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黒を司る処刑人   作者: 神谷佑都
2章 闇からの招待状
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6.マリーの真の能力Ⅴ

「マリー! 優子は何処?」


 私は駆け寄った。それもまた危険な行為かもしれない。でも、待つことは出来なかった。マリーの消滅が始まったから。


「おい。近付くな紗希」

「紗希」


 ギルとリアちゃんの止める言葉が聞こえた。私はある程度の距離で止まることで応えた。


「教えて。優子は何処?」

「……!?」


 うつ伏せで倒れていたマリーは、私の声に反応して顔を上げた。その表情は笑みを浮かべていた。


「は、あははは……。そういえば……、メリーが連れてきたって言ってたわね……。だから、あんなに部屋中を……」

「探してた。何処かにいるかもしれなかったから! でも見付からなかった! 何処にいるの!」

「そんなに大事……? 他人なのに……?」

「友達だもん!」


 その言葉を強く口にした。私の大切な友達だ。私のせいで巻き込んでしまった。だったら、だからこそ、助けなきゃいけない筈だ。


「そう。……なら……教えてあげない」

「……!?」

「私だけ、こんなに苦しいなんて嫌……。その娘も、そして貴方も、苦しめばいい! 苦しんで苦しんで絶望すればいい。あは、あははははっあはははははは……!」


 何で……。何でわざわざ……巻き込もうとするの?

 優子は関係ない。何にも悪いことなんかしてないのに。

 足の力が抜ける。私は膝を落として手をついた。


「……して、……せ……、返せ……優子を……返せぇ!」

「……あははははっあははははははは……!」


 その時、何かが起こる。何かがそばを通った気がした。そしてマリーが完全に動かなくなった。消滅は速まり、完全に砂と化した。


「永久にさ迷え」


 クランツが撃ったのだと分かった私は、膝を落としつつも食いかかるように問うた。


「何で……、何で撃ったの……!」

「……殺すためだ」


 手をついたまま、背中を向けたままの私はクランツの表情は伺えない。でも、その怖くなるほど冷静な声質が、ますます気に触った。


「まだ助けなきゃいけない人がいたのに!」

「ここにいる人間なら、既に救出した」


 ハッとして顔を上げる。クランツの言葉に耳を傾けた。


「機関の連中が確認済みだ。その優子という人間も、無事だと連絡が入っている」


 涙が止まらない。無事だった。助かった。良かった。本当に良かった。


「……ぅ、うぁ……あ、あり……が……とう……」


 感謝の言葉も、言葉にならないほど不安定な音となる。私は何回も繰り返した。


「それでも弱ってる者もいる。今は病院に運ばれているだろうが。そのうち、何処の病院かも分かるはずだ」

「うん、うん……」


 リアちゃんは私のそばにやって来て、クランツを警戒している。いつ向かってもおかしくない。その辺はけっこうギルに似ている気がする。そのギルのほうは、力尽きたようで意識を失っていた。

 つまりかなり無防備な状態だ。クランツが狙うのかと少し危惧したが、それは杞憂に終わる。


「こいつには借りができた。今見逃すことで返してやる。伝えてくれ。見逃すのは今回だけだ。いずれ必ず殺す……と」


 ということだった。借りというのは、ギルが乱入したことでマリーを倒しやすくなったことだと思う。


 不思議なことに、マリーの消滅と違い、メリーの消滅が今ようやく終わった。人形として作られた存在だったからか、それとも何か他の能力のせいかは分からない。

完全に砂と化した瞬間、周りはただの空き地となった。屋敷はなくなっていたのだ。空はまだまだ真っ暗だった。


 クランツはすぐに飛び立つ。また魔界の住人を討つために駆けるのだろう。


「リアちゃんもお疲れ様。腕ホントに大丈夫?」

「……べ、別にこれくらいどうってこと……」

「ありがと」

「……う、うん」


 赤くなって照れてるリアちゃんはやっぱり可愛かった。そして気付く。

「あ、そういえばどうやって帰ろう」

「歩くしかない」


 来るときはギルに連れてきてもらったけど、今は意識がない。早く治療もしてあげたいのに道具もない。リアちゃんは腕を痛めてるし、二人分運ぶなんて出来ない。どうしようかと悩む。


「……グギュル」

「……!?」


 聞いたことがある。ボコッと土が盛り上がり何かが出てくる。六つほど赤い目を持ち、鎌が二本腕のように振り回される。地下にいたやつだ。


「紗希。離れてて」

「……う、うん」


 油断ならない。この奇妙な生物はまだ生き残っていたらしい。復讐するつもりなのかは分からないけど、危険な状況に変わらなかった。


「……グ……ギュ……」

「……!?」


 襲いかかってくる生物は急に様子がおかしくなる。そして急にバラバラに分断された。


「リアちゃん……?」

「私じゃない」


 てっきりリアちゃんかと思ったが違ったらしい。全くモーションがないように思えたが、間違いではなかったみたいだ。

 なら誰が?

 ギルでもない。まだ意識はないままだったのだから。

 新手?

 そんな不吉な予感が浮かび上がった。


「いやぁ、やっと終わったみたいデスね。あんな怖そうなお化け屋敷によく入って行ったもんデス」


 バラバラと肉片が降り注ぐなか、何者かが現れる。


「イヤイヤ警戒しないでくだサイ。ワタシは味方デスよ。いやホントに」

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