衛兵小隊、任務開始
「”闇雲”だ、闇雲が出たぞー」
そんな声はここ数日毎夜響いている。
「奴はどこに・・・ってこれは!?貴様、取り扱い禁制の薬品の所持により、連行する!」
「貴様、ここをどこだと思っている!学園内は"不可侵地"だぞ!」
「申し訳ないが、この通り我々は学園内での捜査等行動を許可されている」
そういって取り出した一枚の書状に書いてあることを簡単に説明すれば、学園内にて不法を行う者への捜査・捕縛等衛兵の活動を許可する。
というものだ。
顔を真っ青にした学院教師は、
「えーい、この私を誰だと思っている!衛兵ごときがこの私に触れるな!!」
と叫ぶが、
「残念ですが、これは王命です。あなたが何者であろうと関係ありません」
「くそ!放せ、下郎が!」
泡を吐きながら叫ぶ男を連行した。
「たーいちょ~!こっち終わりましたっと」
そういう部下のコーザの手にもロープが握られ、その先には顔を真っ赤にした整った顔の男がいたが、例の書状を見せると顔を真っ青にした。
「くそ、忍び込んだあの泥棒すら捕まえられん無能の分際でっ!」
「貴様っ!」
「よせ、コーザ!」
「ですが隊長!」
「よせと言っている!」
「はっ」
学院長に書状を見せつつ、協力を依頼して、連行者を預かっておく一室を借りた。
ここのところは毎朝援兵を呼び、連行者をつれていって貰っている。
学院に調査に来た初日、例の生徒の身元を調査して(顔も引っ張らせてもらった)シロだとわかってもなお、監視員をこっそり配置して残りの隊員を連れて学院内の調査に出た。
”闇雲”が出たという叫びを聞いて駆けつけてみれば、教員が一人喚いていたのだが、その声は一切耳に入らなかった。俺達の視線は横にある机の上のものに吸いよせられていたからだ。
――よもや、隠そうともしておらぬとは!――
俺の中で激しい怒りが芽生えた。
「何をしている!早く奴を追え!」
「その机の上にあるものはなんですかな?」
「何を言っている、貴様等は奴を捕まえるためにここにきているのだろう?学院内のことは口出し無用、自身の勤めを果たしたまえ!」
当たり前のようにそうさけぶ男をもう斬っちゃっていいかな?と思うのをギリギリのところで踏みとどまったのは隊員らが同様の状態だったのを知ったからだ。なるほど、そういう状態を端から見たら逆に落ち着くものらしい。
「隊長、コイツ、もう斬ってもいいですか!?」
そういいながらコーザはもう掲げた剣を降りおろしていた。
「ひぃっ」
「馬鹿者ォ!いかに犯罪者とは言え、いきなり斬って終わらせようとするものがあるか!」
自身のことはおいておいて、切りかかるコーザを蹴り付けて吹き飛ばした。
その衝撃で手元から離れた剣が弧を描いて教員の頬に赤線を刻む。
チッと内心で舌打ちをしながら、
「なぁ、今、隊長舌打ちしなかったか?」
どうも声にというか音が出ていたらしい。
「残念ですが、この通り、王より出た密命は、学院の制度を盾に好き放題するものの取り締まりです。残念ですが御諦めください。おい、捕縛しろ!」
どこかポカーンとする隊員らを叱咤してうごかさせる。
部屋内を探させて、証拠も押さえる。
「隊長!今回の任務は学院内の一掃だったのですね!ちゃんと言ってくくださいよ!俺たち今まで一つも気づいてませんでしたよ。あいつら、俺たちが手を出せないと思って嘗めたまねしやがってざまぁみろってなもんですよ!ね、隊長・・・隊長?」
少ない隊員を2つに分けて交代制にしており、俺たちが後番と交代して仮眠室にもどってからの話だ。
あれから2人捕縛して、学院長にお会いして、これが学院の総意でないことを確認し、協力を依頼した後のことになる。
「・・・・・・今回の命令は”闇雲”の逮捕についてで間違いない。」
「へ?」
「あいつらの態度があんまりにも腹がたってな、書状には捕縛者が特定されていなかったからな、そのように解釈させていただいた」
苦々しく笑いながら答えた。
「安心しろ、これは俺の独断だ。命令に従っただけのおまえらにまで罪過は及ばないようにするさ」
「・・・」
「本当でしょうね?俺嫁さんもらったばっかりなんすからね」
笑いながら一人の隊員がそう言ってくる。
「「「「おい!それ以上はやめとけって馬鹿!フラグたてんなよ」」」」
そして残りの隊員が全員突っ込んだ。
やれやれ、まったく。こいつらのことはなんとしても守らないとな。
俺の首をかけるんなら、学院内の罪人らの首くらいもらわないと割にあわないな。
みんなが大笑いしだして、さっき蹴り飛ばしたコーザがようやく目を覚ます。
「な、な、何事だ!?」
そして隊員らが皆また大笑いした。
それから毎夜、少なくとも一人は連行されている。
どうも俺がものすごい覇気を放っているらしく、会う職員が皆動きを止めるんだが。




