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後がない

 あれからルージュと会うことはなかった。


いちおう忠告を受け入れてフラフラと出歩くことは止めていた。


そして3,4日経った頃、兄が近衛兵により捕縛された。


何でも裏の組織に繋ぎを取り王こと俺を弑する計画を立てていたらしい。


それ以外にも、権力をふるい、横暴な真似をしていた証拠が山のように挙


げられ(なんでも朝起きたら父の枕元に置いてあったらしい)、いろんな


意味で近衛が慌てたようだ。



 どことなくスッキリせず、かといってそれを晴らす方法も思い浮かば


ず久しぶりにフラフラと放浪した。


 特に意識したわけではなかった、と思っていたが気づけばいつかルー


ジュが連れていった酒場だった。


滑らかに動くが、重い扉を開ける。


「いらっしゃい」


 そう声をかけたのは見知らぬ男だった。


30程だろうか。ルージュと似たような服を着ていて銀色の筒のようなも


のを振っていた。


「お一人でぶらつかれるのは感心しませんな」


 そういって汚れ一つないグラスに筒から液体を注ぎ、こちらへと差し


出してくる。


いつだったかルージュが出したものと同じ酒だが、飲みやすい。


「ルージュはどうしてる?」


「彼女なら、一仕事終えて一杯やってるんじゃないですか?」


「どうすれば彼女に会える?」


「彼女は雲のような人ですからね。風の吹くまま気まぐれです。会える


かどうかは運次第でしょうね。ただ…」


「ただ、なんだ!?何か知っていたら教えてくれ」


「耳目絵をご存知ですか?」


「耳目絵?・・・ああ、出来事を絵と一緒に書いて売っているやつだな」


「そうです、それです。元祖っていうんですかね?その仕事を始めよう


としていた、絵師と記事を書く者に援助した人がいたそうです。そし


て人気が出て売れたら裏面を紹介用の欄として色んな商売先に売り出す


ことを提案したって話です」


「なるほどな、確かに見たことがある、が、それがどうだというのか」


「その内のひとつに依頼蘭というのがあるそうです。依頼内容と連絡


先と依頼料金を払えば耳目絵を通して依頼できるとか」


「依頼相手は指名できるのか?」


「いえ」


「そうか」

 それでは意味がないのだ。俺は情報量と併せて金貨を少量置き、店を


後にした……しようとした。


「このお酒の名前を一緒に書いてあったら、気が向いたら助けてあげ


るわ」


 聞き覚えのある声に、慌てて振り向くが、そこには誰もいなかった。


ただ2度口にした酒の瓶がころがっていた。



 変装して耳目絵の製作所に話を聞きにいったりもしたが、援助したの


は身なりの良い貴族の青年で、聞いた名前のような貴族は存在しないこ


とが後に分かったのだそうだ。せめてもの礼に、青年からいわれた依頼


蘭に一番いいところを絶えず空けているのだそうだ。


 試しにてきとうに依頼してみたが受けてくれることはなかった。


だが、後に本当に困ったときに依頼をして2度助けてもらった。


どちらも国の危機といっても過言ではなかった。


どうやら本当に困っているときは助けてくれるようで、それで十分だっ


た。


 あれ以来、飲むようになった酒の名前は「和音ワヲン」。


後を引かないスッキリとした味が特徴だ。


製作元に名前を尋ねたが、分からないらしい。


なんでも新らしい酒造りに挑戦中に開発中に資金がなくなったのを援助


してくれた貴族がいたらしい。またか。


完成した際に名をつけてもらったのが由来だが意味はわからないらし


い。




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