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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
3章 病院に潜む影
123/271

3:侵入

「……スカルヘッド」


 その時、あの医者が現れた。随分と神出鬼没である。今も何処から現れたのか。そして何故か陽気な雰囲気だった。


「お前此処で何やってんだ?」

「さぁねぇ。もしギルさんの敵に回っていると言ったら?」


 その瞬間、ギルが消える。ように思えて、気付いた時にはスカルヘッドがいた立ち位置にいた。腕を突き出している体勢でだ。スカルヘッドはそこから後退して見せていた。


「ギャアァァ。死ぬっ。死ぬぅ。冗談に決まってるでしょうにぃ。私がギルさんの敵になるなど有り得ないデスよぉ」


 と騒ぎながら、切り裂かれた右腹部を摩る。血は出ていない。裂いたのは服だけだ。おどけた態度を取っているが、ギルの攻撃を避ける能力は持っていることが分かる。


「有り得ないのはお前がまだこの近くをうろついていることなんだよ。どういうつもりだ?」

「いえいえ。私は光に集まる蛾みたいなものでして。興味あるものにはとことん気が済むまでちょっかいをかけたいのデス。ギルさんも知ってるでショ?」

「んなことは初めて知った。それで、何に興味があるって?」

「それは……」


 ユラリとスカルヘッドの右手が揺らぐ。伸ばされたその人指し指は指し示す。その方向は……私だった。


「えぇ?」

「そう。アナタデスよ。処刑人と行動を共にする人間なんて史上にも有り得ない。だから私は興味がありマス」

「お前まさか」


 ギルが何か言っているがそんなことは無視してスカルヘッドは飛び上がる。そして私の目の前に着地した。


「……っ」


 またもや髑髏の仮面が迫り、私は怯む。その間に、私の手を握ってきた。


「調教してもいいデスか?」

「…………は?」


 今何て言ったのか。聞き間違いはよくあることなので一応確認しときたい。


「い、今何て」

「だからアナタを……ギャアァ……!」


 急に叫び声に変わったのはギルがスカルヘッドの頭を後ろから掴んでいたからだ。ギリギリと締め付けている音は、聞いてるだけで自分が痛くなりそうである。


「あぁ? 今何て言ったんだお前」

「ギャアァァ」


 そのうちアイアンクローで弱ったところへ、ギルは足蹴にして踏みつけている。あまりに色々と凄くて、声も掛けづらい。


「ギ、ギブッ……ギブゥ……」

「こいつに手、出したら殺すからな」

「り、りょ~かいデスゥ……」


 と、それを最後にパタリと倒れた。ギルを相手にしていると、あの凶悪そうな髑髏を被っていても、少し可哀想に思えるから不思議だ。

「ち、ちょっといくら何でもやりすぎじゃ?」

「あぁ? いいんだよこれくらいで。むしろ足りねぇくらいだ」

「ま、ま。冗談はこれくらいで。それより中に入りますカ」


 と、スカルヘッドはすっかり復活を果たしていた。早い。何だか狭山みたいだ。いやそれ以上だった。ギルから言わせれば、多少ならすぐ自分で治せるから問題はないらしい。凄いけど、懲りないってことだろうから厄介だ。


「ねぇギル。結局あの人は敵なの?」


 ついでだから尋ねた。前々から疑問に感じていたことだ。


「敵……じゃねぇな。けどあいつには近付くな。殺されはしないだろうが、下手したら精神くらいは壊されるぞ」


 と、ギルは小声で教えてくれる。怖くなった。それは今までと変わらない恐怖だ。私にとっては敵じゃないか。


「ンン~? 何やってるんデス? 早く行きまショウ」

「それよりお前。さっきどっから出てきた?」

「カカカカ……。さすがギルさん。此処の裏口からデスヨ。そろそろ来るだろうと思って待ってましタ」


 スカルヘッドは元々中に潜んでいて、私達が来たことを察知して今出てきたというわけだ。


「嘘吐け。お前の予測は外れるだろうが。いつから待ってた?」

「うぅ……。さすがギルさん。かれこれ二日以上待ってました。仕方ないからその娘に現状を知ってもらおうと」


 散々私と会ったのはそういうカラクリだったわけか。でもギルに伝えたほうが早かった気もするけど。


「ギルさんは何処に行ったのか分からなくて、まさか探りに来ていたとは。東大生足もと暗しとはよく言ったものデス」


 何か違う。それは東大生に失礼だ。いやそもそも東大生なんて知ってるのがちょっと意外だけど。


「ま、とりあえず侵入は楽になったわけだ」

「こちらデスヨ」


 スカルヘッドに私とギルはついていく。案内されたのは非常口だ。緑の灯りが目印となる。


「宿直の方もいるんでお静かに」


 人指し指を立てたジェスチャーで伝える。確かにそうだ。全く誰もいないわけがない。それに入院してる人もいることだし。


「先に気絶させとけばいいだろ」


 ギルがそんなことを言い出したので、私は全力で止めに入った。

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