六花ちゃん
「あのっ、大丈夫ですか?」
聞き慣れ始めてきた心地よい声がする
が、姿は見えない。
「こっちですよー」
両手を上げてぴょんぴょん跳ねる姿が目に入る。僕はショックだった。まさか自分を助けてくれたのがこんな少女だったとは思っていなかったのだ。
声の方へと視線を向ける、久しぶりの感覚に戸惑う。
「あはは、だいたい考えてることは想像つきますけど、これは仮の姿みたいなものです。それより、どうぞ」
彼女の言っていることはいまいち要領を得なかった。そして渡してきたのはシンプルなハンカチだった。そう僕は泣いていたのだ。
「綺麗だ。昔みた景色の方が思いでが強い分鮮やかかと思ってたが、そうでもないみたいだ。そうだ、鏡はないかな?」
そういうと小さな?六花さんはどこからともなく鏡を取り出して渡してくる。
「へぇ、こんな風になったのか…って今どこから出した!?」
さほど不細工と言うこともない顔を見て、疑問に立ち返ったのだ。
「雲さんは、ゲームとかしたことありませんか?」
「ゲーム?」
“外“では一般的だったのかも知れないが、僕には無縁のものだったのだ。
聞くべきことではなかったかーとばかりに表情を歪めているから多分そうだ。
「まぁ考えようによっちゃ都合がいいかな。落ち着いて聞いてくださいね?ここは、ついさっきまで私たちがいたのとは別の世界です。いくらなんでも私には雲さんを連れてこんなところに来られないのですって、目が見えてなかったんじゃその説明じゃダメか」
六花さん…というか六花ちゃん?が一人でぶつぶつ言い出す。
「ああ、もういいです。要するにここは別の世界で、多少世界の理も違いますけど、生活を送ることが出来ます。もう一度子供時代に戻ってやり直すことも出来ますし、一度だけ自分自身を作り直すことも出来ますよ」
「それで六花ty…さんはそんな格好になってると?」
「う…。私のことはいいじゃないですか!それより今ちゃん呼びしようとしませんでしたか?」
どうも“六花ちゃん“は感情的な気がする。
「よくわからないけどこのままでいいや。なんだかんだで付き合ってきた体だしな」
そういうと六花さんは笑顔で
「エイセスセニスへようこそ!」
僕に手を差し出してそう言った。




