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王と謁見 牢獄と決別

申し訳ありません。随時修正や加筆しますのでご容赦を

 痛いほどの静寂の中、複数人の足音が床や壁にあたり、かすかな響きを残していく。

 その足音に囲われた俺は、まるで罪人のような気分になっていた。

 俺を連行している四人の男たちは、だんまりを決め込んでいて喋る気配はない。むしろ少しでも口を開けば武力制圧してきそうな圧迫感を醸しており、あまり良い気分ではなかった。

 だが、と顔をあげて周囲を見渡した。


 先日は混乱していて何も思わなかったが、落ち着いて周囲に目を配ると色々なものが見えてくる。

 この建造物の広大さといい、雰囲気といい、どなたかのご自宅……というわけじゃなさそうだ。どちらかというと、この建物は宮殿や中国の城といっても差し支えないほど立派な屋内である。日本や西洋の城といった高く築いた形ではなく、なだらかで緩い斜面を利用して、広く築かれたといった造りだ。

 長らく牢獄にいたせいか、その内観の美しさといったら、本当に圧倒的だった。差しこむ斜光は仄かな熱を帯びていて、思わず目を細めてしまう。横を見やれば広々とした廊下、壁や天井に描かれた龍や鳳凰、また向こうには亀や虎じみた仰々しい絵が鎮座している。また、きらびやかに装飾された巨大な石造りの円柱も見物だ。

 どこを見ても城、あそこも城、そこも城といった強い主張に思わず感嘆の息が漏れる。

 この建物内には、ちょっとした観光地ではお目にかかれない代物ばかりが並んでいた。


 と、ふとした疑問が浮かんだ。

 このアトラクションは物凄い莫大な金額を投資しているようだが、これほどの遊園地が出来ていたのならいくら世間の情報に疎い俺でも耳にするはず……。

 もしかして俺は、ドッキリに引っかかった一般人ではなく、テストパイロットとかいう奴なのだろうか。


 さらに気になったいくつか点がある。


 まず、外に広がるこじんまりとした庭園だ。

 これほど鮮やかな屋内とは対照的に、木立ちや緑をしている草々もだらりと項垂れて、枯れて色あせていた。

 ひゅおう、と風が吹く。いくつかの枯葉が散っていく。

 少し汗ばむほどの心地よい陽気だというのに、どこか冬がやってきたのではと勘違いしそうな風景だ。

 今は命が花咲かせる季節だろうというのに。


 それと、俺を遠巻きに眺めている連中だ。

 少し高級そうな和服を着た女性、おそらく女中だろう。城の兵士は兜を装着しているので気付かなかったが、彼女らの髪は皆、金や赤、濃い青といった見慣れない色をしていたのだ。また肌の色も多様で、白い肌をしている者も入れば、褐色の肌をした者もいる。

 そんな彼らは俺の髪や姿を目にしては、ぼそぼそと耳打ちし合っている。その視線からして、あまり好意的ではないように思えた。


 全く、と俺はほとほと感服してしまう。

 従業員たちの演技だけではなく髪形や容姿まで徹底しているなんて、経営者はこの世界観の構築にどれくらいの時間をかけたのだろう。

 その人は間違いなく、ジョブズとかゲイツ並の財力の持ち主には違いない。

 ――と、周囲に視線を配り過ぎたせいだろう。


「もうすぐ宮廷前だ。妙な真似をすると殺すぞ」


 俺を取り囲む兵士のひとりが強く咎められた。

 どうも質問するような空気でもない。周囲の連中は妙に気を張っていて、まるで会議前のサラリーマンじみた雰囲気なのだ。下手に刺激すれば何をされるかわかったものじゃない。

