盗賊集団「砂ねずみ」
「へへへ、どいつもこいつも浮かれてやがる。気を緩めっぱなしで楽にお宝を頂戴できるぜ。」
王都のとある屋敷の地下でで、身なりの汚い荒くれ者達が乾杯、などもなくめいめいが好き勝手に酒を呑んでいた。
「おい、ヘレン。こっちに来て酌でもしな!」
酔っ払った一人の男が机上に足を乗せ、酒の入った瓶を掲げて言い捨てる。
ヘレン、と呼ばれた女性は返事もせず、立ち上がると酒臭い部屋を出て行った。
「けっ。頭領のお気に入りだかなんだか知らねぇが、愛想のない女だぜ」
「顔や身体はそそるものがあるのにな。娼館で働きゃあ人気独占もできちまえそうだが。それが盗賊だってんだから驚きの世の中だぜ」
男が言うように彼らは王都で恐れられている盗賊集団「街ねずみ」であり、今夜の収穫を祝って宴を開いていた。
男所帯の建物は薄汚れており汚い。そんな中女の盗賊…ヘレンが一人いるのだ。無法者の男達が盛るのも当然だった。
「あの女生意気だ、気にくわねぇ。一度襲って躾けてやれば従順になるんじゃねぇか」
と下卑た顔で数人の男達が連れ立って部屋を出て行く。
それを見て、行動を起こさなかった男達が言った。
「また団員が減ったな」
「ああ、これまで同じことを考えたやつらがいなかったとでも思うのかねぇ」
「ああ、ヘレンは腕が立つ盗賊だが、あいつ一人いるだけで団の規律が緩みまくりでガバガバだ。棟梁も何を考えて見逃してるのかねぇ」
「何ってナニだろ?親分の情婦だって噂だぜ」
「まぁ俺は金さえ稼げれば娼館で楽しむからいいけどよ」
しばらくして部屋を出た先から複数の悲鳴が聞こえてきたのであった。
他とは違い、身なりのよい男が告げる。
「少し人数が少ないようだが、兼ねてより計画していた作戦を実行にうつそうと思う。」
おーという雄たけびが部屋にこだました。
「王都でも有名なロンバルド商店の金目のものを根こそぎ頂く。各自自分の役割は分かっているだろうな」
全員が静かに首肯する。
「行動開始だ!」
その一言で30人ほどの男達が…その内の幾らかが音もなく姿を消した。
未熟なものもいたらしい。
「団員が増えたとは言え、技量の足りぬ者も多いな。まぁ、やつらは所詮囮。大した問題もあるまい。」
黒い笑みを浮かべた頭領は団員とは逆の方向へと歩き出したのだった。
ヘレンともう一人ガデスは盗賊団の中でも腕が立つ。
今回の作戦では門番を奇襲して成り代わる役目を負っていた。
後続の団員を素通りさせるための重要な役である。
門番の背後に立った二人はお互いに顔を見合い頷くと同時に獲物を振り下ろした。
今回の作戦を提案した内の一人はヘレンであり、獲物は布製の袋状のものに砂を入れたものである。外傷をつけないようにして門番の衣服を奪うためだ。
なるべく周囲に悟られないように事を進めたいのだ。
ゴッという音と鈍い手ごたえを残して二人の男が地に沈むのをヘレン達は支える。
優しさからではもちろん無く、なるべく不自然な音を立てないためだ。
脇の下に手を入れて敷地内の目立たない所に隠しその装備をはぎ、身につける。
ゴツい体つきのガデスがむりやり体を押し込んだ頃にはヘレンはすでに着替え終わっていた。どうやらサイズはなんとかなったらしい。裾は折っているが。
パッツンパッツンのガデスとダブダブのヘレンの組み合わせは違和感だらけだった。




