蝶のように舞、逃げる。
数秒前まで二人がいたに矢が連続で突き刺さる。
「くそっ逃がすな追え、追えー」
5、6人の男たちが手に武器を持ち追いかける。
道中に弓を構えた伏兵も配置されていて、逃げる男女矢がに降り注ぐ。
しかし、深紅のドレスを着た女が男をひっぱり、屈ませ、駆け出す。
街の中をダンスを踊るようにしながら駆け抜ける。
しかしよくよくみれば、引っ張り回される男の方は肩で息をしながら
やっとやっと付いて行っているのに対し、女の方は口角を上げて楽しそうにドレスを翻しながら駆けている。
「はぁ、はぁ、おい!あいつらをどうにかできないのか!?」
「さっき言わなかったっけ?私はただの泥棒で、戦闘力はからっきしなの。それにね、伏兵のところに誘い込むのでもなければ下手に牽制とかせずに逃げるのに集中すべきよ。これは実体験からくる教訓だから覚えておいたらいつか役に立つかも知れないわ」
なんて息一つ乱さずに笑いながら言うのだから男、ユリウスにすれば本当かよと言いたくなるところだ。
「私、向こうでは針師だったの。えーと針を使って身体の不具合を解消する仕事、でわかるかしらね?ちょっと悪用すれば意識を飛ばしたりなんて簡単にできるんだけど、さすがにお互いに動きながらはちょっと難しいわね、とは言えそろそろ頃合いかしら。あなたもお疲れのようだしね」
男としては少々悔しいところだが、事実そうなのだからなにもいえない。T字路を直前にして二人を黒いカーテンのようなものが覆う。ルージュはユリウスの手を引いて右へと曲がり、なぜか後ろから追いかけていた男たちは左へと殺到していった。視線をルージュへと向けるといつの間にか濃い茶色系の動きやすそうな服になっていた。
しばらくそのまま走り抜けて小さな廃屋を前にルージュは足を止めた。知ってか知らずかそこは城への隠し通路があるところだ。
「ここまでくれば、ひとまず安心ね」
そういうルージュの表情は暗い。
「何かあったのか?ゼーゼー」
「これじゃルージュって名乗るのもおかしいかなって。」
その一言でがっくりとうなだれてしまったのは仕方ないだろう。
説明されたところによると、とりあえず逃げて、前方に敵がいなくなり後ろから追いかけてくるだけになったところで自分たちとは別の方向へと誤誘導させたのだそうだ。さっきまできていた目立つドレスはそのためのものだったらしい。T字路にさしかかった瞬間に自分たちを目立たないように幻術で黒くし、高速で着替える。一方で深紅の服をひらめかせて逆方向へと走るように見せれば後続は漏れなく付いていってしまうというわけだ。
「幻術も射程距離がそれほど長くないから、あまり使い心地はよくないけどね。わかったと思うけど、あなた、本格的にねらわれているんだから今日みたいに不用意に出かけるんじゃないわよ?」
そう言うと姿を一瞬でくらませてしまった。
今度は一体どういう手妻なんだか。
というか、絶対城への通路ばれてるよな、と落ち着かない気持ちになったユリウスだった。




