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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
3章 病院に潜む影
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2:探索Ⅲ

「バッ……!?」


 病院名を教えると、普段では有り得ないような大声が教室に響く。休み時間、教室にいるクラスの皆も何事かと注目する。


「……悪い。けど神崎、ニュース見てないのか」

「……み、見たけど?」

「病院の変死事件は?」

「知ってる」


 すると庵藤は頭を抱え始めた。


「はぁ、俺さ。神崎のこと意外と買い被ってた。馬鹿だろ? いや馬鹿に違いない」

「ちょっ……。何それ」


 突然失礼極まりないことを口にする庵藤に、私は憤慨を覚えた。

「何で事件のこと知ってて、わざわざ学校に遅れてまで行ったんだ?」

「お見舞い……かな」

「……ああ、そうだな。神崎はそういう奴だったな」


 庵藤は呆れながらも納得したように、自分の席へ向かう。悪いように納得したんじゃないかと心配だ。


「字数は減らしてもらえるように書いといてやる」


 去り際の言葉が反省文を意味していると気付くのに少しかかってしまった。何事だったのかと興味を示す他の男子に、庵藤は何でもないと取り繕っているのが見える。


「大丈夫?」


 そして私にも、クラスの女子二人から心配される声がかかる。


「何でもないから大丈夫」

「ほんとに? いじめられてたら言いなよ」


 私はそんな位置付けだったのか。初めて気付かされた。ねじ曲がった事実を修正するのに、少々時間を要しそうだった。


 そのあと、いつもより比べてもあまりにも遅い私の登校に、どうした?と皆から疑問をふっかけられながら、自分の席にまでたどり着く。私が鞄を机に下ろすと同時に、待ってましたと言わんばかりに、俊敏に加奈が声をかけていた。


「重役出勤ご苦労様」


 そう言って私の席の前の席が空いていたので、加奈が座った。突き刺さるように非難する視線が痛い。私から行くより先に来たあたり、加奈はご立腹の様子だ。


「何で遅れたのかしら。今日の紗希ちゃんは……」

「あはは……ちょっとね」


 庵藤に責められたこともあり、何とか誤魔化そうと試みる。しかし、加奈には敵わなかったと言える。


「さ~き~」

「うぅ……」


 結局加奈にも知られることになる。加奈は静かな、だけど中々に恐ろしい怒りをあらわにしていた。


「あんたはいつもいつも勝手なことばかりして、危ないことして」

「はぅ……」


 ペチペチとおでこを叩かれる。痛くはないが……いややっぱりちょっと痛い。赤くなってるんじゃないかと少し心配だ。


「それなら私も行くから。……もしかして止められるとでも思った?」

「そんなことはないんだけどね。他にも用があったから」


 実際会って無事をちゃんと確認したくて、いてもたってもいられなくなった。けどそれと同じくらい、大事な用があった。

 魔界の住人との関連だ。それは病院で見てしまったように、天井から壁から床までに張り巡らされた赤い手として、普通では有り得ない痕跡があった。前の日に同じ場所で私は、何かしている医者を見ていた。はっきり仕業とまではいかないけど、関係があるとしか思えない。 でも、これ以上私に何が出来るだろう。早くギルとリアちゃんに相談しないといけない。


「紗希!?」

「……っと、びっくりした。何?」

「何って、急にぼ~っとしてるから。大事な用って? 診察してもらいにとか?」

「まぁそんな感じかな」


 病院に行ったとなると、他の用事の可能性に、診察ぐらいしか考えられないからか。加奈にそれ以上の追求はなかった。まさか魔界の住人との関連が気になったなんて、思い付くはずもないと思う。


「じゃあハイ、あとこれ」

「あ、ありがとう加奈」


 渡されたのは三冊のノート。今が三限終わりの休み時間だから、ちょうど三限分の授業ノートというわけだ。加奈は本当に綺麗にノートをまとめるので凄く分かりやすい。ただ淡々と書き写すだけじゃなく、細かな要点や必要だと思われるところも書き込まれている。おまけに字が綺麗だ。以前に自分のよりも、加奈のノートの方が分かるから最初からコピーさせてもらおうとした時もあったっけ。あっさりと却下されたけど。


「席に着け~」


 と、チャイムとほぼ同時に次の四限の先生がやって来る。それを合図に皆席へと向かう。加奈も戻ろうと立ち上がった。


「じゃあ借りるね」

「うん。あ、昼休みには返してね」


 えっ…!?

 この授業中に三教科分も写せってこと?

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