6:真意Ⅶ
ふと、頭の上に手がおかれる。ギルの手だった。
「心配か? あいつが……」
「……うん」
誤魔化しても仕方ない。私は素直に、クランツのことが気に掛かると肯定した。
「しぶといんだよあいつは。今まで何回殺り合っても、それでも俺を殺しにきた。心配するだけ無駄だ」
「うん……そうだよね」
私自身助けてもらったこともある。だから、どうしても心配になる。
「あーもう、そろそろ辛気くさいのはナシにしましょうカ。うまいことエルゴールの策略も止めたことデスし、パーッといきまショウ」
「あぁ? お前が一番ぴりぴりしてただろうが」
「痛い!」
スカルさんが明るく振る舞う。ギルが咄嗟にスカルさんをポカリと殴った。私がそれを見て笑った。
「んじゃあ、帰るか」
「うん」
ギルの一言で、ようやく長い夜が終わりそうだった。
優子を元の病室に運び、何もなかったように施す。病棟の壁は破壊してるし、全く何もなかったなんてことは無理だ。
でも、優子には怖いことなどなかったと思ってもらいたい。優子にかかった催眠らしきものも、スカルさんが指を鳴らすと解けたらしい。実際に、ベッドに寝かせた優子はふにゃ……と寝ぼけてみせた。あとは、何も覚えていないことを願うしかない。
少女の姿で、今はもう落ち着きがあるように寝ているリアちゃんを背負う。こんなに小さい体なのに、あんなに頑張ってくれたんだなと思わせる。
元気になったら、何かして欲しいことはないか訊いてみようと思う。
「それでは私はこれデ。エルゴールがつくったウイルスのこともありますし。また会う日までゴキゲンヨウ」
スカルさんは、殺人ウイルスが入った試験管と、エルゴールの残した資料を持って調べてみると言った。
「二度と来んじゃねぇよ」
ギルはそう言って拒否していた。
「カカカカ。相変わらずつれナイ」
「あの…ありがとうございました」
「いえいえ、お礼なら私が言うべきデスよ。私のほうこそ助かりましたヨ。あと……」
「え?」
耳打ちを示唆するので、耳を傾ける。
「体に悪いので、小さめじゃく、ちゃんとサイズのあったブラをつけたほうがよろしいカト……」
「なっ……!」
いきなりの発言に私は驚いた。な、何で知って……。いや、何でわざわざそんなこと……。
「カッカッカ。楽しい夜でしたヨ」
スカルさんはそう言ってあっさりと姿を消した。
「何言われたんだ?」
「何でもないの!?」
「……?」
ギルが不思議そうに首をかしげた。本当に何でもないと言い張ることで何とか乗り切った。多分あの発言は、偶然か何かだと思いたい。
そうして、病院での戦いは終わった。