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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
3章 病院に潜む影
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2:探索Ⅷ

「どういう風に会ったの?」


 リアちゃんが詳しく尋ねる。どういう状況だったのか、よく教えてほしいとのことだ。私は出来る限りを伝える。ちょうど反対側から私が来て、対向してマスクの看護士が来た。ちょうど今の私達と同じ方向だ。看護士は少し走っていて、すぐに右のほうにある部屋に滑り込んだ。そのすれ違ったときに、もう来ないでと聞いた気がしたこともリアちゃんに伝えた。


「……やっぱり一番怪しいけど」


 何か考えているらしく、顎に右手を沿える。自分を抱くように抱える左腕に右の肘を乗せていた。


「とりあえずあの部屋に行ってみる」


 と、リアちゃんは考えるよりも行動に出ることを選択した。あの部屋とは、マスクの看護士が滑り込んだ部屋だ。いいのかなと思いつつ、ぐんぐん進むリアちゃんに私はついて行った。


「あ」

「あれ? 紗希ちゃん?」

「源川さん?」


 部屋にいたのは源川さんだ。仕事中らしくいつも通りのナース服を着て、確かにマスクをしている。


「ここは関係者以外立ち入り禁止だから入って来ちゃ駄目よ。早く出た出た」

「あ……とっ……」


 有無を言わさず、肩を押されて私は部屋の外に促される。その際源川さんも一緒に外へ出た。


「あの……風邪ひいたんですか?」

「あ~、これ? うんちょっとね~」


 昨日は見受けられなかったマスクについて尋ねたことを、源川さんはいち早く察知した。


「こんな仕事してるのにね。ミイラ取りがミイラになったって感じかな? それより、今日はどうしたの? それにその娘は?」


 お互いに昨日との違いに気付いた。私がリアちゃんを連れているので気になったんだろう。


「えと……知り合いの娘です」

「へ~、可愛い娘ね。こんにちは」


 源川さんはリアちゃんの高さに合わせるよう、腰を屈めて挨拶をする。


「こ、こんにちは……」


 リアちゃんもおそるおそるといった感じで挨拶を返す。緊張したのか私の後ろに隠れてしまいそうだ。さっきまでの勢いはどうしたのやら。


「勝手に入って来たら駄目でしょ~?」


 と、源川さんがリアちゃんの小さな頭を撫でる。部屋に勝手に入って来たのはリアちゃんのほうだと思ったらしい。


「紗希ちゃんもちゃんと見てないと駄目じゃない」

「あ、すいません……」


 特に怒ってるわけじゃない。一応言っておく感じだ。もしかして子供が好きなのかもしれない。


「マスクした看護士さんを探してるんだけど、他に誰か知らない?」

「え?」


 リアちゃんが直接訊いた。


「この病院だと、私くらいじゃないかなぁ」

「そうなんだ。ありがとう。行こ、紗希」

「あ……」


 私の手を引っ張っていくリアちゃんに、私は慌ててついていく羽目になる。


「あ、源川さん。ありがとうございました」

「え~? 別にたいしたことなんかしてないわよ」


 わけが分からない源川さんは戸惑っていた。それは私も同様で、ただただリアちゃんに引かれてその場を後にした。


「どうしたの? いったい」

「今日は一旦帰る。少し嫌な予感がする」


 よほどの事なのか。リアちゃんは少々早足で進んでいる。どういう事なのか詳しく知りたい私だが、それよりも先に、リアちゃんのほうから疑問が投げ掛けられた。


「さっきの人が源川って人だよね?」

「そうだけど」

「あの人は普通の人間だった。それは間違いない。でも、別の何かがいた。ずっと見られてた」

「それって……」

「処刑人でも、医者でも違う。何か得体の知れない何か。魔界の住人だとは思う」


 私が出すつもりだったギルやスカルヘッドの可能性もリアちゃんは否定する。見ると、リアちゃんの頬を汗が伝っていた。それほど危険を感じ取ったのか。私は遅れて怖くなってくる。


「大丈夫。追っては来てないから」


 私の心象を読み取ったのか、そんな安心をさせるような言葉をリアちゃんは紡いだ。それは有り難い情報だ。とはいえ、これで病院が非常に危険地帯であることが分かった。マスクの看護士も見付からないままで、これからどうするべきなのか。

 いつの間にかもう、私たちは病院の正面出口までに来ていた。広い受付と待合が並んでいる。


「……紗希」


 リアちゃんが小さく呼ぶ。繋いでいた手の力が少し強くなった。


「先に帰ってて」

「え?」


 一瞬、何を言われたのか分からなかった。


「大丈夫。私が突き止めるから」

「リアちゃ……」


 それだけ言って、急いでまた戻ってしまった。帰ると言ったのは安全だと思われる正面までだったらしい。私はすぐに追い掛けることが出来なかった。あまりにもリアちゃんが速かったのもあるが、違和感を感じたのが大きい。突き止めると言って顔を上げたリアちゃんは、何だか追い詰められたように感じられた。

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