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とある情報屋の邂逅

 ―――王都、場末の酒場にて。


「街中で起こった事件やおもしろいことを書いて売るんだよ。絶対売れって。」

 俺は管を巻いていた。

「でもよーそんな出来事なんて噂ですぐ広まるだろ?わざわざ買うやついねーって。」

 話を聞かされる男もうんざりしてきたのか、応える声に棘を含んでいる。

「俺はさ、情報屋としてやってきて、その筋の正確性なんかには自身があるんだ。噂を聞いた雀たちが気になる答えが載ってるんだぜ。皆欲しがるって。だから頼むよ」

 俺は新しい飯の種のための金策をしていたが、はかばかしくないのは歴然としていた。


「悪いが、売れそうもねぇ商売に金は貸せねぇな。ここのお代は払っといてやるから、まっとうに働くこった」

 そう言って聞き役の男はそれまでの酒代を払って出て行った。

おそらくよくわからない事業の資金を払わされるぐらいなら、酒代を払って出て行くきっかけにするほうがマシだというところだろう。


「ちくしょう、馬鹿にしやがって。親父ィ!もう一杯だ」

 と喚いたところで目の前に銅製のマグがドンと置かれる。

「気がきくじゃねぇか」

 そう言って相手の顔もろくに見ずに一気に呷る。

「あぁん、こりゃあ水じゃねぇか!てめぇふざけてんのか」

 むしゃくしゃした憂さを晴らすのに調度いいとでも思い掴みかかろうとしたところで初めて相手のことを見た。

あまり華美ではないが、パリッとした服は珍らしいものだが、整った面立ちの男を品よく見せていた。

「商談に望むときは頭をスッキリさせておかないと、いいように騙されるぞ」

 俺の目を覚まさせたのは冷たい水よりその言葉だったかもしれない。

「出資してくださるんで?」

「情報屋としての力量次第、と言ったところだな」

 身なりのいい青年はそう言って薄く笑みを浮かべた。

「渡来人の坊ちゃんが何を知りたいんだ?」

 俺は、珍らしいその服のことを知っていた。

「最近名を知らしめている泥棒のことはしっているかね?」

 その言葉に、俺は些か詰まらなそうに応えたと思う。

「あんたも、そういうゴシップが好きなのかい?なんでも昨日評判の悪い領主の屋敷から領主ご自慢の水晶のねこの像を盗み、悪事の証拠を都の衛兵所にぶちまけたって話だってよ」

「ほう。その金のねこの像は推定幾らと呼ばれている?」

「金貨にして600枚は下らないっていう話だ」

「なるほど、確かに中々の腕のようだな」

 俺は不貞腐れた顔を見せていたが、自身の腕を褒められて満更でもなかった。

「ここに金貨600枚ある。」

 どこからだしたのか、本当に600枚あるのかなど思うところは多々あったが、

「おい、あんた、こんなところでそんなモン出すんじゃねぇよ」

「こんなところで悪かったなぁ!」

 なんて親父の怒鳴り声が響く。

「まぁ、見せないと信用できないかと思ってな。まじめに話す気になったろう?」

 ニィっと笑って男がいう。

「…まぁな。場所を変えようか。ここじゃ人目について気が休まらない」


 その後俺の借りているボロ屋(俺はアンタが来るようなところじゃねぇと必死に止めたがここでいいと押し切られた)で内容について詰めていった。男は、絵をつけたらいいんじゃないかと言って、腕はいいのに貴族に嫌われて干されている絵師を紹介してくれたり、裏面の広告スペースと言った画期的な提案をしてくれた。

「人の目を耳を引き付ける、耳目絵というのはどうだ?」

 こうして「耳目絵」と名づけられた半紙が売られだした。

始めの内は見向きもされず、広告面も真っ白だったが。

とある商家の旦那がおもしろいと言って購入し、裏面の広告欄を買ってくれたのだが、逆にその商家の肩書きが入ったということで注目されて売れるようになった。

出資してくれた青年は、広告スペースの一角を開けておいてくれ、というだけで出資金の返済すら受け取らなかった、というより、ある時から姿も見せなくなったのだ。


「旦那、裏の広告欄の一番いいところをなんで大口の商家に勧めないんです?」


 あれ以来、多くの後発業者が参加してきたが、この業界トップの座を渡したことはない。

情報の精査、絵師の腕がいいのは間違いないが、

広告欄の殆ど埋める商家らの名前が大きな信用となっているのも事実だ。

「いいか、この商売は大きな信頼のおかげで成り立っているんだ。その欄はな、大事な方のために空けておかなきゃいけないのさ」

 うちの職場の人数も増えた。伝えることは伝えないといけねぇな。

職場を見渡して、ふと始めたころを思い出した俺は身を引き締め営業に出るのだった。

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