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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
3章 病院に潜む影
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エピローグ

 長い夜が明けたあと、後日様子を見に行ってみた。病院に残った戦いの跡によって、何が起こったのかと報道されていたようだが、解明されることはないように思う。

 それは、優子も何も覚えていないらしく、誰の口からも証言されることはないからだ。


 その時には源川さんにも会うことができた。


「別の病院に行こうかなんて人もいるんだけど、私もどうしようか悩んでて……」


 なんて、相当にまいっているらしく、愚痴をこぼしていた。


「大丈夫ですよ。きっともう、何も起きませんから」


 だから私は教えてあげた。


「え? どうして?」

「あ……、何かそんな気がするんです」


 当然の質問だったが、私は理由を言うわけにもいかず、何とか誤魔化しておいた。



 それから、優子はわりと早くに退院することになった。


「おっはよう!」

「おはよう優子」


 今では優子はもうすっかり元気を取り戻し、むしろ元気すぎるくらいだった。


「おはよう。ところで鍋っていつやるの?」


 加奈が思い出したように言うと、優子はしまったという表情を見せる。


「あ、そうだ、忘れてた。紗希いつがいい?」

「え、ほんとにやるの?」


 今は全然時期じゃないのだけど。


「当然。久々に紗希と加奈と騒ぎたいしね」


「お前らうるさいぞ。もう少し静かにしろ」


 そう言って注意するのは、朝の仕事が終わって帰ってきた庵藤だ。


「まぁまぁ。たまにはいいじゃん。あー、今日も可愛いよサキリン」

「サキリン言うな!」


 狭山が朝から手がつけられない。また騒がしい一日になりそうだ。


 けれど本当は、こうやって過ごせることが嬉しい。


 桔梗さんと、名前も聞けなかった女の子のことを思い出しながら。


 もう、あんな悲しいことは起こってほしくないと。



 そう思いながら、今日も過ごしてゆく。




§




 ざわざわと黒い無数のものが蠢いていた。よく見ればそれらは球体で、跳ね回りながら何処かへと向かっている。


「ご主人たま~」


 一匹が声を発した。呼ばれた者は振り返ることなく返事をする。


「魑魅どもか。今は忙しいんだ。あとにしろ」

「でも……二号がやられました」

「……なに?」


 それは呼ばれた男にとって驚くべき事実だったようで、興味を向けた。


「誰にだ?」

「スカルヘッド、スカルヘッド」

「処刑人、黒い、処刑人」


 口々にその名を述べた。騒がしいともいえるなか、普段ならこの男も怒声を浴びせるだろうが、それ以上に驚愕していた。


「スカル、ヘッド……。あぁ、あの医者か。そうか。あいつが……。ついに俺を殺したのか。しかし処刑人とは……もっと詳しく聞かせろ」

「はい~」


 またもや口々に述べ始めてしまったので、さすがに男は止めた。一匹を適当に指名し、それから詳しく事情を聞いた。



「なるほど……。つまりスカルヘッドの奴は、俺の偽物クローンを殺して復讐を果たしたと思っているわけか。クハハハ、好都合だ。このチャンスを逃す手はない。処刑人も猫のガキも、協力した人間も、聞けば聞くほどこの上ない素材じゃあないか」

「ご主人たま。どうします?」

「殺人ウイルスはスカルヘッドに取られただろう。ならばワクチンもあいつならすぐに開発するだろうよ。何か別の手を考えねばなるまい。それに、カゲツも死んだとなれば、駒が必要だ。偽物とはいえ、俺がやられたんなら相当の準備もいる」


 男の名はエルゴール。こいつこそがオリジナルであり、スカルヘッドを作り変えた張本人であった。


「ははっ、いいぞ。楽しくなってきた! くは、ははは、はははは、はーはっはっはっは!?」


 仰け反りながら嘲笑い、その高ぶっている姿はまさしく狂気の塊だった。

 エルゴールの策略はまだ終わっていない。


 狂気に満ちた男が動くのも、そう遠くはない。

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