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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
3章 病院に潜む影
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2:探索Ⅹ

 ギルは適当にうろついついた。その時物音が聞こえたので行ってみると、誰もいない廊下で私が寝かされていたそうだ。そして走り去る音が聞こえた。


「本題はここからだ」

「待ってよ。リアちゃんはどうしたの?」

「いたのか? あいつには会ってねぇけど」


 酷く呆れたようにギルは口を開く。まさかほっといたのかなんて勘繰ってしまったわけだが、そんなことはなかったようだ。本当に知らない様子だ。ということは、まだリアちゃんはまだ病院にいることになる。


「一緒に病院に行ったんだけど……」


 私はリアちゃんと別れたときのことを話した。


「馬鹿かあいつは」


 と、短い感想をギルは漏らす。ギルが頭を抱えるという、(実際に抱えているわけじゃないが)珍しい光景を目にしてしまった私はある意味役得かもしれない。


「正直あいつも囮にするつもりだったんだが」


 あ、上を向いて本当にまいってる。というか、“も”って言った?

 今迄通り私も囮にするつもりだったのか。

 いやそれより今は、リアちゃんがどうしてるか気になる。


「犠牲者が増えたんですよ」


 マスクをつけた看護士の、篭った声が思い出される。まさかリアちゃんに限ってそんなことは……ないと思うけど。


「あいつは殺しても死ぬような奴じゃねえよ」


 ギルがぽつりと言う。反応して私はギルを視界に留めた。


「……何だよ」


 居心地が悪くなったのか。ギルはあぐらを掻いて前屈みになって私を睨む。とはいえ、別に敵意はない。多分ギルなりに気遣って言ってくれたんだろうと思う。でもそれは、さっきのまいってる姿なんかよりもずっとずっと珍しい。


「……何笑ってんだ」

「笑ってないって」


 ギルが少し赤くなって抗議する。実際私の顔は緩みまくってるんだろう。ちょっと鏡で確認したくなる。


「とにかく今回のはな。早く片付けなきゃなんねぇんだよ」


 そう言ってギルは本題を話し始める。


「どうやら病院内にいる人間を殺すつもりらしい。まぁ正直それ自体はどうでもいいが。そうなると機関の奴も集まってくるだろうし、色々とそれは都合が悪いからな」

「えぇと、それはもう知ってるけど」


 あ。ギルの顔が面白いことになってる。目を見開いて驚いたあとは、少し紅潮していく。よほどの情報だと思っていたみたいだ。


「何で知ってたら言わねぇんだ」

「ら、らっへ……。ふいひゃっひひったんひゃひ(ついさっき知ったんだし)……」

「何言ってるか分かんねぇんだよ。ちゃんと分かるように言いやがれ」


 理不尽だ。この上なく理不尽だ。自分が私の頬を引っ張るからうまく喋れないのに。


「その話した看護士から聞いたの。具体的にはどうするのかよく分からないけど」

「もうすぐ完成って言ったんだな」

「うん」

「つまり時間がないっことだ。あんまりもたもたしてる場合じゃねぇな」


 ギルはそう言って私を担ぐ。


「え?」


 困惑する私をよそに、ギルは意気揚々と窓を開けた。


「行くぞ」

「……っ」


 担がれたときに予想はしていたが、心の準備はまだ出来ていない。そのロケットのようなスピードに私は目を瞑った。



「おい着いたぞ」

「あ、うん」


 ずっと目を瞑っていたら、もう病院に着いていた。相変わらず早い。今いる場所は、ちょうど病院の正面入り口の前だ。夜の人気のない病院は、とても薄気味悪い。出来れば入りたくなかった。


「何やってんだ?」


 そんな私の心情は知る由もないギルは、さっさと入り口に近付いていく。そういえば鍵が開いてないんじゃないのかと思った。ちょうどギルも困って……るわけがなかった。


「ちょっと待った」

「何だよ?」

「今何しようとしたの?」


 本当は訊かなくても分かる。ギルは開かないことをいいことに、何と破壊しようとしたのだ。


「開けようとしただけだろ」


 しれっと答える。その方法に問題があることを分かってない。


「駄目だからそんなの」

「じゃあどうすりゃいいんだ?」

「う……」


 いきなり連れて来られたわけだから、そんなの分かるわけがない。なんて言ったら多分怒るんだろうなと思う。


「コンバンワ。そしてお久しぶりデス。ギルさん」

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