表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/73

依頼完了?

 「あの男はいつもああなのか?」

 彼女、ノイスルゼは俺の手当てをしてくれている。

巻いた包帯を切るためか、持っている鋏が震えているのが少し怖いんだが、って彼女の全身が細かく震えていた。

どうやら俺が思う以上にひどい有様なようだ。

「母親は居ないのか?」

「母は身罷りました。」

「・・・悪かった。母親が亡くなったから荒れだしたのか?」

「いいえ。もっと前からです。身ごもった母を、出産でお金がかかると言って暴力を振るっていたそうです。お腹を蹴られて流産しそうになった母はなんとか私を産んでくれましたが、そのためか身体が弱くなり6年後に・・・」

「逃げないのか?」

「・・・。何度か逃げ出そうとしたんです。その内2度は現状を知って匿ってくれた人も居ました。ですが・・・。助けてくれてありがとうございました。ですが、もう係わり合いにならないでください!さもないとあなたも・・・。今日のところは先ほどのお金で外で飲んでくるでしょう。今のうちに逃げてください。あなたのお金については今はお返しできませんがいずれ必ずお返しします。」

 そういって慌てて帰るよう勧めてくる身体の動きが不自然だと思った。彼女の手を捕まえて袖をまくればあざだらけだ。

恐らく身体もそうだろう。



 俺は彼女の家を辞去した。

無論盗品は回収済みだ。

これらを"インクの海で溺れたい"の道楽親父に返せばひとまず依頼は完了だ。今後の万引き対策はどうするか分からないが、今回の件であの店で再度万引きをしようという輩はいないだろう。


依頼完了、したのだ。


だめだ、ノイスルゼが強要されたのかストレスから盗ってしまったのかはわからないが、彼女はまた繰り返してしまうかもしれない。

これでは解決したと胸を張って言えないではないか。


 勘違いしてはいけない。

泥棒は犯罪であり、悪行だ。

故に俺は彼女を救うことはできない。




---俺にできるのは盗むことだけだ。




 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