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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
3章 病院に潜む影
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3:侵入Ⅱ

 外からも分かるが、中は電気が全くと言っていいほど点いておらず、真っ暗だった。歩くだけでも少し困難に感じる。なのに、前を歩くスカルヘッドとギルは構わず進む。小走りになりながらついていくだけで精一杯だ。こんなところではぐれたくなかった。


「あちらにナースたちがいますんで、避けてこっちを通りマス」


 真っ直ぐの通路を進むと左のところにぼんやりと明かりが見える。正面入り口に繋がっているんだろう。そして、何を言ってるかは分からないが、話し声が少し聞こえた。スカルヘッドの言う通り、別の道を行くのが定石だ。真っ直ぐには行かず、左の通路に逸れて行く。


「そろそろ点けますか」


 そう言ってスカルヘッドは明かりを灯した。スカルヘッドの周りだけが明るくなる。何てことはない。懐中電灯を手にしただけだ。なんというか用意がいい。


「で? 何処にいるのか知ってるのか?」

「え?」


 ギルの質問に、先を歩くスカルヘッドが振り向いて確認した。


「二日以上待ってたんだろ? 当然敵は把握してんだろうな?」

「いや、それは……」


 と、言い淀む。そして何事もなかったようにまた、前を向いて歩き始めた。ギルは当然引き留める。肩ではなく、頭をガシッと掴んだわけだが。


「おいこら。まさか何にも分からないのか」

「いや~。そんなまさか。そこは、そこの紗希さんが知ってるかと」

「えぇ?」


 そこで私に振りますか。そんなの私にだって分かるわけがない。だけどギルはそんなことは気にしていない。


「つまりお前は知らないんだな」

「ひゅーひゅー」


 どうやら口笛を吹いて誤魔化しているようだ。いや全然吹けてなくて、自分で言ってるだけなんだけど。


「それで誤魔化してるつもりか。あぁ?」

「ふぎゃあ!」

「ギル。さすがにそれで怒るのは酷いでしょ」


 少し可哀想になってきたので止めに入った。ギルはパッと掴んでいた手をあっさり離す。


「何で止めんだ」


 何でと言われれば、アイアンクローを喰らったことのある身としてついというか、そんな感じである。


「うぅ……紗希さん助かりましたぁ」

「っあ、いえ……」


 ヌッと目の前に出てきたから少しビックリした。しかもだ。もしかしてわざではないかと思う。懐中電灯で顔を照らして近付いてきた。この暗いなか、ただでさえ不気味に映るのに、視界に滑り込んできたのは髑髏だった。さすがに怯んでしまったのは仕方ないはずだ。


「使えねぇな。なら地道に探すしかないか」


 ギルはがりがりと頭を掻いて面倒だと言いたげであった。


「……!」


 その時、コツ、コツと足音が聞こえる。私にもはっきりと聞こえた。スカルヘッドは瞬時にライトを消す。ギルは私のそばまで来て静かにしろと囁く。私はコクと頷いた。声を出して返事することも控える。どうやら足音は私たちが歩いていた方向、つまりは前から来ているようだ。


「ギルさ~ん」


 と、出来るだけ小声で、だが私たちに聞こえる声量でスカルヘッドが呼ぶ。たまたま空いていた部屋からだ。チョイチョイと手招きしていることから、その部屋で様子を見ようということだ。わざわざ廊下で鉢合わせになる必要もない。ギルは私を担いで素早く移動した。


「ちょっ、もう少し持ち方ってもんが……」


 私は荷物か何かを持つように脇に挟まれてしまう。


「静かにしてろ」

「む……」


 私の抗議はたった一言で破棄された。静かにしなきゃいけないのは分かるが、少し納得出来ない。そんなことを考えているうちに、足音は大きくなっていた。

 そして一筋の光が見える。どうやら向こうも懐中電灯を持っているみたいだ。


「……ちょ、ギルさん。重いんですけど」

「……!?」


 何と私を担いだままのギルは、スカルヘッドの上に乗っていた。乗られたスカルヘッドはうつ伏せに潰れている。


「我慢しろ」


 そしてギルは気にすることなく、光の見えるほうを注視している。


「……ヒドイっ」

「来たぞ」


 当然まだ何か言いたげだったスカルヘッドだが、ギルのその一言で押し黙る。倣って私も静かに息を潜めた。一筋に過ぎなかった光は広がり辺りを照らしていた。


「うぅ、真っ暗すぎる。早く帰りたいなぁ」


 すぐ側を通っていたのは、普通の看護士さんだった。ぶるぶると腰を引かせて見回りをしていたらしい。見えなくなった頃を見計らい、私たちは再び外に出る。


「おい。本当にこれで探す気か?」

「え?」

「人間相手にまでコソコソしなきゃなんねぇのかってことだ」

「それは仕方ないんじゃ」

「無理だ。やっぱ全員先に気絶にでも持っていくしかねぇな」

「ダメダメ。ダメだってば」


 なおもまだ実行しようとするギルの腕を私は必死に引く。


「べ、別にそんなことしなくてもギルなら余裕でしょ」

「……たりめ~だ」


 そのまま引きづられて行きそうになりながらも何とか留めた。

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