 しかし俺もテストパイロットだ。

 彼らの演技の邪魔しちゃいかんだろう。

「了解した」

 俺はそう言って、短く頷いた。




 いくつもの廊下を抜けて。

 瀟洒な宮廷前の、がらんとした広場に到着する。

 その中央で、ひとりの女が俺を含めた兵士たちを待ち受けていた。

 派手でタイトな巫女服じみた格好をメタルバンド風に改良したような、露出度の高い蠱惑的な女性である。

 注目するべきは髪色だろう。燃える炎のような赤が、彼女の小さな輪郭を覆っていた。

 彼女は暇そうにオイルライターのフリントホイール部分を弄っていたのだが、こちらを見た瞬間にその顔色は変化する。への字をしていた口角を上へ曲げて、やたら挑発的な笑みを滴らせ始めたのだ。

 かちり、とオイルライターを閉じて、その人は近づいてくる。


「待ちくたびれたぞ」


 女性はフレンドリーに接してくるというのに、周囲の男性陣に緊張が走る。

 ひとりの兵士が顔をしかめて噛みついた。

「アム、何故お前がここにいる」

 アムと呼ばれた女性は、ええ、と眉をひそめる。

 考えなくてもわかるだろう、と言った口調で。

「王の言いつけでな。後は私ひとりに任せろとの事だ。その魔族は置いて、お前らは帰るといい」

 尊大な口振りで、虫でも払うかのように手を振り出す。

 端正な顔立ちのわりに、口は悪いようだ。

「なっ……」

 呆気に取られている男たちを横目に、彼女は自信あふれる足取りで一直線にこちらへ向かってくる。

 そして赤髪の彼女は顎に手を当てて、あからさまな目線でこちらを値踏みしてきた。やはり目がいくところは俺の髪色らしい。

「へぇ、本当に見事な黒髪黒目よ」

「どうも」

「おお、本当に言葉が通じるときた。魔族とはキシャーとか言っているものだと思っていたが」

「おい、アム」

 納得がいかないのだろう。兵士はしつこくアムに食い下がる。

「王の命令とはいえ、お前だけが謁見するのは気に入らねえ。俺らは子供のお使いをしたんじゃねえんだよ。最後まで同行させてもらうぜ」

 重苦しい沈黙が舞い降りてきた。それは数秒ほどだろうが。

 しばしして、彼女は短く息を吐いた。

 説明するのも面倒だというように、さらに口調をがらりと変えて。

「もう用はないだろう? 話はとうに終わったのだから帰るがいい」

 唐突の厳しい口振りに、俺は意味を理解しかねて目を瞬かせてしまう。

 好戦的な性格なのだろう。彼女は興奮を我慢できないという風に何度もオイルライターを開閉させている。どうも俺の周囲にいる男たち――四人だ――を全員相手取る気のようだ。

 カチカチと時を計る無機質な音色。

 今にも破裂しそうな緊張が辺りに広がっていく。

 ――そのボルテージが割れかけた直前、先に警戒を解いたのは、ひとりの長身痩躯の兵士だった。

「……やめよう。王の前だ。ひとりでいいと言ったのは嘘じゃないだろう」

 彼はアムにではなく、周囲の仲間に言い聞かせる。

 臨戦態勢に近かった彼らは渋々と手を収めて、来た道を戻っていった。


 その背を見送って、俺はアムを見やる。

「いいのか? あんな態度とって」

「別に私は問題になるような真似はしていないよ。何ひとつな」

 彼女は疲れたと言わんばかりに肩を鳴らして、宮廷へと足を運んでいく。

 兵士たちと違って俺の背後を歩く気はないようで――ふいに彼女はこちらへ振り返った。

「ああ、そうだ。あまり馴れ馴れしい口は聞くなよ。私はお前が嫌いだ」

 そして再び歩き出していく。

 見知らぬ場所にひとりきりというのは別に心細くもなかったのだが、彼女が現れたことで俺は妙な不安を感じていた。沸点が低そうなうえに嫌いという言葉を突きつけてきた女性に付いていくというのは、なんとも微妙な気分になるものだ。


 

