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忍び寄る泥棒

 とある伯爵家に一室を貰い、ひたすら薬作りをしている。

素材を集めるのも伯爵家が率先してやってくれて、最高の環境で効率よく薬作りができている。


 これで、今回の危機は乗り越えられるっ!

目元にクマが出来ているだろうし、病気が流行り始める前よりやつれているだろう、だが、かつてない充実感が身体に満ちている。

たまたま対抗薬を作れてしまったのだが、

世界の危機に際して自分が役に立てることが嬉しかった。


ギギィ、と音を立てて扉が開く。

「あんたを盗み(さらい)にきた」


 そこにいたのは全身荒ぶれた、やつれた青年だった。

奇抜、というかあまり見ない服だが、どこか締まって見える服だが今は薄汚れている。


「俺の動きに国の未来がかかってんだ!俺の手を止めさせるな」

「届いてない」

「あ!何?」

「アンタの作る薬は出回ってない。正確には上位貴族の間で留まっていて下位貴族、ましてや町民レベルには回っていない」

「ば、馬鹿な…嘘だといってくれ」

「残念ながら事実だ。辺境の村じゃ周知されてないところがまだまだあるんだ、だから、俺が来たんだ」

 よく考えたら、目の前の男はどうして自分がここにいることを知ったのだろう?いや、そもそもここまでどうやって入り込んだのか。

現実に意識が復帰した時、目の前に手が差し出されていた。

「一緒に来てくれませんか?見てもらえれば現実を知ってもらえるかと」

「嘘だったらただじゃおかねぇからな」


     あなたの罪、確かに頂きました。


 部屋から出る時に青年が一枚の書置きを残していったのが気になるが

彼に導かれて伯爵邸を歩く。

途中メイドらとすれ違う際も

「静かに」

 と口を塞がれただけで、それ以降平然と歩いて門を潜った。

いっそ拍子抜けしたほどだ。

見回りの兵さえ、

「異常なし!これより東の哨戒に移る」

 と私達の前で連絡していたくらいだ。一体どうなっているのか。


 伯爵邸を一歩抜けたらそこは地獄だった薬の融通を巡ってあたりに詰める人々に地に伏す人々。

最早疑う理由はなかった。

「で、どうするつもりだ?」

「町中に一軒家を用意し、必要なものは運び出します。薬を作ってください・私たちが配りまわります」

「それで伯爵のときとどう違う?」

「先生は自由に外に出られます。目で見ておかしければこの首を好きになさればよろしい。さぁ、下らないことに時間を使う余裕はない、いきましょう」

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