間にどうしているのか。


「普段ギルは何してるの?」

「あ? 鳥を追いかけてみたり、寝たりだよ」


 初めて聞いたけど、何だかやることがなさそうだ。


「もしかして暇なの?」

「……まぁな。お前がいないからな」

「え?」


 思いもいない答えが返ってきたので、びっくりしてギルを見上げてしまう。


「いじる相手がいないからな」

「あ、ああ。そういうことか」


 何か凄い焦ってしまった。源川さんにあんなことを言われてしまったせいだと思うけど。気を取り直してメールの残りを打ってしまおう。


『今日はごめん。とりあえず今度またお願い』

謝罪のメールを打ち込み加奈に送信した。勉強を見てもらう約束はまた次にお願いしよう。


「終わったなら戻るぞ」

「あ、うん」


 その後は特に知り合いに会うこともなく、スカルさんの部屋まで戻ることになる。いやまぁ、知り合いなんて源川さんくらいしかいないのだけど。

 この場で待機することになると特にすることもなく、秘密の病室にて自主勉強をすることにした。


「フム、すると紗希さんは高得点を取らないとメイドになると」

「……まぁそういうことです」


 机をスカルさんに貸してもらって勉強道具を広げる。ギルに頼んで持ってきてもらった。わざわざメイドのことなんか話さなくていいはずだが、わざわざ勉強することに不審にスカルさんは思ったらしいので尋ねられてしまった。……不審って。


「いいじゃないデスか。可愛いもんデスよ。私の中でメイド服は四番目に好きでして、あのデザイン、いや文化を考えた人はノーベル賞ものかと思いますヨ」

「……はぁ」


 どう反応すべきか分からず、ただ相槌を打つしか出来なかった。


「紗希さんはどういうのが好きデスか? ちなみに私はカチューシャは必須でして、どちらかと言えばミニスカートがいいデスネ。ロングもいいデスが」

「いやあの……別にメイド服は好きじゃないですけど」


 むしろ着たくないから嫌いな方である。いきなりメイド服について語られても困ってしまう。


「ギルさんはどうデスか?」


 と、スカルさんは空いているベッドに座るギルに話を振った。確かにギルが何て答えるかちょっと気になる気もする。


「まずメイドが何か分かんねぇんだが」


 そう返してくれたので何だか安心出来た。ギルがいきなりメイドは好きだとか言い出したら、私はギルとの距離を本当に改めなければならない。


「メイドというのは、所謂自分の召使いでして、ご飯など色んな世話をさせたり、まぁ夜の相手とか好きな様に……」

「違います! 夜の相手なんかしなくていいです」


 全くスカルさんは何を言い出すのか。こういうとこはホントに自重してほしい。


「おっとこれはスミマセン。けどこれは私のアイデンティティでして、今更自重といっても、もはや修正が効かないというか、何というか」

「じゃあせめて私の前では謹んで下さい」

「OK牧場!」


 ……。相変わらず髑髏の仮面を被っているから素顔は分からないのだが、親指を立てているあたり、多分めちゃくちゃ良い笑顔になっているに違いない。しかも信用出来ないです。


「……一応確認しときたいんですけど、リアちゃんには何もしてないですよね」

「カッカッカ。患者には手を出しませんヨ。……それにまぁ、そんな余裕もありませんでしたしネ」

「あ……そうですよね。すみません」


 つい心配に尋ねてしまったのだが、その点に関しては杞憂のようだ。出会ってまだ間もないが、誰かを助けることに於いては、スカルさんの姿勢は揺るぎないと素直に感じ取れる。


「エ~ト、ちなみにこれがメイド服デスヨ。ギルさんドウデス?」


 ……ただやっぱり、この軽々しいノリはどうにか治してくれないかと思う。


 部屋の隅にあるロッカー(多分これもどっかから持ってきたんだと思う)をガチャリと開けて、スカルさんお気に入りらしいメイド服を出してきた。というか何でそんなことにあるのか。


「なんか動きにくそうだな」

「まぁそうデスかね。さすがに着たことないんで分かりセンが。紗希さん一回着てもらってもいいデスか?」

「な、何でそうなるんですか。絶対嫌です!」

「あ、サイズなら大丈夫デスよ。ちゃんと紗希さんに合わせてマスから」

「そういうことじゃなくて……! って何で私のサイズを!?」


 反射的に自分の体を抱くようにして隠す。訊かれて答えたわけでもないし、測られたことも絶対にないはずだ。


「勘に近いデスけど、私は何となく分かっちゃうんデスよネ~」


 ……む、ぅ……。何か納得いかないんですけど。


「と、とにかく絶対に着ませんから!」

「そうデスか? まぁこれはまた次の機会にお願いするとして。それより私が勉強見ましょうか?」

「へ……?」


 いったいどういうつもりなのだろうか。それは願ってもないことなのだけど。


「私がもし勝ったらメイドは着なくていいんですけど」

「着たいんですか?」

「違います! ……まさか勉強を見る代わりにってことですか?」

「ああ、なるほど。それは思い付きませんでしたネ。紗希さんがその方がいいならそれでいいデスけど」


 むむ……しまった。スカルさんにはそのつもりはなかったようだ。


「別に条件なんかないデスよ。ちょっとした親切心からの提案デスから」

「スカルヘッド。お前……」


 ギルがそう言って声を掛ける。その後にどんな言葉があったのかは分からない。ただギルは、面食らったような表情をつくっていた。それはまた、いったいどういう意味なのだろうか。


「……ハイ。恐らくはお察しの通りデスヨ。これだけは、信じてもらえませんカ?」

「……好きにしやがれ」

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