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馴れ初め

「ゼイラムの治世は決して目立った功績があったわけじゃないわ。どこぞの領地を併呑したこともないし、他国に侵略されたこともない。長い王族の歴史の中でも取り立てて目立ったところのない王、それが後世の人々の評価かもしれない。でも私は彼をとても高く評価しているわ。飢饉で人が飢えたということはなく、過剰な税率で民に恨まれたということもない。この地に住まうものなら、自分が努力さえすればそれなりの暮らしが保障されていたの。」

 この正体不明の女性から聞かされた父の評価に何故か妙に誇らしかった。

「私はこちらに来てからそう長くはないから、実際に体験したのは数年だけど、治安も良かったし人々も活力に満ちていた」

「この国に住んでいるのか?」

「ええ?ちゃんと税金も納めているわよ?」

 いや、そうじゃなくて泥棒が自分の住処とかいっちゃっていいのかってことなんだけど、まぁいいか。ていうか泥棒も税金とか納めるのか!?

「だから玉座を譲るという話が聞こえてきたときは慌ててゼイラムの寝室に飛び込んだわ。あなたの兄に王位を継がせるのはやめろってね。

そしたらその証拠をもってこい、でなくば話にならんとこれよ。あったまきたから3日だけ待ちなさいと言って証拠となるものを集めに集めてやったわ!それに対する返答が、なら弟が王位を継ぐのに問題がないか確認してくれ、とこうよ?全く人使いが荒いったらないわよ。流石に一国の王ともなれば狸よねぇ」

 いつの間にか自分の分のグラスも用意されていてチビチビやりながら管を巻いてくる自称ルージュ。少し朱が刺している頬が色っぽい。

「「報酬代わりに私お抱えの諜報員の座を用意するのというのはどうか?」なんていうのよ?これ以上好き勝手に使われてたまるかってのよ!「私を束縛できるのは自由だけですのでお断りします」なんて皮肉交じりに応えてやれば「ふむ、それは残念だ。それでは最後にもう一つだけ頼もうか」ってねぇ。もし私がうっかりあなたに害をなしてしまったとしたらそれは「君のお父上が悪いのだよ」アハハハ」

 容器一杯分も飲んでいないはずなのにすでに出来上がっている!?

「さて、とそれじゃ月夜の散歩と洒落込みましょうか」

 急に真顔に戻ったルージュは立ち上がって俺の腕を取り、カウンターの裏の出口から駆け出す。

「あ~あ、あのバー結構手間暇お金、かけたんだけどなぁ」

 背後から幾重ものあらあらしい足音が響いてきていた。

 


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