「連れてきたぞ」

 響き渡る声。

 謁見の間、というのだろう。

 重そうな観音開きの扉が開いた先は、荘厳な広間と、その最奥に黄金の玉座がふたつ。きらびやかな内観なのだが、どこか侘しさを感じてしまう。それは神社や寺の境内じみた神聖さというのだろう。ちょっとした異界だ。

 見やれば、その華やかな玉座のひとつに、ひとりの男が座っていた。

 彼が、俺を呼び出した王のようだ。袖の広さが特徴的な、紅を基調とした色鮮やかな和服の王である。

 さすがに俺も体が強張ってしまい、息を呑んでしまう。

 というのに、アムは気にも留めない足取りでヅカヅカと進行していく。その硬質な足音を鳴らす勇ましい後ろ姿は、まるで穏やかな花々を蹴散らさんとする野盗にも思えた。

 そして玉座に座る男が、気怠そうな声でアムに訊ねる。

「人払いは済ませたか?」

 優しい声音だ。

 その声は水音が波及するように、静かに部屋の隅々へ染み渡っていく。

「ひとり残らず」

「そうか。ご苦労」

 少し遅れて、俺は彼女の後を付いていった。

 扉に一歩踏み入れれば、外と中では、どこか空気が違ったように感じられる。その静謐な雰囲気は厳かな図書館や美術館にも似ているなと、俺は思った。


 アムが立ち止まり、こちらを振り返った。前に出ろ、と顎で指示される。

 彼女に従う形で、俺は一歩分、前へ出た。

 見上げれば顎ひげの似合う精悍な顔つきと、鋭い目つきが俺を射抜いていた。その瞳は少し濡れていて優しげだが、それこそ我こそは王だという静寂な自信と力強さを放っている。

 これが格の違いというのだろう。

 玉座に座る王――四十代前後だろう――がこちらを見下ろしたまま、声をかけてきた。

「ふむ。本当に黒だな。目も、その髪も。見事な色合いだ。名はダイゴと言ったな」

 彼は言葉を咀嚼するように一度だけ目を閉じた後、改めて俺を見やった。


「単刀直入に訊こう。お前は魔族か?」


「いいえ」


「そうか」


 王はあっさりと納得して、ふう、と気負いを一気に吐き出してしまう。

 先ほどまでの威圧感はどこへやら。彼は背もたれに預けていた体をだらけさせて、大きく嘆息した。

 俺の隣に立つアムなんてあくびをする始末。

 彼はおおらかなのか寛大なのか知らないが、彼女を咎めることもなく少々砕けた口調で言葉を継いだ。

「遅れてしまったが、私はこの国の王、シンだ。よろしく頼む」軽い挨拶を終えて、彼は頭を下げた「長い間牢獄へ閉じ込めて申し訳ないな。ある程度は厳しい対応しないと老人どもがうるさくて敵わなんだ」

