"黒烏" 2
「な、なんでお前が俺の家にいるんだよっ!」
驚いて尻餅をついてしまった俺はとりつくろう余裕もなくそう叫んだ。
「いや、だってさ、了承したとも言ってないのに話も聞かずに行っちゃってさ。本気じゃないだろうと思ってたんだけど気になって見に来たんだけど、ちょっと遅かったみたいだね。」
目の前の男が目を細めると視線に射すくめられる。
「俺は不要な盗みはしないのを信条にしている。」
"闇雲"の発言に愕然とすると同時に怒りが湧いてくる。
「俺も、あんたも結局はただの盗人だろうが!偽善的なことをいうなよ!不要な盗みはしない?はっ!あんたが取ってきたものがどうしても必要なものだったと!?」
「偽善…ね。そんなつもりはまったくないさ。どんな綺麗事やお題目を並べようが盗みは盗み、犯罪、悪事にゃあ変わらねぇさ」
低い声で"闇雲"が答える。
「だからこそ、好き勝手すんのはかっこわりぃだろうが。つーわけだ。お前との勝負のために盗みなんざするつもりはねぇよ」
そう言って"闇雲"は俺の横をすり抜けて行った。
「くそっ。格好つけやがって!俺との勝負を避けやがったくせに」
悪態をつきつつソファに八つ当たりをする。
その時違和感を感じたのだった。
内ポケットに手をやればあるはずの【幸運の薄幸女神像】はなく、
かわりに
あなたの罪、確かに頂きました。
怪盗 Cloud / Dark
と書かれたカードが入っていた。
慌てて入り口の戸を開けて見回すも、後姿が見えるはずもない。
どこか化かされた気分で2日ほど引きこもった後、食料の買出しに町に出て、耳目絵が売られていることに気づく。
「おっちゃん、1部くれ」
「あいよ。」
果たして幸か不幸か【幸運の薄幸女神像】戻る!
領主の家から姿を消した【幸運の薄幸女神像】。館を守る警備員が盗人の影を見たという。"闇雲"の仕業か、と噂された。町民に意見を聞いてみるが、誰もが「それはない」と答えた。「あの領主の悪い噂は聞かない。"闇雲"がそんな領主さんを狙う理由がない」という意見が多数聞かされた。そんなことをしているうちに肝心の【幸運の薄幸女神像】が元の場所に戻っていたっていうんだから、驚きである。
盗まれた不幸か、帰ってきた幸運かこの像に対する評価は真っ二つに分かれている。
だが、この像が帰ってきたことこそ"闇雲"の仕業だと考えている町民は多く、"闇雲"に盗まれた像を一目見ようと領主の館に訪れる人が後を立たない。
俺が盗みに入って、警備は厳しくなっていただろう。
そこに返しにいったってのか?
どうやら俺の完敗らしい。
最もそれほど気分は悪くなかった…
悔しいっ!




