チートなおじさんがお城に行きました。
遅くなってしまいすいません。遅いくせに全然話が進展してなくてすいません。おじさん招待されました。
「ふわぁーっ旨かった~ッ!」
満足げに頬に生クリームをつけたまま言うカサネ、それを眺める自分。楽しい時間は過ぎて、思いの外居心地が良かった店を出た。
「よし、では行こうか!」
「ああ、分かったよ」
ずんずん前へ進むカサネの後ろを、辺りの様子を伺いながらついて行く。カサネは気付いていないが、カサネが前を通る瞬間通行人は必ず敬礼している。そしてこちらを、蔑んでいるような目で見ている。自分は、歓迎されてはいないだろう。冷静に判断しながらも、カサネの誘いを断りきれずついて歩いている自分が少し情けないがもしもの事があったとしたら、自分の超能力を使おう。そう考えをまとめ、今度はカサネの背中だけを見、進んで行く。
しばらくすると、カサネが急に止まった。それで気がついたようにカサネの背中から目を放すと、カサネの目の前に周りの高層ビルとはあまりに合わなすぎる『ファンタジー感』たっぷりの城の入口があった。
「ここが城だ」
「でかいね…」
そう言うとカサネは自慢げに鼻の下をこすって、城の木で出来た門をガンガンと叩いた。ノックにしては少々手荒い。
「私だ!今帰った!客人を連れているのではやく開けろ!」
声を張り上げて叫ぶと、門は木の軋む音を立ててゆっくりと開いた。カサネに促され城の中に入ると、まず床のレッドカーペットに、更に眩しいくらいに輝く両端の白い壁。規格外に広く長い廊下に度肝を抜かれた。
「広い…」
「ん?普通だぞ?」
感覚が麻痺しているのか、驚いているこちらを不思議そうにカサネは見つめた。うん、お嬢様なんだね!
半ばデリケートな心が折れそうになったがずんずん進むカサネに遅れないようについて行く。廊下を歩き終えた後も階段や何やらが沢山あり、三階まで来たところである異変が起きた。
__先程まで眩しいくらいに輝いていた白い壁や床が、漆黒に染まったのだ。
「…!!」
咄嗟に身構え、後ろの階段、前の長い廊下、と周囲を見回すが誰も、何もない。
カサネはそんな異常事態に全く動じず、にこにこと微笑みながら廊下の先をこれっぽっちも笑っていない目で睨みながら、こちらに向かって喋りかけてきた。
「ケンジ君、落ち着いてくれ。これは私の部下の能力だ」
「え…?」
そう言った直後、カサネはすぅっと両手を広げて思いきり息を吸うと、大きく口を開いた。
「リアーーーンッ!!」
カサネが誰かの名前であろう言葉を叫んだ瞬間、漆黒の空間が元の純白の壁に戻った。何かが解除されるように。これもこの世界では当たり前の『超能力』なのだろう。
「リアン、遊びは終わりだ、出てこい。上司の命令だぞ」
カサネは先程より幾分苛ついたような声で続けた。
その直後、廊下の先に首の白いクラバットが目立つ、上下漆黒のぴっちりとした執事のような服装の男が立っていた。男はこれまた黒い髪をゆるくオールバックにしており、目付きは鷹のように鋭く気難しそうだった。男はカサネを嘲笑するように口の端を歪ませた。
「王女様でしたか。敵だと思いました。申し訳ありません。そちらのご客人も失礼いたしました。私はリアンと申します。宜しくお願いいたします」
「ったく、いきなり攻撃するなよリアン。すまないな、ケンジ君」
カサネは男をリアンと呼んでいた。
「あー、僕はケンジといいます。宜しくお願いします、リアンさん」
廊下の先のリアンに呼びかけると、リアンはコツコツと靴の音を立てながらこちらにゆっくりと向かってきた。
「おやおや…礼儀正しいお人だ。私も見習わなくては」
「全くもってその通りだ、リアン」
呆れたように呟くカサネにリアンはまた口の端をひきつらせるような冷たい笑みで返した。
「おやおや手厳しい…では、ご客人もいることですし、国王様の所へ案内致しましょう…」
リアンは不気味な笑みを浮かべながらこちらに手招きをした。カサネは先を歩くリアンについて行きながらこちらに話しかけてきた。
「ケンジ君、説明不足だろうから言うが、彼はリアン・ブラッドバーン。私の側近…お世話係みたいなものだ。彼の能力は…おっと、これはダメなんだった」
「……?」
「ハハハ、何でもないさ」
悪戯っぽく言うカサネが、可愛く見えた。




