盲目の男
「プレイヤー?」
「おいおい、そんなことも知らないのかよ。ゲームで遊んでんだろってことだよ」
男たちは呆れた様子でそう言ったが、そもそも“ゲーム“と言うのもよくわからなかった。
「なぁ、何だったら俺達のパーティーに入れてやろうか?」
「おい、やめておけよ。こいつポイントも振ってないんじゃないか。足手まといをわざわざ入れてどうするんだよ」
「馬鹿、斥候職のスキルなんざ覚えたくないからさ、こいつにやらせちまおうってんだよ」
男たちがヒソヒソと相談しているが、まる聞こえだった。
意味はわからなかったが。
「よくわからない。僕にはやることがある。ここを離れるわけにはいかない」
最近では屋根の雨漏りの修理などは自分の役目だった。
「んだよっ使えねー」
「ちっ」
「ゲームの中でまでんなことやって何が楽しいんだか。おい、行こうぜ」
「ああ、他の人たちと会ったのね」
エイセスセニスで何かあれば報告するのが自分に与えられた義務でもあり、純粋に疑問でもあった。
「あなたたちは向こうでは“来訪者“、“渡来人“、“越境者“と言った呼称で呼ばれているのだけど、“渡来人“と言うことにするわね。渡来人には異世界で別の人生を体験できると説明しているわ。だけれどこのことをゲーム、要するに作り物だと考えている人たちがいる。彼らにとっては虚構の世界だから好き放題していいと思っている人たちも多いわ。」
僕がエイセスセニスに戻ると、孤児院の子供たちが慌てて駆け寄って来る。
「どこ行ってたんだよ!院長が大変なんだ」
慌てて彼らの後についていくと、ベッドから起き上がろうとしているアルフォミナの姿が見えた。
「駄目だよ寝てなきゃ」
そう言って女の子が引き止めようとしているが、
「私なら大丈夫よ。そろそろご飯の準備をしなきゃ」
いかにも体調が良くないということが一目でわかる有様だった。
「食事なら僕が作ろう」
と申し出ても必死に自分が作るという。
その理由は食料庫を見てハッキリする。最早からっぽだったのだ。小さな芋が隅の方に転がっているだけだ。
どうなっているのかと問いただすと、孤児院の運営費は領主様から貰っていた。ところが最近賊が頻出するようになり、警備の方に費用が割かれ、殆ど貰えなくなっているのだという。
口には出さなかったが、アルフォミナは自分の分を子供たちに回しながら、小さな仕事を請け負ってお金を稼いでいたのであろう。
「僕がなんとかしてみせる」
そう言って外へと飛び出した。
“外“での生活をろくに知らなかった僕は失敗を重ねながらもお金を稼いだ。
そして同時に最近現れたという賊たちのことを調べた。衛兵をも倒して犯行に及ぶ男たち。
ーーー“渡来人“の仕業だった。




