冬休み 3
教えられた場所はなんでもない、普段は使われていない空き室でした。
始めだけは、ということで一緒に院長先生と来たところで肩透かしを食らった気持ちになったのですが、院長先生は微笑んだまま棚に近づくと鍵つきの箱に先ほど渡された鍵を差し込むように言いました。
疑問符だらけでしたが、言われたとおりにすると、箱は微塵も動く気配はなく…
棚が動きました。
いや、どういうことだってばよ!?
錯乱する私を見て嬉しそうにしながら院長先生は棚の奥、螺旋階段を下りていきます。
暗いのでよくわかりませんが、定期的に掃除はされているようでした。
灯りを持つ院長先生に遅れないように慌てて後を追い、しばらく歩くとまた扉があって、それを開けて中に入ると、とても巨大な…
「院長先生、これ、孤児院の敷地内に収まっていないんじゃないですか?」
「大丈夫ですよ。高度上空と地下は地上とは別だから。さっさと作ったもの勝ちです。少なくとも王国に取り締まる法律はありませんでしたよ。」
いやいや、そういう問題じゃないでしょう?
いちゃもんつけられたらどうするのさ。
ふぅ、とため息をついて困ったような顔で院長先生は続けました。
「それに、孤児院の敷地ではありませんがこの図書館の上にあたる部分はあの方の所持する土地ですよ」
は?
「もっと孤児院の敷地として使っても構わないと言われたんですがあまり贅沢してたら変な人達に目をつけられるでしょう?」
いやいや、なんでそんなにお金持ってるんだって。
泥棒って儲かるの??
「あなたに言うまでもないでしょうが、館内での飲食は禁止です。ここには王族ですら所持していない貴重な資料も多いので汚したりしないよう丁重に扱ってください」
…それって城から盗んだからここだけにあるってことじゃないよね。
「後は、あんまり夢中になって院の仕事を忘れないように」
「はい!」
とりあえず、今日は館内を見て回るだけにした。
新しい書も古い書もある。分類別にそれぞれ部屋があるようで、中央の部屋を読書スペースとして12の部屋がある。
その一室をとりあえず見てみると、それは耳目絵だ。
最新のものまでこれまで出た者が日付ごとに集められていた。
…私が買わなくても良かったじゃないか。
以前安くないお金を払って高騰した耳目絵を買ったことを私は後悔していた。