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煩悶

「皆、よく集まってくれた」


 男が言うようにそこには2、30人の男達が集まっていた。


「信頼性のある筋から、今日“闇雲“が出没するという情報が入った。今日非番だった者には悪いが、我等5小隊をもって今晩“闇雲“を捕縛する」


 そこまで言ったところで男達の中から手が上がる。


「隊長、疑うわけじゃないんですがね、信頼の置ける筋からの情報って割に隊長の表情が暗いっていうかさ」


 実のところここに集う男達の誰もが同じように思っていた。


 基本“闇雲“を追いかけるのは犯行が行われてから、だ。

当然事前に準備などできるわけもなく、当直の見回りと前後の交代要員が追いかけるのが常であり、非番も含めて5隊を集めるということは今晩“闇雲“が現れるという情報を隊長が信じていることがわかるが、その表情は苦々しいとあれば気になるのも仕方あるまい。

 コーザの勘の良さと遠慮なく聞ける無遠慮さに半分呆れ、半分感心しながら隊長は答えた。


「情報屋についてはこれまでの関係からも偽りなどを言わないことは分かっている。それなりのものは支払ったがな。しかし、だ。これまで“闇雲“の犯行について事前に情報が漏れたということがないのも事実。残念ながら奴の手口に関してもある意味信用せざるを得ない。何より、犯行先がロンバルド商店らしい」


 その言葉が告げられると隊員めいめいから声が漏れる。


「諸君らも知っての通り、ロンバルド商店といえば誠実な商いをする店ということで評判が良い店だ。“闇雲“がターゲットに選ぶには違和感がある」


 ここで隊員達が誰一人反対しないのが妙なところである。

犯罪者には違いないはずの“闇雲“が善人から盗むはずがない、と。


 だが、彼らはこれまで“闇雲“を追ってきたのだ。その経験がそれが事実であると疑わせないのだ。


「隊長、実際に犯罪が起きたら起きただし、起きなかったら警邏強化中ってことでいいんじゃないですか?」


 気楽に言いやがってとは思うものの、確かにそうだな、と気が楽になったのも間違いなかった。


「そう簡単なことではないが、やらないと言うわけにもいかんからな全員出動準備はいいか!?」


ドン、ドンドン。

夜空に光が煌めき、爆音が響き渡る。


“緊急事態、各員集合せよ“


 衛兵達に伝令を伝えるための秘密の合図が鳴らされたのはロンバルド商店の方向だった。 

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