「はぁ……」

「で、一応話は耳に入れているが、ニホンとやらから来たそうだな?」

「日本からというか、まぁ、そうなるでしょう」

 ここも日本だと思うし、俺が住んでいた場所も日本なのだから、広義的な意味合いで考えれば日本から来たということになるだろう。

「ダイゴは、どうも私の娘といたそうじゃないか?」

「娘……?」

 俺は目を細めてしまう。

 む、とシン王は唸る。

「ほら、こう、小さくて可愛らしい私の天使で、私と同じ栗色の髪をした美少女の」

「……ああ」

 美少女か天使かは納得しかねるが。

 思い当たる節はあったので、俺は曖昧に頷いておいた。

 ――と、王の目に再び鋭い輝きが灯される。

 それは先ほどの栄光や自信とはまた別の、どす黒い嫉妬と怨念にも似た眼光だった。

「私の娘に妙な真似はしてないだろうな?」

「するわけがないだろう」

 思わず即答するが、彼は俺から一向に視線を逸らさない。

 まるで俺の奥底を覗き込むようにじぃっと見つめて、少しの間の後、パッとシン王の顔が華やかせた。

「そうか。うむ、良識は備えているようだな」

 こう言ってはなんだが、親バカという文字が彼の額に浮かんでいるような、そんな気がした。

「何せあの子は天使だ。変な虫が寄る前に退治しないといかないんでね」

「あの子は、シン王の娘……いや、姫君だったというわけですか?」

 俺は問うと、彼は短く頷いた。

「うむ。まだまだ世間を知らぬ幼い子供だ。何かがある前に――」

 ここでようやく、アムが言葉を挟んだ。

「それよりも王、その姫君は今どこにいるんだ?」

「ああ、それは……だな……」

 途端、シン王は情けない顔になる。

「もしかしてまた」

 アムも不安げに眉をひそめるが。

 事件は、その直後に起こった。


 シン王と俺、アムの中間地点の空間に、大きな歪みが生じていく。

 そして一瞬後、俺の小脇に抱えられていた少女、シン王の娘が姿を現した。


「ニーニ!」


 ひまわりのような花開く笑顔と同時。


「空間干渉だと!?」


 その笑顔とは対照的に、悲鳴じみた声で叫ぶのはアムだ。

 伏せて、と叫んだのはアムか、シン王か。少なくとも俺ではなかった。

 空間の歪みは中央へ収縮した後、歪みを修復する為に膨張し始める。

 結果、それは大爆発を引き起こす引き金となり。

 俺は爆風に吹き飛ばされながら、幼稚園の入園式や告白しようとして女の子に泣かれた悲しい幼少期、高校受験の勉学に苦しみ、合格して喜ぶ母の顔といった青春期、謎の展開に上手く脳が追いつかないここ最近など、次々と脳裡に映像が湧き上がっては消えていった。

 これもアトラクションの一部というのなら、とんでもなく危険だろう。

 さすがに責任者を糾弾する必要がある。

 しかし爆風に逆らえず床を転がる俺には、脳内を元気に駆け回る走馬灯に対して「まだ今は休め、走るな」と必死に食い止める以外何もできなかった。


 そして。


 とりあえず壁に尻と足を押し付けて、地面に背中をくっつける格好で勢いは収まってくれた。未だ回転する視界がどうにか静かになっていくに連れて意識は覚醒し、腹部にかすかな重みを感じる。

 強く目を閉じて開くと、逆さまになっていた俺の腹に座る形で、シン王の娘が俺の顔を覗きこんでいた。

 どうも俺の腹部を椅子替わりにしているらしい。

「ニーニ!」

 彼女はぺちぺちと俺の顔を無邪気に叩く。

「元気? 元気?」

「……どうにか無事みたいだ」

 ぱぁっと彼女の顔が輝いた後、コホン、と小さく咳き込む。

 俺は彼女の顔を見ながら、なんだかよくわからんが俺は生きているんだな、と実感していた。

 彼女を横にのけて立ち上がろうとすると、

「シノ!」

 シン王は酔っ払いじみた足取りでこちらへ近づいてくる。

 彼は額から薄く血を流しているのだが、それすらも気にせず己の娘を抱きとめて頬ずりし始めた。

「シノ、どこへ行っていたんだ。お父さんは心配していたんだぞ」

「んー、外いってた」

「そうかぁ。外行く時はちゃんとお声かけしていかないと。お母さんも心配するんだぞぉ」

 威厳もへったくれもない甘い声だ。

 目尻に皺も寄っていて、シン王はデレデレである。

「シノ……」

 アムの呻き声がかすかに響いてくる。

 見やれば、爆心地を始めとした謁見の間は、酷い惨状になっていた。まるで竜巻や大型台風が通過したかのような有様である。

 その中で、シン王よりは無傷に近い姿のアムが頭を押さえながら突っ立っていた。いや、その顔はどこか寂しそうだ。何故だろう。

 まぁ当然だが問い詰める雰囲気でもなく。

 シン王は胸に抱いた娘へ問う。

「そういやシノ、お母さんはお前を探しに行っていたが……」

 ぎぃ、と重々しく扉が開く。

 振り返ると、扉の隙間から潜り込む形で、黄色くきらびやかな和装姿の女性が倒れ込んできた。

「ぜえ……ぜえ……」

 その姿は小柄なうえに華奢で、まるで白銀のような綺麗な髪をしていた。

 その顔もまた白……というよりは真っ青に近い色をしているが。

「王妃様、ご無事ですか」

 扉の奥から、数名の女中が慌てて駆け寄ってくる。

 王妃様と呼ばれた女性は、背中をさすったり優しく叩かれたりしていた。

「はぁ……ぜぇ……あ、あなた……娘は……ひぃ……ふぅ……ああ、お迎え……ごほっ……」

 俺は胸が締め付けられる思いで、その様子を眺めていた。

「あ、だ、ダイゴ様……お迎え……挨拶……遅れ……うぅ、げほ、ごぶふぉッ!」

「お、王妃様!」

 さっきからお迎え等口にしているが、むしろ女王の方にこそお迎えがきてしまいそうで不安になってしまう。

「ドロシー!」

 シン王も少し遅れて女王――ドロシーというようだ――へ娘とともに駆けて行った。

「お前、そんなに無茶をして。だから私が探すからここで待てと言ったんだ……。お前は体が弱いんだから」

「何を馬鹿な……私は王妃の前に母です……。あなたも父ですが、民を率いる為の大事な公務があります。夫の務めを万全にする為に家庭を守り、どこまでも探し出すが母のつと……うぇっ」

「……」

 差しこむ暖かな陽光といい、本当にお迎えがきてしまったか、とハラハラしてしまう。


 まぁそれも彼女がどうにか息を整えたことで、まだ先送りにすることが出来たようだった。

 王妃はおしとやかに微笑んで、

「御見苦しいところをお見せしました」

「あの……いえ……お気になさらず」

 崩壊気味の謁見の間。

 爆音に驚いて群がってきた人々をどうにかこうにか言いくるめて帰し、残ったのは俺とアム、王と王妃、その姫君の五人だけとなった。

 少し煤けた玉座に王と王妃は座り、また姫君は母の膝にちょこんと座っている。

 改めまして、と王妃は言った。

「ようこそ、ダイゴ様。我がチュークク王国へ」

「……」

「……」

 時間が止まったかと錯覚するかのような間が過ぎていく。

「……あら?」

「……あ、いえ、ここはチュークク王国というアトラクションなんだなぁと」

「……」

「……」

 十秒ほどシン王とドロシー王妃は互いに見つめ合った後、俺の隣に立つアムへと目を向けた。

「アム、こっちへ来い」

 彼女は文句も言わず、素直に王と王妃の下へ歩いていく。

 そして彼らは小声で耳打ち合い始めた。


「もしかして彼は、状況がわかってないんじゃないのか?」

「私はやはり魔族ではないかと思うぞ」

「や、魔族ならシノが抱きついた時に何かをやらかしたはずだろう」

「そうですよ。私が倒れた時、彼は心配そうな顔をしてましたもの」

 

 やけに大きな小声である。

 姫君――シノは暇そうに天井を眺めていた。

 いや、いい加減、様子のおかしさには俺も気付いている。

 首を横に振る。目をそむけたかった。というのが正しいだろう。

 謎の巨大な目と触手。

 さらに多数の兵士と目が痛くなるような髪の人々。

 理不尽に押し込まれた牢獄。

 そして先ほどの爆発と、マジックのように現れた少女、シノ。

 しかし、それは未だに信じられるものではなかった。

「あ、あの」

 そう口にした瞬間だ。

「とりあえず」

 王妃がこちらを向いた。

「牢獄に押し込められて大変だったでしょう。お詫びも兼ねて、今日はお風呂と食事にしませんか」

 王妃の勢いに呑まれてしまう。

 とにもかくにも、俺はこうして牢獄生活と決別したのだった。

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